フランツ・フェルディナンド

フランツ・フェルディナンドが待望のニューアルバム『The Human Fear』をリリースした。フランツらしさを受け継ぎながらテーマ的にも音楽的にも新たな挑戦をし、ポジティブなムードに満ちた快作は早くも高い評価を得ている。そんな新作のリリースを記念して、日本のアーティストたちに〈フランツ・フェルディナンドと私〉というテーマで思いを綴ってもらった。第1回に登場してもらうのはLuby SparksのNatsuki Kato。 *Mikiki編集部

FRANZ FERDINAND 『The Human Fear』 Domino/BEAT(2025)

 

Luby Sparks

フランツ・フェルディナンドと私
by Natsuki Kato (Luby Sparks)

フランツ・フェルディナンドとの出会いは遡ること15年前。当時中学2~3年生だった僕はApple製品とそのTVコマーシャルがとにかく好きだった。我が家ではTVゲーム機が禁止だったため、クリスマスプレゼントはiPod、そこに親から影響を受けた洋楽ロックやポップスを溜めていた。そんな中で2009年、フランツの”No You Girls”が起用されていたiPod TouchのCMが放映される。このiPodならゲームもできるし買ってもらえるかも、という気持ちと、それ以上に何だかわからないけどこの曲の圧倒的な〈オシャレ〉感にダブルで衝撃を受ける。すぐにCDをレンタルしてYouTubeでMVをチェック、『Tonight』のアルバムジャケット、刺激的なミュージックビデオ、赤黒ボーダーのカットソーにスタジャン、スキニーで揃えた衣装、彼らのサウンドの特徴はわからなくても、とにかく鮮烈なビジュアルから、この人たちは本当に洒落ている、ということはハッキリとわかり、ファッション含めて憧れるお気に入りのバンドとなった。

高校生の頃にはアルバム『Right Thoughts, Right Words, Right Action』がリリースされ、リアルタイムでCDを買って聴くことができた。軽音楽部がなく吹奏楽部に属していた僕は部外でエレキベースを始め、気の合う友人と洋楽のコピバンをやるようになり、彼らと一緒にZepp Tokyoでの来日公演にも行った。放課後だったので制服で駅まで行ったが、フランツのライブでお洒落できないなんてあり得ない、と駅のコインロッカーでわざわざボーダーのカットソーなど全員私服に着替えて臨んだ記憶がある。

このライブでさらにフランツにハマり過ぎた僕らは、日本のバラエティ番組でもたまに使われているしみんな絶対聴いたことあるだろう、という理由で、全員細身の黒スーツを着て”Do You Want To”を自分達の卒業式後の体育館で行われるパーティーで演奏することに決める。とんだ勘違いである。もちろん同級生もその親族や先生も誰もこの曲にピンとはきていなかったが、僕らは観たばかりのフランツのライブ版アレンジを完全コピーし、あの〈トゥットゥー〉フレーズでなんとシンガロングまで起こすことに成功した。そう、僕らではなく初めて聴く人をも踊らせるあの曲が持つパワーが凄まじかったのだ。

その後もFFSや、『Always Ascending』のツアーにも行き、青春時代に多大な影響を受けたバンドの一つとなった。Luby Sparksにおいて、音の影響はあまり感じられないと思うが、彼らから学んだ一番の魅力は、CMや体育館でたまたま聴いてもなんだかものすごく〈オシャレ〉と思わせる、その世界観だ。ヒールブーツ、ヘルベチカ的フォント、現代美術館、コラージュアートなど、彼らのサウンドだけでなく全てのビジュアルから匂い立つクールな香り。これはバンドという一つの別世界を魅せるために最も大切な部分であると思うし、メンバーチェンジを経ても作品を何枚リリースしてもフランツとしてブレないものだと感じる。僕が今でもボーダーカットソーを着るとついスタジャンを羽織ってしまうのも、きっと彼らのせいだ。

PROFILE: Luby Sparks
Natsuki(ベース/ボーカル)、Erika(ボーカル)、Sunao(ギター)、Tamio(ギター)、Shin(ドラムス)。2016年3月に結成。2018年1月、マックス・ブルーム(ヤック)と全編ロンドンで制作したデビューアルバム『Luby Sparks』を発表。2019年9月に発表したシングル“Somewhere”はコクトー・ツインズのロビン・ガスリーによるリミックスもリリースした。2022年5月11日にマイ・ブラッディ・ヴァレンタインやリナ・サワヤマなどのプロデュース/エンジニアを手掛けるアンディ・サヴァースを共同プロデューサーに迎え、セカンドアルバム『Search + Destroy』をリリース。同年6月に初のワンマンライブ〈Search + Destroy Live〉(東京・渋谷WWW X)を行い、ソールドアウトとなった。同年10月にタイ公演、2023年3月に全米7都市にて〈US Tour 2023〉、9月に〈Strawberry Music Festival 2023〉への出演を含む中国全7都市での〈China Tour 2023〉、10月に韓国公演、11月にインドネシア〈Joyland Festival〉への出演を行うなど海外での展開も積極的に行っている。2024年5月にEP『Songs for The Daydreamers』をリリース。
オフィシャルサイト:https://lubysparks.lnk.to/bio_top

 


RELEASE INFORMATION

FRANZ FERDINAND 『The Human Fear』 Domino/BEAT(2025)

リリース日:2025年1月8日(水) ※日本先行発売

■CD・Tシャツ付きセット

品番:BRC769T
​価格:7,700円(税込)

■LP・Tシャツ付きセット

品番:WIGLP495XBRT
価格:10,390円(税込)

■国内盤CD

品番:BRC769
​価格:2,860円(税込)

■輸入盤CD
品番:WIGCD495
価格:2,690円(税込)

■タワーレコード限定 直筆サイン入りアートカード付きCD

品番:BRC769TR
​価格:2,860円(税込)

■通常盤LP

品番:WIGLP495
​価格:4,890円(税込)

■限定盤LP(ホワイトヴァイナル)

品番:WIGLP495X
​価格:5,290円(税込)

■タワーレコード渋谷店限定 カセットテープ

品番:WIGMC495
価格:2,690円(税込)

TRACKLIST
1. Audacious 
2. Everydaydreamer 
3. The Doctor 
4. Hooked 
5. Build It Up
6. Night Or Day 
7. Tell Me I Should Stay 
8. Cats
9. Black Eyelashes 
10. Bar Lonely
11. The Birds 
12. It’s Funny *Bonus track

 


PROFILE: FRANZ FERDINAND
2003年5月にドミノと契約し、1stシングル“Darts Of Pleasure”をリリース。2ndシングル“Take Me Out”は世界中で爆発的な成功を収め、フランツ・フェルディナンドの名を世界に轟かせた。その名を冠したデビューアルバム『Franz Ferdinand』は全世界で500万枚以上のセールスを記録。アーティストとして常に前進を続け、『You Could Have It So Much Better』(2005年)、『Tonight: Franz Ferdinand』(2009年)、『Right Thoughts, Right Words, Right Action』(2013年)、『Always Ascending』(2018年)といったアルバム作品を世に送り出し、フランツ独自のサウンドスタイルを築き上げると同時に、ダン・キャリー、ホット・チップのジョー・ゴダードやアレクシス・テイラー、トッド・テリエ、フィリップ・ゼダールら最も先駆的なプロデューサーたちと仕事をしている。彼らの音楽は世界的に反響を呼び続け、約20年の間に商業的にも評価的にも世界最大のUKバンドの一つとなった。アルバムセールスは1,000万枚を超え、現在までにストリーミング回数は25億回、14枚のプラチナアルバムをリリースしており、ブリット・アワード、アイヴァー・ノヴェロ、マーキュリー・プライズ、さらにはグラミー賞にもノミネートを果たしている。レディング&リーズ、ロック・アン・セーヌ、プリマヴェーラ、オール・ポイント・イーストといったフェスティバルでのヘッドライナーを含む煽情的なライブショーのチケットは世界中で600万枚を売り上げを記録。2022年にリリースされたグレイテストヒッツ作品『Hits To The Head』は、彼らの楽曲の多くがいかに普遍的で愛されてきたかを思い起こさせるものであり、イギリスではロンドンのアレクサンドラ・パレスを完売させるなどUK音楽史上最も重要なバンドとしての地位を確立している。