いきなり登場した今年のベスト・アルバム候補だ。DJマスタードがほぼ全編をプロデュースし、往年のGネタもスパイスに用いながら引き算のビートでモダンに対応。TDE軍団や身内のタイ・ダラー・サインらが駆けつけ、現在の西海岸に漲る機運を詰め込んだような、クールで不穏な熱気がヤバい。
これまた今年のベスト・アルバム候補のひとつか。全国区クラスのゲストも多彩なメジャー仕立ての作品ながら、盟友ケンドリック以上に当人の語りがローカルなノリを引き寄せているかのよう。タイラー・ザ・クリエイターとコラプトという新旧顔合わせも興味深い。次のTDE作品も楽しみだ。
サンフランシスコから現れたハートブレイク野郎のメジャー・デビュー作。表題曲のゴリゴリした念押しはRBXを連想させるが、そういった伝統的な暑苦しさとベース・バウンシーなボトムを乗りこなす足回りの現代性が彼のカッコ良さに繋がっている。クルーの身内によるビートがいずれも良好だ。
サブ・ポップと契約した異能トリオの初フィジカル流通作。金属など物質音中心のインスタレーション的な音世界が広がっている。一瞬ドラムレスにも響く独特さながら、隙間で聴かせるグルーヴの妙がクセになる。若手のピストル・コック・クリーや重鎮キングT、グーチの参加もアリ。これも西海岸!
ベイエリアでライヴワイアー軍団を率いる若き暴君の最新作。Gファンク後継型とポスト・ハイフィーという両軸の流れをうまく作品中で折り合わせてくる人だが、その巧さと旨味は今回もバッチリだ。アイアムスー!をフィーチャーした酩酊キャッチーな“Do It Right Now”が何とも気持ち良い。
E-40 The Block Brochure: Welcome To The Soil 6 Heavy On The Grind(2013)
ヴァレホが生んだ奇才。時代の音を消化吸収してフリーキーに吐き出す対応力と個性の強さは、もうすぐキャリア30年に及ぶとは思えない怪物だ。昨年末に3枚同時で出たうちの本作は、プロブレムやHBKからフレンチ・モンタナらも呼び寄せて我流で打ち負かすという恐るべき横綱ぶり!
ダンジョン・ファミリーの末裔がフューチャーなら、この2チェインズはDTP軍団からサヴァイヴした苦労人という感じか。ATLに止まらないオール・サウスなサウンド布陣も相当に頼もしく、そんな泥臭いビートを戯画的なチンピラ感でアクたっぷりに乗りこなす姿には当分敵う者は出てこなそう。
西海岸と違って、サウス勢は期待の新進MCほどアルバムをなかなか出してこない傾向にあるような……ってことで、しっかり出てくるアルバムは本作のように良くも悪くも全方位型になるのかもしれない。振り幅の広い内容だが、2チェインズとの“HeadBand”、フューチャーとの“Ready”がやはり双璧。
もう昔ほど叩かれてすらいない気もするXXL誌の某企画だが、あまり日本では知られていない彼のピックアップは良かったのでは。ホプシンのレーベルから登場したジョージア出身の遅咲きラッパー(32歳)で、盟友ディジー・ライトとはまた違って白いニュアンスのある語り口がおもしろい。