取り合わせの妙! 俊英2人のしなやかで温かみのある響き合い
ハープは他の楽器との共演においてとても魅力的な響き合いを演じる。フルートとハープ、ヴァイオリンとハープ、チェロとハープ…。今回、2010年12月からウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の首席ハープ奏者を務めるベルギー出身のアンネレーン・レナエルツ(28歳)が世に問うのはクラリネットとのデュオ。クラリネットを吹くのはギリシャ生まれで複数のコンクールに入賞歴のある俊英ディオニシス・グラメノス。
2人は数年前に音楽祭で出会って意気投合、比較的珍しいクラリネットとハープのデュオを組んで活動してきた。そしてデュオとしての初アルバムの曲目に選んだのはシューマン夫妻とシューベルトの作品。編曲も全て2人が行っている。
最初に収められたシューマンの幻想小曲集作品73から2人の才能の豊かさ、相性の良さは明らか。グラメノスの澄んだ中に翳りや愁いのさす音色とやわらかな光沢を放つレナエルツのハープがしっとりと絡み合う。続く3つのロマンス作品94、クララ・シューマンの歌曲集作品37(夫との共作)からの3曲でもクラリネットの叙情にハープの色彩感が加わって楽曲の新しい魅力を掘り起こしている。
アルバム後半のメインはシューベルトのアルペジョーネ・ソナタ。ここでの2人はかっちりとしたアンサンブルで作品の骨格を丁寧に表現。最後は歌曲集 「白鳥の歌」から有名なセレナードを置き、深い余韻とともにアルバム全体を締めている。
この種のアレンジものはともすれば主旋律偏重の単調なものになりがちだが若い2人は編曲、演奏の両面で緻密で立体感のある音楽を構築しており、飽きのこない内容に仕上がっている。
寒い冬の夜に聴き手の心を静かに温めてくれそうな好アルバム。