(左から)伏見 瞬、照沼健太

ジャズやフォークからフィールドレコーディングまでを融合させた独自の瞑想的なサウンドで、世界的な注目を集めている若き異才ナラ・シネフロ。2022年にリリースしたデビューアルバム『Space 1.8』が絶賛を集めたことも記憶に新しいが、先日2ndアルバム『Endlessness』を発表、早くも今年のベストアルバムの一つとして称賛されている。そんななか待望の来日公演の開催もアナウンスされた。

今回Mikikiは、新作について短期集中連載を展開。様々な聴き手に異なる環境と媒体で『Endlessness』を聴いてもらい、その場で感想を聞く。第2回は、YouTubeチャンネル〈てけしゅん音楽情報〉を運営する照沼健太&伏見瞬に東京・南青山KEF Music Gallery Tokyoで聴いてもらった。KEFのHiFiスピーカーLS50 Wireless IIで24bit/96kHzのWAV音源を再生した。

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NALA SINEPHRO 『Endlessness』 Warp/BEAT(2024)

 

ハイレゾ × KEFスピーカーで聴いて感じた生演奏感

――今回の取材にご協力いただくKEFは、レイモンド・クックという元BBCの電気技師が1961年に設立したスピーカーブランドです。BBCとの業務提携も結んでいました。

照沼健太「イギリスのメーカーなんですね」

――そうなんです。原音に忠実で自然な音を大切にされていて、Uni-Qという同軸スピーカードライバーが特色です。そんなKEFのLS50 Wireless IIでナラ・シネフロ『Endlessness』を聴いてもらいましたが、音についてはいかがでした?

照沼「外国で音楽を聴いている感じがしました(笑)。作者や演奏している人の意図がたくさんの情報量とともに伝わってきましたね。単純な繰り返しに聞こえるフレーズも実はただ繰り返し演奏しているわけじゃないことがわかったし、次に何をしてくれるんだろう?という面白さがあって、集中して聴けました」

伏見瞬「音の抜き差しやストリングスが入った時の変化、シンセのアルペジオが他の楽器とユニゾンになった瞬間の鮮烈さ、音を左右に散らしたミックスと広がりが印象的でした。やっぱり、演奏が変化していく様がはっきりわかる音でしたね」

照沼「1曲目に顕著だったけど、みんなで演奏している感じやスタジオの空気が伝わってきてよかった。前作はプログラミングやエディット色が強い印象だったから、このスピーカーで聴くと、ああ、バンド音楽だなって感じられて。今回の取材があるので、事前にアルバムをあまり聴かないようにしていたんですけど、やっぱり家で聴くのとは違いますね」

伏見「特にサックスやストリングスは生感が非常に強く出ていたよね」

照沼「うん。サックスがよかった」

――サックスを吹いているのはヌバイア・ガルシアとエズラ・コレクティヴのジェームス・モリソンですね。低音もガッツリ出ていると感じました。

伏見「ベースがボンって鳴った時の音が太かったな。しかも、すごくまろやかな音で」

照沼「キックのボフっていう空気を含んだ感じもすごく出ていた」

伏見「ドラムが入った時、めっちゃテンション上がっちゃった(笑)。8分の9拍子かな。おお!って思いましたね」

――ドラムはトリップ・ティック・トリオ(Tryp Tych Tryo)のナシェット・ワキリというプレイヤーがメインですが、1曲目だけブラック・ミディのモーガン・シンプソンが叩いています。