天野龍太郎「Mikiki編集部の田中と天野が、海外シーンで発表された楽曲から必聴の5曲を紹介する週刊連載〈Pop Style Now〉。先週はヴィヴィアン・ガールズの再結成が話題でしたね」

田中亮太「そうですね。2007年に結成され、2014年に惜しくも解散したブルックリンのガールズ・ロック・トリオ、ヴィヴィアン・ガールズ。ヘロヘロなローファイ・サウンドとキャッチーなメロディーで人気を集めていました。ファッションの世界でも注目を集めた3人のたたずまいも魅力的で、特に日本ではファンが多かったように感じます。僕も夢中で聴いていましたよ」

天野「僕は、実は一切通っていないんです。当時はもっと尖った音楽が好きだったので(笑)。でも、ヘンリー・ダーガーの作品から取ったバンド名はいいなと思っていましたし、新曲“Sick”はかっこいいと感じましたよ!」

田中「その“Sick”が収録される、ファン待望の新作『Memory』は9月20日(金)にポリヴァイナルからリリース。それでは、今週のプレイリストと〈Song Of The Week〉から!」

 

1. Charli XCX & Christine And The Queens “Gone”
Song Of The Week

田中「〈SOTW〉はチャーリー・XCXとクリスティーヌ・アンド・ザ・クイーンズが共演した新曲“Gone”! 2人が激しく踊りまくるミュージック・ビデオも最高ですね! 後半では水やら炎やら火花やらが出てきて……」

天野「緊縛のイメージとそこからの解放を表現した映像は、〈居心地の悪い場所からは出ていってやる!〉と宣言する歌詞に対応していますね。それにしても、このコラボレーションは超刺激的。いまもっともラディカルなポップ・シンガーと、フランス発のエレクトロ・ポップの新アイコン、という2組ですから。ちなみにクリスは全性愛かつクィアで、そのジェンダー/セクシュアリティーを音楽でも表現しています。なので、今回の共演は必然だなって」

田中「パワフルで攻撃的で、これぞ僕たちの聴きたかったチャーリーって感じがしますよね。PCミュージックの首謀者、A.G.クックによるシンプルでありながら仕掛けの多いトラックもめちゃくちゃかっこいい。後半になるにつれてどんどんサウンドが先鋭的になっていくので、最後まで聴いてほしいですね」

天野「この曲は、9月13日(金)に発表されるチャーリーの新作『Charli』に収録。アルバムにはハイム、スカイ・フェレイラ、カップケイク、クライロ、イエジら新世代の女性音楽家が参加していて、フェミニズムの時代と言っていい2010年代を象徴する一作になりそうです」

 

2. Sam Smith “How Do You Sleep?”

天野「2位は、いまや英国を代表するシンガー・ソングライターとなったサム・スミスの新曲“How Do You Sleep?”です」

田中「前作『The Thrill Of It All』(2017年)の発表以降は、Netflixの『ウォーターシップ・ダウンのうさぎたち』に“Fire On Fire”を提供していましたね。そして、今年1月にはフィフス・ハーモニーのノーマニ・コーディをフィーチャーした“Dancing With A Stranger”を発表しました」

天野「悪い曲ではなかったんですが、サビの〈Look what you made me do〉というフレーズから、どうにもテイラー・スウィフトの同名曲を思い出しちゃって(笑)。それはともかく、生音を活かしたオーセンティックなサウンドを志向していたサム・スミスが、新曲ではエレクトロニックなダンス・ポップに挑んでいることに注目したいです」

田中「MVで本人が踊ってるのも新境地ですよね(笑)。プロデューサーはマックス・マーティンや、先週ビヨンセの曲を紹介したときにも言及したイリアら。歌詞は〈僕に嘘をついたとき、君はどうやって眠るの?〉という、なんとも彼らしいブルーな恋愛についてのもの。このペースで行けば、待望のサード・アルバムも今年中に聴けそうですね」

 

3. Moonchild “Too Much To Ask”

天野「3位はムーンチャイルドの新曲“Too Much To Ask”。ネオ・ソウルと新世代のジャズを橋渡しするようなバンドで、日本でもかなり人気があって、ミュージシャンへの影響力も強いですよね。僕も“Cure”や“The List”は大好きです」

田中くるりの佐藤征史さんもお気に入りだとか。前作『Voyager』(2017年)が発表された際に柳樂光隆さんが彼女たちについて書いた記事は、かなりヒットしました。この曲は、昨年12月にリリースされた“Get To Know It”に続く新曲です」

天野「ネオ・ソウル的なおしゃれなコード感は健在なんですが、2曲に共通するのは、生っぽい音をかなり抑えているところですよね。ビートはプログラミングであることをあえて強調するようなデジタルな音色です」

田中「それに対応するかのように、アンバー・ナヴランのヴォーカルは、親密さを強く感じさせる歌い方。ささやかなプロダクションとウィスパー・ヴォイスが、メロウネスを増幅させていて、Corneliusの近作にも近い印象です。9月6日(金)にリリースされる新作『Little Ghost』は、バンドの変化を感じさせる作品になっていそう」

 

4. Lil Durk feat. Meek Mill “Bougie”

天野「続いては、リル・ダークとミーク・ミルの共演曲“Bougie”。リル・ダークはシカゴ・シーンで勢いのあるラッパーですね。警察沙汰も多かったり、西海岸のラッパーたちやJ・コールと喧嘩したりと、いろいろな意味で威勢のいい、やんちゃな人です」

田中「仲良くしろよ~。一方のミーク・ミルは、2018年末にリリースした出所後の復活アルバム『Championships』が話題だったフィラデルフィアのラッパー。この曲ではファースト・ヴァースでラップしています」

天野「ライミングのセンスやリズミカルなラップにすごく勢いがあって、かっこいい! 主役のリル・ダークを差し置いて、ミークのスキルにほれぼれする一曲です。内容は金持ちとモテ自慢なんですが(笑)。ちなみに曲名の〈Bougie〉は、ミーゴスの大ヒット曲“Bad And Boujee”(2017年)の〈Boujee〉と同じ〈ブルジョワジー〉という意味です」

田中「へ~。リル・ダークの新作『Love Songs 4 The Streets 2』は今週末、7月26日(金)リリースです」

 

5. Working Men's Club “Teeth”

田中「最後の5位は、ワーキング・メンズ・クラブの“Teeth”! 彼らはUK、ウェスト・ヨークシャー出身で、まだ10代の4人組です!! と、元気よく紹介してみたんですが、天野くんはなんだか顔が死んでいますね」

天野「うーん。なんか、イギリスのバンドらしい保守性を感じちゃって。ダンサブルでインダストリアルなポスト・パンクなんですが、ガール・バンドほど攻めてはいないので、ノスタルジックに感じます。〈何の情報もなしに聴かされたら、80年代の音楽だと勘違いしてしまう〉っていう、マーク・フィッシャー的な憂うつを覚えますよ……」

田中「ニュー・レイヴの時代に出てきて一瞬で消えたバンドと何が違うのかってところですよね。KBCとかサンシャイン・アンダーグラウンドとか……。まあ、そうした感想も理解できますが、ファット・ホワイト・ファミリーシェイム以降のインディー・バンドという位置づけだった彼らが、ここにきて一気にマス・アピール可能な音楽性を解放したのがおもしろいなと思って。マジでビッグになってほしいし、僕は彼らにはかなり期待していますね」

天野「そんなにポップな音でもない気がするけど……。僕としては、インディーだったらガール・イン・レッドの“i'll die anyway.”を紹介したかったので、興味がある人はそっちも聴いてみてくださいね!」