前作から3年間、その種蒔き期間を埋めてくれる作品あれこれ
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ジェラルドの死はブルックリン界隈に深い悲しみを与え、追悼の意を込めてダーティ・プロジェクターズが配信EP『About To Die』を、ナショナルが“About Today”を発表しています。ストリングスを配したドラマティックなウワ音と、ダブステップ以降を感じさせるビートが効いた本作のオープナーもまた、亡き友に捧げられた一曲。
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もともとアフロ風味を積極的に採り入れてきたTVOTRですが、この3年間、ティナリウェン作品やフェラ・クティのトリビュート盤に参加するなど、キップとトゥンデは本場の音と触れる機会に恵まれました。本作収録の西アフリカ産ブルース曲“Wily Kataso”でも2人は奮闘し、その成果は『Seeds』の冒頭曲で見られることに。
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ブルックリン在住の彼らは、この2作目で肉体的なビートを伴いながらディスコやファンクに急接近。ZE作品をモダンに解釈したようなプロダクションで、TVOTRの背中を追いかけています。というか、もしシーテックが自我を出しまくってブルーノ・マーズを手掛けたら、こんな音になるんじゃないの?と思ってみたり……。
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かつてTVOTRも籍を置いた4ADに所属するLAのローファイ女子。エクスペリメンタルな変則ビートを操る様なんてまさしくTVOTR的だし、シャンガーンやチャンガ・トゥキっぽいアプローチを見せたかと思えば、チル&Bもスルッと呑み込んでしまう胃袋のデカさ、何だかよくわからないガチャガチャ感も先輩譲り。
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フェデラル・プリズム入りも囁かれた彼女は、本作の指揮をシーテックに委ね、オーガニック・ソウルへと路線変更。シーテック色が強く出ているわけではないものの、“Cobbler”での似非ラテン・ファンク感などはTVOTR好きにもヒットしそう。なお、過去にケリス作品を手掛けたダニエル・レディンスキーが『Seeds』にコーラス参加。
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2000年代半ばからUSインディーの主導権はブルックリンが握っていましたが、アリエル・ピンクや100%シルク勢の台頭もあり、LAが幅を利かせていくことに。そうしたなかTVOTRも拠点をかの地へ。同じくライアーズやシーテックのマブダチであるグリズリーのエドもLAに移住。温かい日差しを浴び、音の鳴りも若干大らかに?
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音作りの要であるアドリアーノの脱退を受け、方向性を見失っていたCSS。そのテコ入れに寄与したのがシーテックです。随所で登場するサイケ&ダビーな音飾はモロに彼印だし、ハイエナジーなパンク曲“Dynamite”も『Seeds』収録の“Lazerray”に似ていて、数ある近年のシーテック・ワークス中でも良い意味で手癖の出た一枚。
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TVOTRやアニコレが蒔いたポスト・トロピカルの種は、UKでも立派に芽生えています。こちらのグループは3人中2人のメンバーが打楽器担当ということもあり、パーカッシヴな楽曲が特徴的。フリーキーなフォークにアフリカン・テイストを混ぜた曲なんて、キップの別名義であるレイン・マシーンと凄くよく似ていますよ。
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もともとニューウェイヴ志向の強い女性だから意外な顔合わせではないものの、それでもシーテックの手掛けた2曲――トロピカル・ダブステップ“Fame”とTVOTRマナーなエクスペリメンタル・ロック“This Isn’t Our Parade”のハマリ具合は凄かった。ヒップホップ勢のインディー化が進んだ時期を象徴するコラボと言えましょう。
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大半をシーテックがプロデュースし、ジャリールも一部でドラムを披露した、元モデルのリッシー嬢率いるNYの4人組が放った処女作。〈ややマニッシュなブロンディ〉といった雰囲気は、オールディーズ趣味を覗かせる“Right Now”、70sのNYパンクを再現したような“Winter”あたりの『Seeds』収録曲へも繋がるかしら。
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リベリアとナイジェリア系のMC 2人+スコティッシュ系のビートメイカーから成るエジンバラのユニット。インディー流儀のエレクトロ・アフロ・フュージョンなトラックと、歌心をチラつかせる呪術的なラップの組み合わせは、〈ヒップホップ・サイドからのTVOTRに対する回答〉と言って差し支えないでしょう。