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PAELLASの音楽性を構成する、メンバー4人のルーツ/フェイヴァリット盤たち

MATTON


 MATTONが愛聴盤としてピックアップしたのは、PAELLASとはバンドの在り方が大きく異なるローリング・ストーンズのライヴ盤と、〈ミニマルなサウンド〉という意味ではPAELLASとも通じそうなミツメの最新作『Ghosts』。「ストーンズは年代問わず幅広く聴いているんですけど、あえて1枚挙げるなら、ドラッグが抜けたぐらい、『Some Girls』(78年)のすぐあとぐらいのライヴ盤かな。原曲通りにまったく演奏してなくて滅茶苦茶というか、こんなに自由にやっていいんだと衝撃ですね。ミツメの新作は今年出たスタジオ・アルバムで一番リピートして聴いてます。2019年の東京でこのアルバムが誕生した意義は自分のなかでかなり大きいですね」。

 そして、ルーツ盤はPAELLASにも影響を与えたという XXの名作ファースト『XX』。「リリース当時に聴いていたマッシヴ・アタックやトリッキー、ブリアルに通じるものがありつつ、それらのに足りないものをすべて補完していて。暗いけど、仄かな光が差していて、冷ややかではあるんだけど、親密な距離感で鳴っている。いまだに特別なアルバムですね」。

左から、ローリング・ストーンズのライヴ盤『Some Girls: Live In Texas '78』(Eagle Rock)、ミツメの2019年作『Ghosts』(mitsume)、XXの2009年作『XX』(Young Turks)

 

bisshi


 bisshiが現在愛聴しているのは、カナダのジャズ・ギタリスト、ジャスティス・ダーがフランク・オーシャン“Self Control”ほかを取り上げたカヴァーEP『Favorites』。「ギターだけでメロディーを奏でたり、ギターをループさせて、そこにメロディーを付けただけの曲がほとんどなんですけど、簡単なやり方で人間味を表現しているという意味で、自分たちに近いなって」。

 また、前作『Pressure』に大きな影響を与えたテーム・インパラの3作目『Currents』と共に、一生聴き続けるルーツ・ディスクとして挙げたのはソランジュ、ブラッド・オレンジ、ロビンの共同プロデュースも手掛けるロンドンの才人、カインドネス『World You Need A Change Of Mind』。「ギターが入っていたり、入っていなかったり、ドラムに聴こえないリズムが鳴っていたり。バンドなんだけどバンドじゃない録音物としてのおもしろさに溢れていて、なおかつ、鳴りが素晴らしいんですよ。自分がディレクションして1枚作るんだったら、こういうアルバムを作ってみたいですね」。

左から、ジャスティス・ダーの2018年作『Favorites』(792441)、テーム・インパラの2012年作『Currents』(Modular)、カインドネスの2012年作『World, You Need A Change Of Mind』(V2)

 

Ryosuke Takahashi


 Takahashiが現在よく聴いているのは、ドラマーらしく、アンダーソン・パークの『Ventura』とテキサス発の音楽集団、ブロックハンプトンの首謀者であるケヴィン・アブストラクトの最新作『Arizona Baby』というリズム・コンシャスな2枚。「アンダーソン・パークは、ドラムのフレーズの作り方が歌うドラマーにしかできないことをやっているんだなと思います。ケヴィン・アブストラクトはアートワークと対極にあるメロウさ、その落差にやられました」。

 そして、ルーツ・ディスクは彼がドラムを始めたきっかけになったストーン・ローゼズのファースト・アルバム。「他のメンバーと違って、PAELLAS以前にいろんなバンドで活動してきた僕の根底にあるのがストーン・ローゼズなんです。60年代音楽のリヴァイヴァル的な作品である以前にドラム・プレイだけで聴けるアルバムですし、去年まで僕のドラム・セットにタムがなかったのはドラマーのレニの影響。制約のなかで発揮されるアイデアを僕は愛していますね」。

左から、アンダーソン・パークの2019年作『Ventura』(Aftermath/12 Tone)、ケヴィン・アブストラクトの2019年作『Arizona Baby』(Question Everything/RCA)、ストーンローゼスの89年作『The Stone Roses』

(Silvertone)

 

Satoshi Anan


 Ananのフェイヴァリットは、70年代のハービー・ハンコックの影響色濃いシンセサイザー使いが光るメルボルンのプロデューサー、ハーヴィー・サザーランドと、ソランジュの最新アルバム『When I Get Home』。「ハーヴィー・サザーランドは一聴してすぐに、この人はアーティストとして信頼できるなと思いました。ソランジュの新作は、空間の使い方に関して、70年代ソウルの実験的なサイケ感が現代的に消化されていて、数多いるフランク・オーシャンのフォロワーが越えられなかった壁を越えた作品だな、と」。

 そのフランク・オーシャンの『Blonde』は彼が音楽を判断する際の基準となっているルーツ・ディスクとのこと。「今、ポップスを作っている人はみんな指標にしている作品ですよね。ビーチ・ボーイズの『Pet Sounds』がそうであったように、実験的な要素もメインストリームのポップスの要素もすべて含んだ間口の広さがあって、誰が聴いてもいいと感じる作品なんじゃないかな」。

左から、ハーヴィー・サザーランドの日本企画盤『Harvey Sutherland』(soundofspeed/Music 4 Your Legs)、ソランジュの2019年作『When I Get Home』(Columbia)フランク・オーシャンの2016年作『Blonde』(Boys Don't Cry)