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ヘソを曲げる+ヘソを曲げる=ポップ?

――そんな良い環境で生まれた『GOKOH』は、ドープな部分は残しつつも前作以上に全体的にポップな印象を受けました。そういう意識はありましたか?

Tondenhey「僕らはみんなヘソ曲がりなんですけど、一度ヘソを曲げて、そのままで止まってたのが前作。さらにもう一回ヘソを曲げたら、真っ直ぐポップになったような感じですかね」

一同「(笑)」

Pecori「でも2回ヘソ曲がってるんで、真っ直ぐになったとは言え一度曲がった黒ずみは残ったままで」

――曲げ跡が残ってると。

SunBalkan「Tondenheyはそういう方向を向ける意識をしてるんだと思います。8周回った上でのポップかもしれないし(笑)」

Tondenhey「だから次は何周もして、もっとおもしろい作品になるかもしれないね」

Fanamo'「今回、けっこう〈ポップなんですね〉って言われることが多いんです。でも人によっては違うみたいで、見る角度によってはめちゃくちゃ曲がって見えるところもあったりして。バンドなのかグループなのかも分からないし、ポップなのかドープなのか、はたまた違う何かなのか、人によって受け取られ方はだいぶ違うのかもしれないですね」

――だからこそ、あえて明言はしないってことですね。ポップだけどドープにも聴こえるのは踊Foot Worksの特徴でもありますけど、今作はillicit tsuboiさんによるミックスも多分に関係あるように感じました。

『GOKOH』収録曲“PRIVATE FUTURE”
 

Tondenhey「それは絶対ありますね。特にこちらからオーダーはしてなくって、それは前作の(ミックスを手掛けた)Giorgio Givvnさんにも出してないんですけど、前作は立ち会いができた分ちょっとした話をすることはできたんです。でもtsuboiさんには会ってもいなくて」

Fanamo'「微調整をするためのラリーは多少あったけど」

Pecori「初見で〈これはちょっと〉っていうところは言うんですけど、〈これはどうなんだろう!?〉くらいのものはわざとけっこう残してて、そういうところを何度も聴いたらやっぱりいいんですよね。tsuboiさんとの化学反応はデカいです」

――〈どうなんだろう!?〉というところは、もしかしたら良くないかもしれないってことですか?

Pecori「そうですね。だから最初は〈え、こうなるの!?〉って思うんですけど、次の日聴いたら〈めっちゃいい!〉ってなってる」

SunBalkan「〈あえて〉なのか、〈あえてじゃない〉のかわからないようなところがあるんですよ。でもそういうところって、ほぼすべてが〈あえて〉なんですよね」

Tondenhey「tsuboiさんが最後にもう一周ヘソを曲げてるのかもしれないね」

――その辺は、〈これってわざとですか?〉っていう答え合わせはするんですか?

Tondenhey「してないですね。1か所くらい?」

SunBalkan「“SEASONS”のTondenheyのバースで、4拍ぐらい前に置かれてるのがあってね」

Tondenhey「自分のなかで聴き応えが悪くて、でも人に聴かせると良いって言われて」

――拍をズラすとか、ミックスの範疇を超えてますね(笑)。

SunBalkan「でもそういうことをあえてやる人だって最初に聞いてたので。もともとないCメロが増えることとかもあるって言われましたからね(笑)」

フリー・ダウンロード盤『ODD FOOT WORKS』収録曲“Tokyo Invader”のライヴ映像
 

意外とヤバいベースとギター

――ライヴでも目立ちますけど、今作のトラック面でベースとギターの演奏はけっこうヤバいですよね。

SunBalkan「ライヴ後とかに言われることはあるんですけど、インタヴューでベースについて突っ込まれたのは初めてです(笑)。やっぱり曲全体とかリリックを聴く人が多いからですかね」

――1曲目の“2019 IN EXCAVATE”とか“テレコになって”ではけっこうコードや和音を多用するエグいベースを弾いていて。

SunBalkan「今回ベースライン以外にもベースが入ってる曲がけっこうあって、和音はよく使う手法ですね。自分はベースかギターから曲を作るんですけど、DTMの音色を探すのが大変だし面倒なので、求めてる要素をベースで完結させちゃうことが多くて。でもそれっておもしろいじゃないですか」

――たしかに。

SunBalkan「ベースでコードを出すのって、ピアノやシンセの音と違って意外と無いけどしっくり来るんですよ。でもベースって気付かれないことが多いですね」

――SunBalkanさんのベースって6弦ですもんね。どこまでがギターでどこからがベースか、一般のリスナーにはわかりにくいかも。

SunBalkan「1曲目(“2019 IN EXCAVATE”)のソロとか、“GIRAGIRA NEON”のソロも、ベースだと思わない人は多いでしょうね」

――ギターとのバッティングはないですか?

Tondenhey「ありますね。でもそういう時は勝手に削除しちゃいます。場合によっては自分を切る時もあるし」

――Tondenheyさんのギターも特徴的で、出てくるときはすごい主張するのに、出て来ない時はガッツリ出て来ないし、それはトラックメイカーでもあるからですか?

Tondenhey「そうですね、それが大きいと思います。欲しいとこに入れたいギターの音色があれば入れるし、必要なければ入れないです。ギターも入れて、打ち込みもシンセも入れてってなったら、完成に15年とかかかっちゃうかもしれないし(笑)。もう一人くらいアレンジャーがいればいいかもしれないですけどね」

SunBalkan「そういった意味ではやっぱりギタリスト/ベーシストであり、プロデューサーでもあるっていうことですね。自分で作った曲でもベースを入れなかったり、目立たなくさせたりするし」

 

〈金木犀の香りがするところを今日も通って帰りたい!〉

――次はリリック面について。個人的には踊Foot Worksの歌詞を聴いていると、いろんな場所で撮ったポラロイド写真をコラージュしていって、俯瞰で見るとひとつの景色が浮かび上がるような、そういうイメージがあるんです。

一同「(拍手)」

Pecori「素晴らしい!」

SunBalkan「それドンピシャじゃない?」

Pecori「伝わってんのうれし~!」

――(笑)。そういう意識はされてますか?

Pecori「全然インタヴューでは言ってないですけど、一行の描写があって、その次は全く違う景色なんだけど、どこかが受け取り手によっては繋がっているような、描写描写の連写のような歌詞の書き方をしているので、そう感じてもらえるのはうれしいですね」

『GOKOH』収録曲“GIRAGIRA NEON”
 

――しかも、たまに景色じゃなくて固有名詞がボンと入ってきたり、マンガとか映画のワンシーンが入ってきたりして。

Fanamo'「〈風景、風景、デヴィスカルノ、風景〉みたいなね(笑)」

※“GOKOH feat. オカモトレイジ”の一節〈i'm a REIJI LOVE yo/デヴィスカルノ/iphoneのbaby現像〉のこと

――え、いま〈クレしんのボーちゃん〉って聴こえた!? どこから持って来たの!?みたいな。

※“JELLY FISH”の一節〈ねぇこっち向いてよ/アバラの数もうちょっと増やして/クレしんのボーちゃんが実は異邦人/ってゆう話で布団をかぶろうよ〉より

Pecori「固有名詞とか〈こっから持って来るんかい!〉っていう感じって、突っかかったものが頭に残ると思うんですよ。例えば大きい樹があって、夕焼けがキレイで、鳥が飛んでいて、その影のところにボーちゃんが実写で座ってたら……」

一同「(爆笑)」

Fanamo'「そもそも実写のボーちゃんって何だよ(笑)」

Pecori「(笑)。そういう違和感こそが大事だと思うんです」

――その一方で、歌詞全体を見ると恋愛について歌ってるように感じる曲もありますよね。

Pecori「そういうのもありますね。前作はけっこう〈仮想空間の自分〉っていうテーマで書いてたんですけど、今回は実体験をたくさん盛り込んでいて」

前作『odd foot works』収録曲“逆さまの接吻”
 

――いい恋愛してるんですか?

Pecori「いい恋愛してると思いますか?(笑)」

――わからないですけど(笑)。

Pecori「昔の記憶を探ることもあれば、実恋愛をしていなくても愛を感じる瞬間ってあるから、そういうことを恋愛に変換することもあったりして。だから〈愛〉というのは全曲のテーマとして入ってますね。その変換の仕方によって見え方は違ってくるかもしれないですけど」

――変換の仕方で見せ方を変えるとか、先ほどのヘソを曲げるとか、あえて違和感を感じさせるとか、そういうのは踊Foot Worksの特徴のひとつですよね。

Pecori「そうですね」

SunBalkan「めっちゃある」

――何がそうさせたんですか? 自然とそうなっていくものですか?

Pecori「歌詞書きたての頃から王道のことはあまり書きたくなかったし、みんな捻くれ者なんで、トラックでヘソ曲げてるからリリックでもヘソ曲げるっていう部分があるのかもしれないですね。あとは情緒豊かなんですよ。映画を観て人の8倍くらい叫んだり、ロマンチックなところがあったり。夕日がキレイだと〈夕日キレイ~!〉って言うし」

Tondenhey「あと金木犀の香りな!」

Fanamo'「〈金木犀の香りがするところを今日も通って帰りたい!〉な(笑)」

一同「(笑)」

Pecori「そんな女みたいな言い方してない(笑)!」

Tondenhey「コールドプレイを流しながら立川の大通りをクルマで通っていたら、窓を開ける音がして〈金木犀の香りがする~、泣きそう〉とか言い出して(笑)。それからはその道を通らないと怒っちゃうっていう」

Pecori「1月生まれだから金木犀の香りが鼻についてるの(笑)」

――(笑)。あとPecoriさんは声にいい感じのディストーションがかかってるのが特徴で。

SunBalkan「わかる~。声高いのか低いのかわからないですよね」

Pecori「コンプ声っていうか。しかもそれを無理して発声してないんですよね。それまではすごい高い声で歌うとかダミ声でラップするとかしてたんですけど、踊Foot Worksを始める前に自分のキーを見つけてからは上手くなった気がしますね。ラップもキーが無いようであるので」

※音の粒を揃えるコンプレッサーをかけたような声

Tondenhey「津野(米咲/赤い公園)さんがPecoriの声ばっかり褒めるんだよな」

SunBalkan「子宮に響く音だっていう話をして(笑)」

Fanamo'「ライヴで一緒になった時も〈Pecoriさんって本当すごいですよね! 大きい声で張ってないのにちゃんと通る。踊Foot WorksってPecoriさん以外は、まあアレじゃないですか〉みたいな。俺らを下げてPecoriを上げる(笑)」

SunBalkan「それ津野さんの株も下げてない(笑)? まあでも聞いて一瞬でわかる声だよね。低くてザラついてるのに、きらびやかで」

Fanamo'「ラメだね、ザラザラのラメ」

Tondenhey「たしかに、メタリックだね」

Fanamo'「もう喋れないな」

Pecori「シャベレルヨ~(片言で)。でもこの声が低いのは昔から好きだし、武器だと思ってます」

 

(客演は)みちょぱがいい、永野芽郁がいい、吉岡里帆がいい

――毎回個性的な方々を客演に迎えているのも大きな特徴で、今作ではオカモトレイジ(OKAMOTO'S)さんとAAAMYYYさんが参加されています。この人選は誰が発案したんですか?

『GOKOH』収録曲“GOKOH feat. オカモトレイジ”
 

SunBalkan「レイジさんは三宅さんから出た案ですね」

Pecori「レイジくんとは三宅さんを通して出会って、一度自主企画にも出てもらったんですけど、いまライヴにサポートドラマーを入れてるので〈いつかレイジくんに叩いてもらえたらいいよね〉なんて話はしてたんです。そんななかで“GOKOH”を作って客演を誰にしようという話になり、三宅さんから〈レイジとかどう?〉って言われて、ドラマーなのに歌唱するっておもしろいなって思って声をかけたんです」

Fanamo'「最初は、みちょぱがいいとか、永野芽郁がいいとか言っててな。吉岡里帆がいいとか(笑)」

SunBalkan「いろんな人を挙げたんですけど(笑)。レイジさんは歌唱力が高いからとか、OKAMOTO'Sのメンバーだからとかじゃなくて、一人の人間として関わってると大きい意味が出てくる、一言で言えばカッコいい人なので、結果良かったです」

三宅「レイジから(前作のミックスをしたGiorgio)Givvn、tsuboiさんも含め、今度キイチ(Tondenhey)が野崎くんにヴィデオ撮ってもらいたいっていう話もあったりして、交友関係の点と点が線に繋がっていって。“GOKOH”のMVの監督もレイジの友達だったりね」

※野崎浩貴。オカモトレイジやきゃりーぱみゅぱみゅなど多くのアーティストと仲が良いことで知られる一般人

Tondenhey「もともと全然違うところの繋がりだと思ってた人たちが繋がっていって」

――シーンみたいなものが出来上がりつつありますね。AAAMYYYさんとは古くからの知り合いということで。

Pecori「初ライヴがRyohu(KANDYTOWN)さん、MONO NO AWARE、Nao Kawamuraさんと一緒で、AAAMYYYはRyohuさんのサポートで出てたんです」

SunBalkan「その時はそんなに喋らなかったんですけど、その後もちょくちょく一緒にやることがあって。Ryohuさんのサポートを俺がやったり、キイチ(Tondenhey)はいまAAAMYYYのサポートをやってたりする縁もあり。彼女は物事をカチッとロジカルに考える人だけど、同時にめちゃくちゃ女の子らしくて」

Pecori「でも男気というか、懐の広さみたいなものもあって」

SunBalkan「たしかに。それらがいびつだけど、魅力的に混ざり合ってる人ですね」

 

踊Foot Works、ネクスト・レヴェルへ

――ちなみに、『GOKOH』というタイトルは〈後光〉のことですか?

Pecori「そうです。全部が神がかったアルバムができたし、〈後光がそろそろ差してくんないかな〉っていう」

――完成してみて、いまはどういうモードですか?

Tondenhey「ずっとやってきてることの繰り返しではあるけど焼き増しはしたくないから、次はもっとおもしろくしたいなってもう思ってます。今回はバンドバンドしてるって言われることが多いから、次はビート・ミュージックの曲もあったり、一方でもっと生音に寄せたり、やり方はいろいろあるなって」

SunBalkan「一人一曲弾き語りとか?」

Tondenhey「そう、それもあり」

――ヘソの曲げ方の次元が変わってきましたね(笑)。

SunBalkan「個人的にはめちゃくちゃ良いアルバムが出来たんで、いまは動くための発進準備をしてる感じですね」

Pecori「うん。5月3日にあるワンマンに向けて練習もしてるし、新曲も作っていて、さらにネクスト・レヴェルに行こうって思ってます」

――Fanamo'さんは?

Fanamo'「俺もいまは5月3日のライヴに向けての準備ですね」

Pecori「でも個人的な目標もあるでしょ」

Fanamo'「ここで言うのはさ……」

――じゃあ書かないので教えてください!

Fanamo'「……実はソロ作を作ってます。盤にはしないですけど、ストリーミングだけでのリリースかな」

Tondenhey「出せなかったらどうする?」

Fanamo'「出せなかったら……みんなに沖縄旅行」

――いつまでに!?

SunBalkan「10月だっけ?」

Fanamo'「うん、10月……。いや11……」

SunBalkan「10月だよね?」

Pecori「これやっぱりMikikiさんに書いてください。〈Fanamo'ソロ10月発売予定!〉ってでっかく(笑)」

Fanamo'「完成は10月にするけど、リリースはもうちょい待って!」

一同「(笑)」


Live Information

ワンマンライヴ「ODD FOOT WORKS」
5月3日(金・祝)東京・渋谷WWW X
開場/開演:17:15/18:00
チケット:前売り3,500円(ドリンク代別)
http://oddfootworks.com/