INTERVIEW

SUMMIT『Theme Songs』 SIMI LABやPSGを擁する最重要ヒップホップ・レーベルの歩みを、初のポッセ・カットを機に振り返る

【特集:Reaching the SUMMIT】Pt.1

SUMMIT『Theme Songs』 SIMI LABやPSGを擁する最重要ヒップホップ・レーベルの歩みを、初のポッセ・カットを機に振り返る

SUMMIT time
眺望は最高! 日本のヒップホップを盛り上げる重要レーベルの歩み

 祝6周年!……ってことは、つまり何の区切りでもないわけだが、ここ最近のヴァラエティー豊かなリリース・ラッシュを思えば改めて注目すべきタイミングが来ているのは間違いないだろう。PSG、RAU DEF、SIMI LABを擁した2011年の設立時からマイペースに話題作を投下してきたヒップホップ・レーベル、SUMMIT。以降は紆余曲折ありながらも、現在はTHE OTOGIBANASHI'SやBLYY、C.O.S.A.、TWINKLE+、そしてVaVaも在籍する信頼のブランドへと成長している。今回は所属ラッパーたちによる話題のポッセ・カット“Theme Song”がシングル・リリースされたのを記念して、同曲のプロデュースを務めたOMSB(SIMI LAB)も交え、レーベル代表の増田岳哉に話を訊いた。

SUMMIT Theme Songs SUMMIT(2017)

 

次世代を発掘するレーベル

 そもそもSUMMITはファイルレコード在籍時にA&R担当としてPSG、RAU DEF、QNなどを送り出した増田が立ち上げたレーベルだ。思い起こせば、新進気鋭だったPSGの『David』(2009年)が大きな話題を呼び、その一角を担うPUNPEEの全面プロデュースしたRAU DEFのデビュー作『ESCALATE』(2010年)も高い評価を獲得。そして、2009年末に“WALK MAN”のMV公開で脚光を浴びていたSIMI LABからまずQNが『THE SHELL』(2010年)でソロ・デビューを果たし……というタイミングでのレーベル設立だったわけだ。

増田「ちょうどEarth No Madのアルバムを作りはじめるぐらいの頃ですね。ファイルを辞める時に社長の厚意で〈お前から声をかけていいよ〉って言っていただいて、みんなに声をかけた結果、PSGとRAU DEF、SIMI LABの3組が所属することになって」

OMSB「当時は〈これが青田買いってやつか!〉ってテキトーに考えてました(笑)」

増田「ファイルにいた当時からOMSBのソロとSIMI LABのアルバムも出したいと思ってたんです。最初は相当ウサン臭いと思われてたみたいですけど。最初って2009年のUNDERBARやんね? QNのライヴに行った時に初めて喋って」

OMSB「当時はもう自分の中ではクソ尖ってる時期で、そもそも〈もう関係ねえよ、大人は〉とか、そんぐらいの感じだったから、誰を見てもウサン臭く見えるっていう(笑)。でもCDは出したいし、気になるわ~みたいな感じだったっす」

 なお、〈頂上〉を意味するレーベル名は「山登りの本とかをよく読んでて、小さくても自分なりの山みたいなのができたらいいなっていうのが何となく頭にあって。それでRAU DEFと地方に行った帰り道にスーパーのサミットがあったからRAUに〈SUMMITってどう思う?〉って訊いたら、〈ああ、シャウトしやすい〉みたいな返事だったので、それで決めた感じ」(増田)だそう。

 そして、Hi'SpecとJ.T.Fの限定盤『Round Here: Mix Tape』を皮切りに快調なリリースを始めたSUMMITだったが、2012年にはQNがSIMI LAB脱退に伴って離脱、RAU DEFもレーベルを去っている。とはいえ、それに前後してTHE OTOGIBANASHI'Sを迎えて以降、次世代アクトを送り出すというSUMMITのカラーはいっそう強まり、高水準を保って作品を重ねてきたのは衆知の通り。そうして集まった個性を束ねたのが、今回のポッセ・カット“Theme Song”ということになる。

 

彩りと勢いを見せるポッセ・カット

 楽曲自体は2016年の主催イヴェント〈AVALANCHE 6〉をきっかけに制作され、Soundcloudにラフ・ミックスが公開されていたもの。SIMI LAB(RIKKI、MARIA、DyyPRIDE、OMSB、JUMA、USOWA)にTHE OTOGIBANASHI'S(in-d、BIM)、そしてPSG(PUNPEE、GAPPER)の10名がマイクを回すオールド・スクール作法のディスコ・ラップだ。個々が軽快なフットワークで迫るなか、残念ながら先頃グループ離脱を表明したDyyPRIDEの参加も意義深いものだと言えるだろう。

増田「もともとポッセ・カットが好きで、SUMMITでもいつかやりたいとは思ってましたけど、きっかけはOMSBのビートですね。『Think Good』のリリース・パーティーを2年前にUNITでやったんですけど、そのスタジオのリハの時にOMSBが新しいビートをかけてて、今回のこのトラックを耳にしたんですよね。その時にピンときたというか、どんな色のラップも合いそうだと思って。〈これ、誰にも渡さないで〉っていうのだけ言ってたよね?」

OMSB「そうっすね。厳密に言えばビートはもっと前からあって、2014年に石川で掘ったレコードを使ったのは覚えてます」

増田「基本的にテーマはなくて……レーベルの人間が〈レーベルを讃えろ〉なんて言うのも恥ずかしいんで(笑)、普段はみんなストイックに音楽やってるから、こういう時くらい〈遊びで楽しもう〉ぐらいの軽いノリでそれぞれのカラーを出してもらえたらいいなと思ってました」

OMSB「おもしろくまとまったかなと思いますね。一応プロデューサーってことでやらせてもらったんですけど、意見を出してくれる奴もけっこういたし、そういう作り方をすること自体があんまなかったんで、勉強にもなったというか」

 シングルにはC.O.S.A.とBLYY(CLAY、AKIYAHEAD、Dzlu、DMJ、alled、DJ SHINJI)、TWINKLE+が主役となる〈吐血MIX〉も収録(OMSBも新録ヴァースで参加)。表題がポッセ・カットの古典である大神“大怪我(輸血MIX)”へのオマージュであることは言うまでもないが、こちらは総じて雄々しい語り口が黒光りし、DJ SHINJIの無骨なスクラッチもカッコいい出来映え。レーベルの備えた彩りと勢いを2ヴァージョンに渡って賑やかに見せつける仕上がりとなった。

 この後には周期的にもそろそろ新しい展開が期待されるSIMI LABメンバーたち、BLYYやTHE OTOGIBANASHI'S、そしていまもってSUMMITからのアルバム作品を届ける気配のない(?)PSG組に至るまで、各々の次なるリリースを期待せずにはいられない。多くの山々にそれぞれの峰がそびえるシーンであるが、少なくともひとつの頂上がここにあるのは間違いないだろう。

 

SUMMIT前夜の作品。

 

OMSBとBimが客演しているJAZZ DOMMUNISTERSのニュー・アルバム『Cupid & Bataille, Dirty Microphone』(TABOO)、PUNPEEとGAPPERが客演しているMELのニュー・アルバム『LIGHTS ON THE PLANET』(THE OTHER COLONY)

 


SUMMIT作品を語るうえで欠かせないのが独特のヴィジュアル。その世界を作り出す一人がSIMI LABのメンバーでもあるMA1LL(写真)だ。クルーやレーベル作品に加え、OKAMOTO'Sらのアートワークを手掛け、APPLEBUMのアイテムデザインなども手掛けている。また、映像面ではCreativeDrugStore所属のHeiyuuが要注目。OTGの諸曲はもちろん“Theme Song”のMVも彼の作品だ。

 


Reaching the SUMMIT

★Pt.2 VaVa『low mind boi』
★Pt.3 C.O.S.A.『Girl Queen』
★Pt.4 CDで追うSUMMITのディスコグラフィー

40周年 プレイリスト
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