ドイツはケルンを拠点とするキ。2009年の設立以来、寡作ながらも質の高さで人気を呼び、ジワジワと注目度が上昇中のレーベルだ。不思議なレーベル名は日本語の〈木〉に由来するそうで、日本人としては何となく贔屓目したくなるかもしれない。ここの特徴となっているのは、淡いトーンで描かれる美しい構図のアートワークと、そのデザインの印象そのままのダビーで朧々たるサウンドを共通項に、優れた美的感覚をトータル・コンセプトとして発揮している点で、それはこのたびリリースされた新作2枚にも顕著だ。
まず、レーベルを主宰するクリスチャン・レフラーの8曲入りEP『Young Alaska』は、物悲しい旋律を湛えたディープ・ミニマル作品で、クールだが人肌の温もりも感じさせる独特の味わいがある。またベン・コアーとニック・スミスによるコロのファースト・アルバム『UR』は、ニックが披露する物憂げなファルセットの効果もあって、ダブ・テクノ版ジェイムズ・ブレイクと言ってもいい佇まいだ。どちらの作品も憂鬱系サウンドの愛好家にはお薦めしたい佳作たちである。