英国を代表するインディペンデント・レーベル、4ADが2019年に設立40周年を迎えた。

80年代にはポスト・パンク~オルタナティヴ・ロックを牽引したバウハウスやコクトー・ツインズ、ピクシーズらのサウンドと、23エンヴェロープが手掛ける耽美的なアートワークで確固たるカラーを確立。2000年代以降はそうしたイメージに囚われることなく、TV・オン・ザ・レディオやセイント・ヴィンセントらの先鋭的なサウンドを届けてきた。そして2010年代、ディアハンターやグライムスなどの代表作を世に送り出した近年は、4ADにとって何度目かの最盛期だと言えるだろう。

そんな節目の年にMikikiでは〈4AD 40周年記念特集〉を企画。その一環として今回は、〈私の4AD〉というテーマでアーティストとライターに選盤とコメントを募った。第1弾はNatsuki Kato(Luby Sparks)、塩塚モエカ(羊文学)、武井優心(Czecho No Republic)、Reiという4人の音楽家の回答を掲載。それぞれのチョイスと読み応え十分のコメントを、どうぞお楽しみください(近年の活動にもフォーカスする目的で、選盤は可能な限り2008年以降のリリース作品のなかからお願いした)。 *Mikiki編集部


 

Natsuki Kato(Luby Sparks)

PALE SAINTS 『In Ribbons』 4AD(1992)

4ADは、僕にとって〈レーベル単位で聴く〉という音楽の楽しみ方を最初に提示してくれたレーベルです。初めて聴いたのはコクトー・ツインズ、高校生くらいの頃ニューウェイヴ好きの父親からMVを見せられて、オペラみたいな歌い方に動揺しながらも、煌めく映像と夢見心地なサウンドにメリーゴーランドみたいな心地よさを感じてすぐ虜になりました。『Heaven Or Las Vegas』をツタヤで借り、その流れで特に僕がアート・ディレクションまで多大な影響を受ける事になる80〜90年代4ADのドリーム・ポップを遡り、ペイル・セインツにもたどり着きました。イアン・マスターズの男性ベース/ヴォーカルに女性コーラスというスタイル、複雑なリズムに絡み合う一概にシューゲイザーとは言えない甘美なフィードバックとアルペジオのツイン・ギター、切なさとポップさ両方を秘めたメロディー、『In Ribbons』には僕がLuby Sparksで表現したい事が詰まっています。近年ではinc.など違う方向の自分のフェイヴァリットが4ADだと後から気付いて驚くこともありますが、音楽性は違えど今もなお完璧な美意識をここまで頑なに持ち続けているレーベルって4ADくらいではないでしょうか。レーベルなんて言葉では収まらない、永遠に憧れる耽美な世界観がここにはあります。

 

塩塚モエカ(羊文学)

DEERHUNTER 『Halcyon Digest』 4AD(2010)

4ADは実験的でありながらポップさを持っている面白いバンドを多く取り扱っているイメージです。ディアハンターのこの一枚は、初めて聴いた時衝撃を受けました。このアートワークからもわかりますが、一曲一曲がセンスの塊! 特に“Coronado”は大好きですー。

 

武井優心(Czecho No Republic)

ベイルートの中では一番時代の音作りを取り入れた一枚なのかなぁと勝手な印象を抱きました。とくにドラムの音がタイトで小躍りしたくなっちゃう。全曲聴いていてひたすら気持ちが良く高揚感が途切れることはない。完全人力ドリーム・ポップ。

4ADについて:
いつもクールな音楽を輩出して頂きまして本当に感謝してます。
2012年に雪の降る渋谷でベイルート来日公演を観に行ったのが今でも激しく記憶に残ってます。また来日する日が来ることを心待ちにしてます!

 

Rei

BON IVER 『Bon Iver』 Jagjaguwar/4AD(2011)

友達から勧められて借りてきたCDを初めてプレイヤーで流したとき、シンクの底に吸い込まれていく小さな金魚のような気持ちになりました。水中のようで、無重力のような、その異空間はあまりに美しく独自。新しいのに安心して耳を預けられる心地よさが私を包みました。

4ADはボン・イヴェールを始め、身体が密かに欲していたビタミンを補給してくれるレーベルです。敏感な審美眼でセレクトされた作品やアーティストは、〈こんなに気持ちよい音楽があったなんて!〉と私に驚きを与えてくれます。

 


LIVE INFORMATION

Luby Sparks Presents “Thursday I don’t care about you” with Say Sue Me(Korea)
2019年1月17日(木) 東京・渋谷 WWW
開場/開演:18:30/19:30
前売り/当日:3,000円/4,000円(いずれも税込/ドリンク代別)

 

羊文学 presents 企画(仮)
2019年4月13日(土)@ 東京・渋谷 WWW

Rei Release Tour “Rei of Light”
2019年2月1日(金)静岡・浜松 FORCE
2019年2月2日(土)兵庫・神戸 VARIT. ※SOLDOUT
2019年2月9日(土)神奈川・横浜 Baysis ※SOLDOUT
2019年2月15日(金)愛知・名古屋 CLUB QUATTRO
2019年2月17日(日)福岡 BEAT STATION
2019年3月1日(金)大阪・梅田 CLUB QUATTRO
2019年3月2日(土)岡山 CRAZY MAMA 2nd Room
2019年3月8日(金)宮城・仙台 MACANA
2019年3月10日(日)北海道・札幌 BESSIE HALL
2019年3月15日(金)東京・恵比寿 LIQUIDROOM

■出演メンバー
Rei & THE MOONLIGHTS:
Rei(ギター/ヴォーカル)
真船勝博(ベース)
山口美代子(ドラムス)
渡辺シュンスケ(キーボード)

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