めちゃくちゃになるまで暴れるか。意識が飛ぶほど踊り狂うか。それともその両方か。誰かが作った流行なんてクソ喰らえ! けたたましいサイレン音に包まれながら、3年ぶりにあの3人があの3人らしい姿でお出ましだ!!

俺たちのルートを選びたい

 プロディジーがデビュー作『Experience』をリリースしてから早26年も経過した。その間にダンサーのリロイ・ソーンヒルが脱退したり、キース・フリントとマキシム抜きでアルバムが制作されたこともあったりと、グループ活動は順風満帆とはいかなかったが、それでも2作目『Music For The Jilted Generation』(94年)以降に発表された5枚のオリジナル・アルバムはすべて全英チャートで1位を獲得。ライヴではUK国内外を問わず常にビッグ・ステージを任され、壮絶なパフォーマンスでファンを魅了してきた。90年代前半にレイヴ・シーンの頂点を極めた彼らは、ギター・サウンドとパンクのアティテュードを大胆に注入した3作目『The Fat Of The Land』(97年)でキャリア最大のヒットを記録し、世界規模での成功を収めるわけだが、これを境にツアーの肥大化や先述した内部の不安定な状態などさまざまな要因が複雑に絡み合い、作品のリリースにインターヴァルを置くようになる(もちろん制作に時間をかけられるようになったことも理由のひとつだろうが……)。目立ったソロ活動を行わない彼らにとって、このインターヴァルは移り変わりの激しい音楽業界では致命的になりかねない行為だ。しかし、それでもシーンのフロントラインに立ち続けていられるのは、プロディジーの頭脳、リアム・ハウレットが語るニュー・アルバム『No Tourists』についての見解がすべてだろう。

THE PRODIGY No Tourists Take Me To The Hospital/BMG Rights/HOSTESS(2018)

 「『No Tourists』は現実逃避についての作品だ。いちばん楽な道に進むんじゃなくて、レールから脱線する必要がある。この時代、多くの人が怠け者になっていて、冒険をするという概念がなく、単純にすべてを受け入れているだけ。俺たちはそうじゃなくて、自分たちで考えたルートを選びたい。それによって楽しくなるかもしれないし、危険になるかもしれないけど、そのルートを選ぶことで自分が本当に生きているって事実をきっと感じられると思う」(リアム:以下同)。

 そう、〈周りに流されない〉というこのスタンスを頑なに守りながら、時代のカウンターに位置取りすることで得られる緊張感こそが、野獣の如きプロディジー・サウンドへと転化されていくのだ。もちろんそれは3年ぶりとなる今回の新作も例外ではない。トレンドに迎合するような態度は微塵もなく、レイヴ、パンク、ヒップホップなど彼らのルーツであるエレメンツをサウンドの支柱とし、脳天にハンマーをブチ込むような感覚の重厚なブレイクビーツ、元ネタ探しの欲求に駆られる多彩で緻密なサンプリング、ともすれば不快で耳障りになりかねない音から扇動するが如き精神を鼓舞する音までを表現したシンセやギター……と、刺激的かつカタルシスをもたらすプロダクションで埋め尽くされている。

 

緊迫感とヤバさ

 「確実にバンド・アルバム」と説明する本作、オープニングを飾るのは先行公開された“Need Some1”だ。ロリータ・ハロウェイ“Crash Goes Love”のサンプリングが効果的なこの曲は、ミッドテンポで骨太のビートが悠然と脈打ち、エレクトロニック・ミュージックのキングが堂々と入場する様子をリスナーに想像させ、アルバムの導入に相応しい威厳を放っている。続く早回しの声ネタがレイヴ感を煽る2曲目“Light Up The Sky”ではアシッディーなシンセとギターが次々と襲い掛かり、そこにマキシムの鋭いヴォイスが猛追。序盤から〈プロディジーらしい〉としか表現しようのない出来映えである。

 そんな『No Tourists』のハイライトのひとつと言えるのが、数少ないゲスト枠を射止めたホラー(Ho99o9)との“Fight Fire With Fire”か。「このアルバムのために書いた最初の曲なんだ。コラボレーションについて話すと、いまいちばん手を組んでみたかったのがホラーだったし、彼らがこの曲に途轍もない脅威を埋め込んだ。これまでで最高のコラボだったと言えるよ」とリアム本人も仕上がりに大満足している模様。ニュージャージー出身のホラーは、先日Crossfaithが主催するイヴェント〈NITROPOLIS vol.1〉で来日したばかりの2人組だ。ヒップホップ~ハードコア~ノイズを一緒くたにした彼らのクロスオーヴァー・スタイルは、まるでバッド・ブレインズとデス・グリップスが融合したかのようで、リアムの目論見通りプロディジーのサウンドと密接なリレーションシップを築き、テンポを落としたトラックにもかかわらず、とんでもない破壊力を生むことに。同曲がリアムの「俺にとって常に大事なのは、多少の緊迫感とヤバさを持ち合わせている音楽を作ることだ。だってそれが俺だからな」という姿勢をわかりやすく体現しているようにも思う。

 そのほかの注目曲についても簡単に触れておこう。初期を思い出させるヴァイブを放った“Timebomb Zone”ではアルフォンソ“Time Bomb”をネタ使い。アップリフティングなビート上に、声ネタや警告音のようなシンセなどレイヴ・フィーリングが充満したナンバーである。また、すでにライヴで披露されている“Boom Boom Tap”の風変りなサウンドも忘れられない。コミカルなビートとゲーム音楽っぽい電子音のパートから突如疾走する予測不可能な流れに、誰もがハッとさせられるはずだ。そして本編を締め括るのは、もうひとつのゲスト参加曲となった“Give Me A Signal”。キースの邪悪なヴォーカルやアシッド・ハウスな音と邂逅を果たしたシンガー・ソングライターのバーンズ・コートニーは、この客演をきっかけに一躍時の人となるだろう。

 『No Tourists』にはトレンドが入り込む余地など寸分もなく、オールド・スクールな要素がいくつもある。それなのにまったく古さを感じさせず、再生した瞬間にプロディジーとわかる。ヴェテラン・アーティストとしての風格を最良の形で示したと言えるアルバムだ。

 「大事なのは、新鮮さを感じさせながら、同時に俺たちの歴史とサウンドをレトロにならないよう描くことだった。レトロなんて冗談じゃない。そんなものに未来はない」。

プロディジーのアルバム。