コラム

小林愛実『第18回ショパン国際ピアノ・コンクール・ライヴ』深く集中した演奏、豊かな旋律、躍動するリズム、壮麗なクライマックス

Photo by Wojciech Grzędzińsk, Dariusz Golik, archiwum NIFC

独特の緊張感の中での深い集中、旋律の歌、躍動するリズム、壮麗なクライマックス

 2021年10月に開催された第18回ショパン国際ピアノ・コンクールほど、日本のクラシック愛好家を夢中にさせたコンクールは過去に無かっただろう。日本人の1次予選参加者が14名、しかもCDでメジャーデビューしている人気・実力を兼ね備えたピアニストが小林愛実を含み5名もおり、海外の参加者との、あるいは日本人同士の競い合いが、連日YouTubeで生配信されたからである。しかも、その中で日本人の活躍が目立ち、ファイナルに進んだ反田恭平が第2位、小林愛実が第4位に見事入賞し、クラシック音楽の枠を超えた話題となったことはご承知の通りである。

小林愛実 『第18回ショパン国際ピアノ・コンクール・ライヴ』 NIFC(2022)

 このCDはコンクールを主催するポーランド国立ショパン研究所(NIFC)の自主レーベルによる発売で、小林愛実のコンクールでの第1次~第3次予選、及びファイナルでの協奏曲演奏を2枚組に収めている。録音は、あのコンクール独特の客席がしんとなった緊張感の中での、彼女の弱音での深く集中した演奏、旋律の豊かな歌、生きて躍動するリズム、壮麗なスケールを描くクライマックスを見事に捉えている。

 彼女の演奏の凜とした気品の高さ、魂の深淵をのぞき込むような深みのある演奏は、もともと順位付けされることを拒む独自の境地と呼ぶべきもので、彼女のやり方でショパンの本質に肉薄している。スケルツォ第4番、幻想ポロネーズ、バラード第2番に聴く、技巧や音色などの派手さを忌避した内容本位の弾き方、音楽から溢れ出す多彩な表情、豊かな感情、そして音楽に漂う静謐さ、どこか寂しげな眼差しは、彼女のものである同時に、ショパンのものでもあるのだろう。24の前奏曲では各曲の性格が上記のやり方で多様に描き分けられ、同時に全24曲が強弱、緩急、明暗などの対照、交代により強く結びつきあって一つの世界を描くのが素晴らしい。ファイナルのピアノ協奏曲第1番も外面的な効果を狙わない、繊細で、陰影が深く、歌に満ちた弾き方が彼女ならではの美の世界を生み出している。

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