ビートたけしには、小説からエッセイまで数多くの著作があるが、その中でも繰り返し題材として取り上げられるのが修行時代の浅草だ。浅草公園六区の中でも浅草のエンタメ文化の中心として知られるフランス座。いまや若き日のビートたけしの代名詞ともなったフランス座を舞台に、師匠の深見千三郎や数多くの浅草の芸人たちとの不思議な交わりを自伝的な小説として描く。学生運動が終わりつつあるなか、浅草のストリップ劇場でエレベーターボーイをつとめ、やがて劇場の舞台に上がるようになっていく1人の青年の物語は、1970年代の浅草を描いた稀有な作品であると共に、日本の芸能史の貴重な証言の一つだ。