昨年7月に元caroline rocksの平沼喜多郎(ドラムス)が加入し、新体制でスタートを切ったwhite white sistersが、結成6年目にして初のフル・アルバム『SOMETHING WONDROUS』を完成させた。タイミング的に、エレクトロの隆盛と共に現れたバンドのようにも見られがちだが、彼らはもともとミニマル・テクノやアシッド・ハウスなどを源流とし、VJを含むメンバー編成も含め、身体よりも感覚に訴えるバンドである。新作ではそこに海外のインディー・シーンにおけるR&Bやソウルの流行とリンクしたメロディー主体の作風も加わり、EDMをはじめとする享楽的なダンス・ミュージックとは一線を画す、強い記名性を持ったアルバムに仕上がっている。この充実したアルバムについて、メンバー3人に話を訊いた。

※white white sistersインタヴュー:ダイジェスト動画はこちら

white white sisters SOMETHING WONDROUS micro kingdom(2014)

 


――まずは改めて、メンバー・チェンジについて訊かせてください。前任のドラマーが2012年の4月に抜けた後、バンドの編成自体を再構築する手もあったかと思うのですが、結果的には2013年の7月に平沼くんの加入が発表されました。やはり、いまの編成にこだわりがあったのでしょうか?

松村勇弥(ギター、プログラミング、ヴォーカル)「もともとはベースもいて、サイド・ギターもいて……っていうバンドをやりたいというのもあったんですけど、気の合う友達がいなくて(笑)。それで前ドラマーと2人でやり出したら、それが自分のスタイルになっちゃったというか、やっぱり生ドラムがないと、white white sistersの音にはならないかなと思って。彼が抜けた後は、いろんなドラマーさんにサポートしてもらってたんで、結局ドラマーなしではライヴもやったことがないし、そうやって新しい人を探していくなかで、いい人がいたっていう」

――平沼くんは以前からダンス・ミュージックもよく聴いていたんですか?

平沼「いままではそんなに聴いてなくて、ギター・ロック系の音楽ばっかり聴いてたので、このバンドをやるにあたっては自分に備わってない部分が多かったんです。なので始めのうちはどう自分のドラミングを馴染ませたらいいのかっていうのをかなり考えました。いまもいろいろ教えてもらいながら、勉強中って感じです」

――松村くんから見て、平沼くんのドラムはどこが魅力だったんですか?

松村「僕はロック・ドラムを叩いてるところを見たことがないんで、特別そういうイメージもなく、ホントに〈ドラマー〉っていうか(笑)、ホワッとしてるのに、すごくグルーヴがしっかりしてて、センスもあるなって。あとはオリジナルの奏法みたいなのがあって、実は誰もやってないことをやってるんですよ。スネアの音をエレドラ(電子ドラム)っぽく、リン・ドラムみたいな音にする裏技を持ってるんです」

平沼「ミュートとかいろいろ使って、それっぽい音を出すやり方があるんです(笑)」

――聴いてきた音楽に多少の違いこそあれ、プレイヤーとしても、人間としても、バンドにフィットしたわけですね。平沼くんの加入が発表された日にDVDシングルの「SuperNeutral」がリリースされていて、あれもwhite white sistersとしてのひとつのステートメントになってましたよね。

【参考動画】white white sistersの2013年のDVDシングル「SuperNeutral」トレイラー映像

 

田嶋紘大(VJ、アートワーク)「ちょっとブランクがあったので、まずはシングルを一発出そうって話になって、〈じゃあ、DVDシングルにしようか〉って、わりと自然な感じでした。シングルの1曲目は松村くんが作った曲に僕が映像を乗せていて、2曲目は僕が映像を先に作って、松村くんがそこに音を乗せるっていうやり方を初めてやりました」

――音楽シーンにおいて、音楽とヴィジュアルの距離がここ2~3年でより密接になったことは間違いないと思うんですね。以前はメンバーに映像担当がいることは珍しかったけど、いまではそうでもなくなってきてる。なので改めて訊くと、田島くんがメンバーであることの意味をどう考えていますか?

松村「……なんでいるんですかね(笑)?」

――(笑)。

松村「もともと僕がバンドをやりはじめたときはVJの友達にお願いしていたんですけど、その人が辞めちゃったときに丁度いいタイミングで田島くんと知り合って、そこからあたりまえのようにお願いして(ライヴを)やっていたんです。絵にインスパイアされて曲が出来てくる部分はやっぱりあって、ライヴでこの音が映像と組み合わさったときにどう観えるかみたいなこともよく考えるので、white white sistersをやるうえでは絶対に必要な存在だとは思ってるんですけど」

――YouTubeやニコニコ動画以降っていうことを考えれば、そこはますます強みになってますよね。

松村「やっぱりメンバーにそういう人がいると、そこをもっと強められるというか、第三者にお願いしてやってもらうよりは、自分たちで考えて、ああだこうだって言える関係のほうが、より良いものができるんじゃないかなって思いますね」

――ここ2~3年の音楽シーンの流れを考えると、EDMが爆発的に広がったり、LAのビート・シーンが相変わらずおもしろかったり、チルウェイヴからインディーR&Bへの流れがあったりして、そういう要素がそれぞれ今回のアルバムにも入ってると思うんですけど、実際リスナーとしてはどんな音楽をよく聴いていましたか?

松村「EDMとかはあんまり聴かなくなって、チルウェイヴをやってた人たちがR&Bチックなほうに行ったりするのをわりと追いかけてました。あと田島くんが60~70年代の音楽を持ってきてくれたり」

田嶋「バート・バカラックにめちゃくちゃハマってた時期があったんです」

松村「最近だとストーンズ・スロウから出してた頃のメイヤー・ホーソーンとか、あとベニー・シングス。ブルックリンのボディ・ランゲージとかもすごい好きですね」

【参考動画】メイヤー・ホーソーンの2009年作『A Strange Arrangement』収録曲“Just Ain't Gonna Work Out”

 

――EDMはあんまり聴いてないということだけど、ここ最近の一部のダンス・ミュージックはすごく享楽的な、フィジカルな方向に行ってると思うんですね。日本で4つ打ちのギター・ロックが増えたのとかも含めて。でもwhite white sistersは、視覚をはじめもっと感覚的な部分を大事にしていて、もちろんフィジカルな部分もありつつ、もっとインナー・トリップできる音楽だと思うから、ここ最近の流れに対して思うところもあったんじゃないかと思って。

松村「〈安直にそっちに行ってたまるか〉みたいな気持ちはやっぱり持っていて、それを自分がやっても仕方ないというか、僕たちがああいうことをやっても様にならないんで(笑)。やっぱり、自分から出てくる音を素直に出していきたいんですよね」

田嶋「エレクトロっぽい音とかVJを入れたパフォーマンスとかっていうのは、あくまで手法であって、それ自体を表現にはしたくないんですよね。それってギターとかベースを持つのと同じで、そこからどう表現するのかが大事だと思うので」

【参考動画】ボディ・ランゲージの2013年作『Grammar』収録曲“Just Because”

 

――ギター・ロック・シーンにいた平沼くんからすると、4つ打ちのバンドが増えた日本の現状をどう見ていましたか?

平沼「確かに、それは僕も感じてました。でも松村くんも言ったように、自分がそれをやっても様にならないっていうのが大きくて(笑)。人間性として、そういうのはあんまり持ってないんですよね」

――この3人が共有してる人間性、ムードって何なんでしょうね?

田嶋「どっか擦れてるところがあるかもしれないですね(笑)」

松村「相当捻くれてると思います(笑)」

――(笑)。どうですか? 平沼くんから見て。

平沼「捻くれてるって感じでもないですけどね……僕はおもしろいなって思って見てるんですが(笑)」

――要はすごくこだわりが強いっていうことだと思うんですよね。松村くんが言った〈安直にそっちに行ってたまるか〉っていうのもそうだし、自分たちの表現に対して強い信念を持ってるっていう。

平沼「それは強く感じます。自分のなかにはっきりと何か……確信みたいなものを2人とも持ってるんだと思いますね」

 

――では新作『SOMETHING WONDEROUS』の話になりますが、さっきもちょっと言った通り、フィジカルな部分もありつつより感覚に訴えるような、幻想的な作品になりましたよね。それがアルバム・タイトルやジャケットにも表れてると思うし。

松村「最初にデモを並べてみたときは、いろんなジャンルっていうか、いろんなイメージの曲がゴチャゴチャ入っちゃうかなって思ったんですけど、完成してみて、それこそちょっと幻想的で、夢なのか夢じゃないのかわからないような空気感があったので、タイトルもアートワークもそうなりました」

――結果的にそうなったとはいえ、なぜそういう方向に行ったんだと思いますか?

松村「作ってる最中は特に何かを意識していたわけではなく、なるべくメロディーを意識して作ろうと思っていたぐらいで、絵としては曲ごとに全部バラバラだったんです」

――〈メロディーを意識した〉っていうのは、さっき挙げてもらったようなリスナーとしての傾向から、そういう方向になったわけですか?

松村「そうですね。あんまりロックンロールみたいのは聴かなくなっちゃったんで、さっき言ったような人たちから影響を受けてるんだと思うんですけど、ただなるべく自然に、自分が気持ち良く歌えるようにしたっていう感じですね」

――メロディーや、幻想的っていう点で、やっぱり“Never Ever Land”は今作を象徴する一曲になってると思うんですよね。

松村「この曲はそれこそ夢なのか夢じゃないのかわからないような世界観をイメージして作り出して、それがそのままアルバムのイメージになっちゃったって感じです。映像を観ながら曲を作るときもあるんですけど、この曲は何も観ずにやって、エメラルド・グリーンっぽい色がイメージとしてあったぐらいなんですけど」

――いま着てるTシャツの色みたいな?

松村「もうちょっと濃いです(笑)」

田嶋「アルバムのジャケットぐらい?」

松村「もうちょっと濃い(笑)」

 

white white sisters取材時の様子、中央が松村(本インタヴューのダイジェスト映像より)

 

――(笑)。ミュージック・ビデオはどうやって作っていったんですか?

田嶋「“Never Ever Land”は歌が強い曲だったし、今回アーティスト写真も顔出ししてるので、2人が演奏してるのをちゃんと撮りたいっていうのがまずあって、そこからアルバムのキー・ヴィジュアルになってる蝶を使った感じです。あんまりごまかさず、しっかり撮ろうっていうのは最初からありました」

white white sisters SOMETHING WONDROUS micro kingdom(2014)

 ――今回のアートワークもミニマリズムを感じさせるけど、前まではもうちょっとバキッとした、かっちりした感じだったのが、もうちょっと柔らかな、繊細な感じになりましたよね。

松村「やっぱり自分たちの趣向も変わってきたというか、いわゆるエレクトロ・バンドみたいに思われたくないっていうのもあるので、そこをちょっとかわしたいなって」

――もちろんジャンル的な意味でも幅広いと思うけど、それよりもミニマルとかノイズとか、非ポップなものをどうポップに聴かせるか、そこに主眼が置かれてる感じがしました。メロディーを意識したっていうのも、そういうことだと思うし。

松村「今回はほぼそういうイメージしか持ってませんでした。ちょっと制限を設けてやったつもりもあって、現代音楽チックな、ノイズとか、グリッチ・サウンドとかはなるべく入れないようにして、エディットもあんまりカチカチしたものではなく、よく聴いたらやってるぐらいのエディットにしたくて」

田嶋「〈どのポジションに置くか〉っていうのはお互い意識してやってたよね」

――それは先鋭的なものとポップなもののバランスを意識したってこと?

田嶋「そうです。自分はもともと芸大に通っていて、メインで現代美術を勉強してたんですけど、それといまやってることは言ってしまえば真逆なので、そういう意味でもバランスはすごく意識しています。ポップなものって軽視されがちだったりすると思うんですけど、意外とそうじゃないっていう意識は僕らのなかにすごくあります」

――例えば、サカナクションは先鋭性と大衆性という意味で、独自のポジションを確立してますよね。white white sistersとしては、どんなポジションにつきたいっていうのは見えていますか?

松村「めざすべきところとしては、〈サマソニ〉〈フジロック〉〈ROCK IN JAPAN〉とか、ああいう大きいフェスにもちゃんと出れるような――80KIDZはすごくいいバランスだと思うんですよ」

【参考音源】80KIDZの2013年のデジタルEP『80:04』収録曲“Berkley”

 

田嶋「OGRE YOU ASSHOLEとかね」

松村「ああいう人たちのバランス感はすごいなと思うので、今後僕らもそうなれたらいいですね」

――平沼くんがドラマー視点で見ておもしろいと思う曲を挙げるとすれば、どれになりますか?

平沼「“Experience Auras”はおもしろいと思います。手数は少ないし、フレーズ的にも単純なんですけど、でもグルーヴをすごく意識していてフレーズの派手さに頼ってない。構成もすごくおもしろいし」

【参考動画】OGRE YOU ASSHOLEの2013年作『confidential』収録曲“フラッグ”

 

――“Experience Auras”とかはまさにミニマルな曲ですけど、そういう曲をポップに聴かせるにあたっては、どんなことを意識しましたか?

松村「基本、メロディーがいちばん大事かなと思うんですけど、“Never Ever Land”とかは、AメロからBメロへの流れをすごく意識していて、入り方というか、繋がりを大事にするのがポップなのかなって思います」

――メロディーを大事にするという意味では、歌そのものも大事ですよね。“Lust For Love”なんかはそれこそR&Bチックで、かなり歌っているし。

松村「今回もそうなんですけど、もともと全部自分で録ってて、いままでは結構制限されたなかで録音していたのでできることが限られてたこともあり、ちょっと歪ませたり、エフェクトをかけて形にしてたんです。でも今回は環境が良くなったので、生声を活かしてやろうと思って、それは最初からやりたいことだったんです」

――幻想的な世界観の一方で、生々しい人間味もすごく出てると思ったんですよね。“Counterfeit Rainbow”の歌詞は、かなりエモーショナルだし。

松村「いままでよりは〈そこにいる感じ〉っていうのを音源として大事にしました。ガチガチにオートチューンをかけたりせず、ちょっとピッチが揺れている感じを残して、実際に歌ってるんだってわかるような、そういうところは結構大事にしました」

――まさに、幻想的でありつつ、人間味もある、そういう作品になっていると思います。では最後に、white white sistersといえばやっぱりライヴも大きな魅力だと思うので、今回のアルバムを踏まえて、今後どういったライヴを作っていきたいか、それぞれ話していただけますか?

田嶋「これまで通りライヴでVJを観せていくのはもちろんなんですけど、全部が全部VJを入れる必要もないかなと思っていて。照明だけで上手くハマる曲とかもあると思うし、そういう演出も含めてひとつのショウを観せられたらなと」

平沼「僕はやっぱり生ドラムなので、打ち込みでは出せない部分を強調したいと思っています。エモーショナルな部分とか、エネルギー感、ライヴ全体の根本的なところをオーディエンスにアピールできればなと。勢いも出しつつ、逆に静かなところは引っ込んだり、そういう波を意識してやりたいです」

松村「普通のバンドが出てきて、最初にガッとみんなで合わせるのってすごいインパクトで、そういう〈みんなでいっしょに音を出してる感〉って、ライヴとしてすごく大事だなって最近思うようになったんです。僕らはPCも使ってるから、わりとゴチャゴチャした部分もあるけど、あくまでもこの2人で、ギターとドラムでガッとやるっていうのを、どうお客さんに見せていくか。そこがいまの課題かなと思いますね」

 

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