デビューしてすぐに時の人となってしまったのだから、セカンド・アルバムのプレッシャーはさぞかし大きかったことだろう。3年半という時間を要したのも無理はない。でも待った甲斐あり。“Money On My Mind”のようにダンサブルなアップが今回は1曲もなく、決して派手な作りではないが、それだけに深度が途轍もない。借り物の希望なんて一切歌わず、彼はまるで祈るように思いを曲にしているのだ。初めてスターゲイトと組んだ“Too Good At Goodbyes”、アカペラで始まる“Burning”、禁断の恋をして神に許しを請う“Him”など悲しみに満ちたバラードがまず胸に迫る。一方、その対比としてサム・クックへのオマージュ“One Last Song”、シンプリー・レッドを想起させる美メロ曲“Midnight Train”や“Baby, You Make Me Crazy”といったナンバーが温かみと力強さを印象付けもする。信頼に足るシンガーであることをしかと証明してみせた、タイムレスな力作だ。