米津玄師やVaundyなど、現在シーンの先頭を走る多くのアーティストに影響を与えた2000年代の日本のロックシーンを振り返る短期連載〈Back to 2000s J-ROCK〉。第3回は、毛皮のマリーズやOKAMOTO’Sなど〈ロックンロールリバイバル〉の影響を受けた国内のバンドたち、そしてフェスブームの到来を目前に覚醒したthe telephones、サカナクションなどについて触れていく。 *Mikiki編集部
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毛皮のマリーズ、THE BAWDIESが日本での〈ロックンロールリバイバル〉を牽引
この連載の第1回で触れたように、2000年代前半はBLANKEY JET CITYやTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTといった1990年代から活動を続けてきたカリスマ的なロックバンドが次々に解散したわけだが、時を同じくして海の向こうのアメリカやイギリスでは〈ロックンロールリバイバル〉の大波が起こっていた。2001年にザ・ストロークスの『Is This It』が新たな時代の到来を告げ、2003年にはザ・ホワイト・ストライプスが今やすっかりアンセムとなった“Seven Nation Army”を含む『Elephant』を発表。イギリスでは2002年にザ・リバティーンズが『Up The Bracket』で2000年代におけるロックンロールのロマンを体現し、その後も数多くのバンドが登場したが、2006年に発表されたアークティック・モンキーズの『Whatever People Say I Am, That’s What I’m Not』がこの流れの沸点を刻んだと言える。
こうした海外の〈ロックンロールリバイバル〉の波に自然と歩調を合わせていた国内のバンドが、2003年結成の毛皮のマリーズと、2004年結成のTHE BAWDIES。ともにオールドスクールなロックンロールを愛しながらもそれを現代的に鳴らし、ライブハウスで着実に支持を集め、2009年にTHE BAWDIESが『THIS IS MY STORY』を、2010年に毛皮のマリーズが『毛皮のマリーズ』をメジャーから発表したのは、日本における新たなロックンロール受容の歴史を表しているかのようだ。
また、2006年に結成されたOKAMOTO’Sや、2007年に結成された黒猫チェルシーがともに短い期間でメジャーへと駆け上がったのは、日本でも〈ロックンロールリバイバル〉の勢いを昇華した独自のシーンが形成されつつあったことを証明していると言えるだろう。なお、OKAMOTO’Sのメンバーが在籍し、のちにKANDYTOWNを結成するYUSHIや呂布らも参加したズットズレテルズが2009年に発表した『第一集』は、この時代の隠れた名作として高く評価されている。
日本のフォークをミックスさせたandymori、リファレンスが明確なThe MirrazとVeni Vidi Vicious
一方、海外における〈ロックンロールリバイバル〉から明確に影響を受ける形で、2000年代後半に活動を開始したのがandymori、The Mirraz、Veni Vidi Viciousといったバンドたち。それぞれザ・リバティーンズ、アークティック・モンキーズ、ザ・ストロークスがリファレンスになっていることを感じさせたが、andymoriはそのサウンドと小山田壮平のルーツにある日本のフォーク由来のソングライティングを組み合わせることで、より幅広いリスナーからの支持を獲得した。
アークティック・モンキーズを意図的にオマージュしたThe Mirrazは賛否両論を生んだりもしたが、ザ・ハイヴスのアルバムタイトルからバンド名をつけたVeni Vidi Viciousとのスプリット盤『NEW ROCK E.P.』(2007年)は、文字通り新たなムーブメントの起爆剤となった。また、2009年にリリースされ、THE BAWDIES、The Mirraz、Veni Vidi Viciousに加え、QUATTRO、The Cigavettes、a flood of circleらも参加したコンピレーション『UNDER CONSTRUCTION 〜rock’n’roll revival from Tokyo!!!〜』はこの時代を象徴する作品だった。
なお、元Veni Vidi Viciousの武井優心と山崎正太郎によって2010年に結成されたCzecho No Republicは今年結成15周年を迎えた。彼らの活動初期にはQUATTROの松坂勇介がビンチヒッターとして参加していたり、逆に武井と初期メンバーの吉田アディムがThe Mirrazをサポートしたこともある。
そんなチェコは事務所の後輩にあたるsumikaとSUPER BEAVER、盟友的な関係のgo!go!vanillasを迎えた周年ライブを10月に成功させたばかり。日本における〈ロックンロールリバイバル〉の末っ子的な存在だったチェコが、2020年代のJ-ROCKのトップランナーたちとあいまみえる、貴重な瞬間だったと言える。


