一触即発の緊張状態にあった東西を、ロックンロールで繋げた奇跡のツアー!

BILLY JOEL A Matter Of Trust: The Bridge To Russia: Deluxe Edition Columbia/ソニー(2014)

  〈歴史的〉という表現がこれほどリアルに響く作品もないだろう。この『A Matter Of Trust: The Bridge To Russia Deluxe Edition』は、87年、まだアメリカと冷戦状態にあった旧ソ連でのツアーを、2CDとBlu-ray Discで追体験できる凄い代物だ。当時もライヴ盤がリリースされていたが、今回のCDでは最新リマスターに加え、ビートルズドン&ジュアンカヴァーなど11曲もの未発表音源を追加。そしてBlu-rayは7曲の未発表音源と、74分にも及ぶドキュメンタリー映像が収められた大拡張版である。また、ツアー時の秘蔵写真を満載したブックレット(計76ページ!)も資料的価値が高い。

 ここには高尚なイデオロギーなどではない、〈ロック〉というポップ・カルチャーを武器に、異国(どころか当時の敵国)に乗り込んだ一人のストレンジャーの姿が克明に刻まれている。ビリー本人が「パフォーマーとしてのハイライト」と語るほどテンションの高いステージも素晴らしいが、それ以上に未知の文化に触れて熱狂する観客の喜びをヴィヴィッドに伝えてくれる点が何より感動的だ。ペレストロイカが進行していたとはいえ、このツアーから5年と経たずにソ連は崩壊し、ロシア連邦が誕生したことを思うと、ビリーがかの地に残した痕跡は想像以上に大きいのかもしれない。 *北爪

 

 

日本から宛てられたラヴレター

VARIOUS ARTISTS We Love Piano Man : Tribute To BILLY JOEL ソニー(2014)

 佐野元春サザンオールスターズを例に挙げるまでもなく、日本の音楽シーンにもビリー好きを公言するアーティストはたくさん存在します。で、初来日から35周年目に作られたこのトリビュート盤『We Love Piano Man: Tribute to BILLY JOEL』も、非常に豪華な内容となりました。槇原敬之アンジェラ・アキJUJUゴスペラーズらによる既発の人気カヴァーをまとめて聴けるだけで十分に価値はありますが、もちろん新録モノも粒揃い! なかでも、軽快なシンセ・サウンドと男の哀愁漂う歌声のコントラストがおもしろいYO-KING“Allentown”、ジャジー・ポップに仕立てた土岐麻子“Tell Her About It”といった冨田恵一プロデュースによるナンバーが良い出来ですね。 *山西

 

 

グリークスもビリーに首ったけ!

VARIOUS ARTISTS Glee The Music Season 5: Movin' Out 21th Century Fox/ソニー(2014)

 

 TVドラマ「glee/グリー」では、1アーティストに特化したトリビュート・エピソードがこれまで評判を呼んできましたが(例えばビートルズやレディ・ガガなど)、かねてより要望の多かったビリー編も最新シーズンでついに実現! この『Glee The Music Season 5: Movin' Out』は、そのなかで披露された楽曲から成る昨年の配信限定EPに、過去の放送で歌われた4曲を追加しての日本独自仕様盤です。ソロ・デビューも記憶に新しいリア・ミシェル(レイチェル役)による“New York State Of Mind”などバラード系もさることながら、ウォーブラーズの“Uptown Girl”を筆頭に分厚いコーラスで魅せるアップ群が最高! 和気藹々とした雰囲気に誘われ、私もいっしょに歌いたくなりました! *山西

 

 

色褪せることを知らない永遠のヒット曲たち 

BILLY JOEL Piano Man: The Very Best Of Billy Joel Columbia/ソニー(2004)

 長いキャリアのなかから選び抜かれた珠玉の名曲を一枚に凝縮したベスト盤『Piano Man: The Very Best Of Billy Joel』(2004年発表)が、豪華スリーヴに加えてBlu-spec CD2仕様で新装された。本人が選曲に携わっただけあって、単なるヒット曲集というよりはビリーの多彩な音楽要素を俯瞰できる構成になっており、“Scandinabian Sky”など隠れた傑作ナンバーまで収められているのが嬉しい。もちろん、TVドラマプラトニック」にも使用されて話題となっている“Honesty”や“The Stranger”を筆頭に、代表曲はほぼ網羅されているので入門編としても最適の一枚だ。 *北爪