ちゃんMARI(ゲスの極み乙女。)、Rei
 

Reiのファースト・アルバム『REI』が話題となっている。幼少期をNYで過ごした93年生まれのギター・ヒロインは、これまでの作品でシンガー・ソングライターとしての天性もアピール。ブルーノートのドン・ウォズ社長も絶賛するなど、海外からも熱視線が送られている。

彼女はブルース/クラシック・ロックに造詣が深く、Mikikiでも過去に、ピーター・バラカンがオーガナイズする〈LIVE MAGIC!〉絡みの音楽談義や、オカモトショウ(OKAMOTO'S)とのローリング・ストーンズ対談にご登場いただき、クレヴァーかつ熱量のあるトークを披露してもらった。しかし、『REI』ではそんな一面もキープしつつ、音楽的なポテンシャルが全面開花。ストレートなギター・チューンから、ラップ、ファンク、サーフ・ポップ、ビートルズ愛に満ちたナンバーまで幅広く、なおかつ彼女にしか表現できないサウンドが描かれている。

本作について、Reiは「同世代のミュージシャンからの影響が大きかった」と話している。そこで今回は、KenKen、CHAIなど豪華ゲスト陣のなかから、ちゃんMARI(ゲスの極み乙女。)との対談を実施。お互いのシンパシーや音楽観について語ってもらった。

Rei REI Reiny/ユニバーサル(2018)

 

〈私たちも本気でやらないとね〉ということで……(ちゃんMARI)

――本題の前に、お二人のハロウィン写真がおもしろかったので、その話から始めてもいいですか。まずはReiさんの作品から。

ちゃんMARI「これはすごい(笑)。クォリティーが高い!」

――ハマ・オカモトさんも〈生きてきて見た「ハロウィン」で最も良い〉と絶賛してましたね。ちゃんと〈MAGGOT BReiN〉になっているのも素晴らしい。

Rei「前からやってみたかったので、これは絶好の機会だと思って。おうちに東急ハンズで買った土を敷いて」

ちゃんMARI「おうちなんだ、これ!?」

Rei「そう(笑)。段ボールに穴を空けて、そこから顔を出して。土まみれになりながらやりました」

――訊くまでもなさそうですけど、このアルバム(『Maggot Brain』)はやっぱり好き?

Rei「大好きです! ファンカデリックの作品は好きなものがたくさんありますけど、シンガロングできるし、(グルーヴによって)身体が動かされるのがいいなって思います」

ちゃんMARI「これすごいわ~、最高」

――いやいや、こっちもすごかったですよ。

ちゃんMARI「すみません……。もう、やめて……(笑)。(休日)課長、ヤバくないですか?」

Rei「かわい~! これは何の格好してるの?」

ちゃんMARI「ケロちゃん(ケルベロス)だよ」

――「カードキャプターさくら」ですよね。僕の知ってるケロちゃんとはだいぶかけ離れてますけど(笑)。

Rei「ふっくらしてますね(笑)」

ちゃんMARI「ベースがすごく弾きやすかったそうです(笑)。Hydeさん主催のハロウィン・パーティーだったから、他の方たちはすごく美しい、ファンタジックな感じで。〈私たちも本気でやらないとね〉ということで……」

――本気でやった結果が。

ちゃんMARI「こうなりました(笑)」

――ちゃんMARIさんがコスプレしてるのは、主人公の木之本桜ですよね。これは誰のアイデアですか?

ちゃんMARI「川谷(絵音)くんです。やっぱり世代ですよね。(アニメが放映されていたのが)小学校高学年くらいだったので、私も時々観てました」

Rei「私も! 全話観ました。可愛いよね」

 

二人とも、内に秘める炎がある感じがします(Rei)

――お2人って、どんな子どもだったんでしょう?

Rei「目立ちたがり屋でした。想像の世界で遊ぶのが大好きで、一人で公園に放り出されても、自分で物語を作って何時間も遊んでるような子だったそうです。両親が寝てるときに、夜中に月明かりの下で積み木をやったりとか(笑)」

ちゃんMARI「私も同じような感じかも。何時間でもひとりで遊べる感じで。すっごい静かだなって思ったら、お絵かきを何枚もしてたとか。あと、(通園)バスの中でめちゃくちゃ歌ってたらしくて(笑)」

Rei「そういう子には一人遊びできる楽器がいいよね!」

ちゃんMARI「うん。楽器はもう、ず~っとやってました」

――それでReiさんはギター、ちゃんMARIさんはピアノに出会うと。パーソナリティーを形成するうえで、楽器はやっぱり大きかった?

Rei「たぶん同じくらいの歳だよね、楽器を始めたの?」

ちゃんMARI「そうだよね、4歳くらいに」

Rei「私は、感情の捌け口がひとつ出来たことによって、楽器がない人生より、ずっと楽しく生きられてるなって思うんです。フラストレーションとか、ネガティヴな感情とかも音楽に昇華させることによって均衡を保ってるというか」

ちゃんMARI「うんうん。あと、家族や学校での友達とはまた別のコミュニティーに入れたのもよかったな。それまでに知ってたのと違う、楽しい世界を知ったという感覚があって。それはよく覚えてます」

――渡米してブルースと出会ったReiさんと、ヤマハ音楽教室でクラシック・ピアノを学んだちゃんMARIさん。お二人のルーツはけっこう違いそうですけど、性格的な面ではかなり通じ合っているみたいですね。

Rei「勝手にシンパシーを感じてます。私、普段は穏やかに見られるんですよ。でも、ステージだと暴れるから〈すごいギャップがあるね〉って言われて」

ちゃんMARI「私もそれ、すっごい言われる(笑)。この間も『HEY!HEY!NEO!』に出演させていただいたとき、(ダウンタウンの)松本人志さんに〈おとなしそうやな~〉と言われて、〈そっか~〉と思ったんですよね。初対面だと、そういうふうに見えるんだなって」

Rei「ちゃんMARIはおしとやかな感じだけど、ピアノに乗っかったりするからね」

ちゃんMARI「ね~(笑)。そういうところは似てるのかも」

Rei「二人とも、内に秘める炎がある感じがします」

 

Reiちゃんは、この世代のギタリストではダントツだと思ってて(ちゃんMARI)

――そんなお二人が知り合ったのは……。

Rei「iki orchestraだよね?」

ちゃんMARI「そうだよね。去年の……」

――〈ARABAKI ROCK FEST.〉に出演したんですよね、その名義で。

Rei「そうです。中村達也さんと一緒に〈何かしたいね〉と話してたら、〈アラバキ〉の出演オファーをいただいて。〈じゃあ、おもしろいバンドを組もうよ〉となって、ちゃんMARIとひなっち(日向秀和)とご一緒することになりました。当時、ちゃんMARIはソロでセッションに参加していて、アドリブの造詣もある方なんだなーと気になってたんです。それでお声がけしました」

フジテレビNEXTの番組「TOKYO SESSION」の映像。出演はiki orchestraの4人
 

――お声がかかって、ちゃんMARIさんはどう思いました?

ちゃんMARI「〈いいのかな~? でも、うれし~!〉って(笑)。ここ数年はゲスの極み乙女。での活動しかしてなかったんですけど、バンドが活動休止になったとき、〈何しようかな?〉と宙ぶらりんになっちゃって。そういうタイミングで声をかけてくださったのも、うれしかったですね」

――もともと、Reiさんのことはご存知でしたか?

ちゃんMARI「音源だけは聴いてました。でも、こういう女の子だとは知らなかったから……。実際に会って、〈マジか!〉って思いました。想像してたよりもずっと若くて、かわいらしい女の子だったから。もっとこう、玄人っぽい感じなのかなーと勝手に思ってたので(笑)」

Rei「あはは(笑)」

ちゃんMARI「それで、ギターを弾く姿を間近で見たときに、もう一回〈マジか!〉となって(笑)。〈すげ~!〉って思いましたね」

――お互い、プレイヤーとしての魅力はどんなところだと思います?

Rei「ちゃんMARIは、客観的な部分と本能のバランスを無意識的にコントロールしてるのかなーって思います。今回、初めて一緒にレコーディングしたんですけど、自分のプレイが音全体のなかでどういう立ち位置にいるのかをロジカルに見極めてるんですよね。でも、ステージでは心の赴くままに思いっきり弾くんです。そういうバランスがすごく取れてる方だなって感じてます」

ちゃんMARI「めっちゃしっかりした答え……。こういうところが好きなんですよね~!」

――わかります(笑)。

ちゃんMARI「Reiちゃんは、この世代のギタリストではダントツだと思ってて。こんなにプレイも音作りもすごくて、それを歌いながらできるっていう。しかも声もチャーミングで良い。もう、めちゃくちゃ揃ってて……すごい(笑)! 素敵です、ホントに」

――音楽の話ってよくするんですか?

Rei「するよね? 前、焼肉屋で……なんだっけ? 裸のジャケットのさ」

ちゃんMARI「ライだ!」

Rei「それそれ、オススメしてくれて」

――焼肉屋でライの話をしてるの、最高ですね(笑)。

Rei「あとはお互いの活動や、どんなプロジェクトに関わってるかとか(近況も)よく話しています」

――ちなみに、お2人が最近よく聴いているのは?

Rei「ヴァルフペックとトム・ミッシュですね。ヴァルフペックは、仲良さそうなところがよくて。音だけだとめっちゃタイトな演奏に聴こえるけど、遊び心を交えてやってるので安心するんです。あとはユーモアもありますよね、有名曲をもじったりとかしていて。〈pay respect and renewal〉な意識が伝わってきます」

ヴルフペックの2018年の楽曲“Soft Parade”。曲名はドアーズの69年作から?
 

ちゃんMARI「私はまとまりがないんですけど、邦楽だとWONKとか。あとはアルカとかノイズ系。ヒップホップだとノーネームやドレイクとか、その辺を聴くことが多いです」

――ひょっとして、趣味は暗いほうですか?

ちゃんMARI「あー、暗いですねー(笑)」

――Reiさんはどちらかというと明るいイメージだけど、陰りやひねりもあるというか……。

Rei「そうですね、ブラック・ジョークみたいな。イギリスが特にそうだと思いますけど、〈sarcasm〉というか、そういう文化は欧米から受け継いでいる気がします。リリー・アレンも大好きだし」