インタビュー

朴葵姫『Harmonia -ハルモニア-』 押尾コータローと渡辺香津美による委嘱作品をはじめ、〈今〉の作品を集めた意欲作

朴葵姫『Harmonia -ハルモニア-』 押尾コータローと渡辺香津美による委嘱作品をはじめ、〈今〉の作品を集めた意欲作

押尾コータローと渡辺香津美による委嘱作品をはじめ、〈今を生きる〉作品を集めた意欲作

 爽やかな朝の光に包まれた緑の庭を、すっと風が通り過ぎていくような。そんな曲想が印象的なセルジオ・アサドの“インヴィテイション”は、朴葵姫にとって初の多重録音。ニュー・アルバム『ハルモニア』のオープニングを飾るこの曲は、その名のとおり彼女の新しい世界への招待状だ。続いては押尾コータローが彼女のために書き下ろした“ハルモニア”。親しみやすいメロディとビートを刻むタッピング、そして要所で決まるハーモニクスの響きが心地よい。この冒頭の2曲だけで、彼女が本作にかける意気込みが十二分に伝わってくる。

朴葵姫 朴葵姫 コロムビア(2018)

 「前作までは、聴く人にとって懐かしい曲とか、ロマン派の作品などを録音してきたのですが、今回は私たちの世代の音楽といえるものを作りたい、と思ったんです」

 そこで生まれたのが、現代の作曲家、しかもギタリストがギタリストのために書いた作品を集めたアルバム、というコンセプト。そこから日本を代表するギタリストに曲を委嘱するというアイデアにも行き着いた。その相手として白羽の矢を立てたのが、押尾コータローと、ジャズ・ギター界の巨匠、渡辺香津美だ。その理由は?

 「まず、私がお二人のファンだというのがありました。そして本作はクラシック音楽のファン以外にも聴いていただけるものにしたかった。彼らに書いていただくことで、自分がギターでできることにも広がりが出てくるかな、という想いもあり、ダメ元でお願いをしてみたんです。そうしたらお二人ともお忙しいのに快諾してくださって」

 そうして出来上がったのは、先の“ハルモニア”と、渡辺による“ペガサス”。フュージョンを思わせるリズミックなテーマに挟まれた中間部分では、朴の代名詞ともいえるトレモロ奏法が存分に味わえる、スリリングで華麗な作品だ。

 「どちらの曲もメロディが綺麗で、可愛らしい部分もたくさん入っている。男性的ではないというか、私をイメージして書いてくださったことが伝わってきて嬉しかったですね。香津美さんの曲はクラシックの奏法を活かした曲で、いろんな楽章から成るひとつの物語のよう。そして、リズムや和音にジャズらしさが存分に入っている。押尾さんの曲はまた全然違って、タッピングやハーモニクスのやり方とか、フィンガーピッキングならではのテクニックが駆使されていて、技術的に得るものがたくさんありました。だけど自分のものにするのはすごく時間がかかって、これが一番難しかったです」

 さて、この2つの委嘱作品がアルバムの大きな目玉であることは間違いないのだが、他の収録曲も注目すべきものばかり。「現代の作品はポップスやジャズの要素も入っていて、今を生きている音楽という気がします」と本人も語るとおり、委嘱曲だけが際立つことなく、違和感なくアルバムを最後まで聴けるのだ。セルジオ・アサドはブラジル出身のギタリストで、民族色の強い作品も多く残しているが、今回はそういった部分からは離れ、純粋にギターの魅力を楽しめるメロディアスな曲をチョイスした。また、おそらく日本では初めての録音と思われるアメリカのギタリスト、ケビン・カラハンによる楽曲は、美しさの中に深い知性を感じさせる。そしてギター・ファンにとっては、惜しくも一昨年亡くなってしまったローラン・ディアンスの作品や、アンドリュー・ヨークの“サンバースト”などが収録されているのも嬉しいところだろう。

 「メロディが美しい曲とアグレッシブな曲、というように対比が付けられるように選曲しました。曲順もコントラストが引き立つように気を使いました。部屋の中でも野外でも、自然に聴けるアルバムになったと思います」

 2月の紀尾井ホールでのCD発売記念コンサートをはじめ、国内外で本作の曲を披露する機会が予定されている。クラシックのファンのみならず、ギターが好きな人は、ぜひ一度耳を傾けてみてほしい。ギターという楽器の可能性と、その美しさを必ずや感じられるはずだから。

 


LIVE INFORMATION

朴葵姫 ギター・リサイタル~新たなる出会い~
○2/23(金)18:30開場/19:00開演
会場:東京・紀尾井ホール
出演:朴葵姫(ギター)

土曜ソワレシリーズ《女神(ミューズ)との出逢い》
第271回 朴葵姫ギター・リサイタル
○3/17(土) 東京・フィリアホール

朴葵姫ギターリサイタル
○4/13(土)19:00開演 会場:福岡・あいれふホール
○5/12(土)14:00開演 会場:埼玉・サンシティホール
出演:朴葵姫(ギター)

Kyuhee Park presents ギター界のNEWウェーブを聴く。
朴葵姫×ガブリエル・ビアンコ
○5/30(水) 19:00開演 会場:東京・ヤマハホール
出演:朴 葵姫(ギター)、ガブリエル・ビアンコ(ギター)

www.concert.co.jp/artist/kyu_hee_park/

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