スコットランド、エディンバラに拠点を置くヤング・ファーザーズは、リベリア移民のアロイシャス・マサコイ、ナイジェリア系のケイアス・バンコール、そしてエディンバラのドライロー出身のグラハム・“G”・ヘイスティングスからなる3人組だ。彼らが約3年ぶりとなるニュー・アルバム『Cocoa Sugar』をリリースした。
2011年から2013年にかけて2つのミックステープを発表したのち、ビッグ・ダダからリリースしたデビュー作『Dead』(2014年)でマーキュリー・プライズを獲得。本作はきわめてポリティカルなメッセージを掲げた『White Men Are Black Men Too』(2015年)に続く3作目で、ビッグ・ダダの親レーベルであるニンジャ・チューンへの移籍作となっている。
若干のブランクを挟んだが、ヤング・ファーザーズの活動は停滞していたわけではない。トリップ・ホップというアート・フォームを生んだ、まさに彼らの親のような存在であるマッシヴ・アタックとは日本公演を含むツアーを回り、EP『Ritual Spirit』で“Voodoo In My Blood”を共作。さらに、ダニー・ボイル監督直々の指名で映画「T2 トレインスポッティング」に新曲“Only God Knows”を提供。まさしく大躍進を遂げている。
しかし、〈ヤング・ファーザーズ〉と聞いて、あなたはいったいどんなサウンドを思い浮かべるだろうか? そのサウンドのイメージはいまいち焦点を結ばないのではないだろうか? 〈サイケデリック・ヒップホップ〉〈オルタナティヴ・ヒップホップ〉〈エクスペリメンタル・ラップ〉……彼らの音楽に対しては様々な表現がなされるが、いくら既存のジャンルをあてはめようとしても据わりが悪い。
そこで今回は、天井潤之介と近藤真弥という2人の音楽ライターにヤング・ファーザーズを多角的に語ってもらい、その対話から彼らの実像を浮き彫りにしようと試みた。サウンド、歌詞、過去の音楽やカルチャーとの繋がり……多岐に及んだテーマから〈あなたにとってのヤング・ファーザーズ〉を掴み取っていただければ幸いだ。 *Mikiki編集部