世界デビュー盤は、リストの3つの“愛”がテーマ!
14歳で天才少女として鮮烈なデビューを果たし、世界の檜舞台に立ち続ける小林愛実。2015年のショパンコンクール出場を経て、現在カーティス音楽院で研鑽を続ける彼女は、いまや日本を代表する若手ピアニストの筆頭といっても過言ではない。「ドイツの音楽が好き」ということで、デビュー以来ベートーヴェンやシューマン、ショパンなどを中心にレパートリーを広げてきたが、6年ぶりの録音で真っ先に選んだのはフランツ・リストの音楽だった。
「若くて指がよく動くうちに、リストを弾いてみたいと思ったんです。昔は、リストといえば《愛の夢》でしょ、といった一面的なイメージしか持っていませんでした。でも、カーティス音楽院でいまの先生と出会って、先生の好きなリストと向き合うようになったら、こんなにおもしろい作曲家はいないと思うようになりました。
たとえば今回録音した《ペトラルカのソネット》(巡礼の年第2年『イタリア』より)、この音楽の元となった詩を読むと、ものすごく情熱的なんです。第47番は主人公が教会で女性にひと目ぼれするエピソードなのですが、恋に落ちる感情の揺らめきまで、音として完璧に再現されている。第104番、第123番と進むうちに、主人公はちょっとストーカーみたいになっちゃって怖いのですが(笑)。この曲を作曲したとき、リスト自身もマリー・ダグー伯爵夫人との激しい恋に落ちていたと考えると、苦しみも含めての愛を描きたかったのかな、などと解釈がふくらんでいきました」
さらにリストの愛は、進化していく。
「つづく《ダンテを読んで》では、まさにダンテの『神曲』に描かれた宗教的な愛が描かれます。そしてラストはあの《愛の夢第3番》ですが――これってじつは歌詞もあって、人間愛みたいな大きな愛を描いた曲なんですよね。リストの3つの“愛”が、今回の大きなテーマです」
目を輝かせながら話す小林の解説に惹きこまれ、思わずレクチャーコンサート開催をリクエストしてしまうほどだった。ショパンをカップリングしたことについては、作曲家の関係性はもちろん、「近年最も長い時間向き合っている作曲家」であることを挙げる。
「いまの自分を知っていただくのにふさわしい2人だと思いました。17歳ころから“ピアノを弾く意味とは”と迷い続けていた私にとって、ショパンコンクールはそれまでのけじめでとなり、ピアニストを続ける決意のきっかけとなる大きな出来事でしたから。あれから2年半、たくさんの出会いや刺激から得た新しいステージをお見せできたらと思っています」
LIVE INFORMATION
日本フィルハーモニー交響楽団公演
○7/12(木)19:00開演 杉並公会堂
○7/13(金)19:00開演 大宮ソニックシティ
○7/14(土)19:00開演 横浜みなとみらいホール
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番
西本智実(指揮) 日本フィルハーモニー交響楽団
www.kajimotomusic.com/jp/artists/k=243/
TOWER RECORDS INFORMATION
小林愛実 ミニライブ&サイン会
○6/17(日)14:00~ タワーレコード渋谷店7F