Mikiki編集部のスタッフ4名が〈トキめいた邦楽ソング〉をレコメンドする週刊連載、〈Mikikiの歌謡日!〉。更新は毎週火曜(歌謡)日、数無制限でNEWな楽曲を軸に、たまに私的マイブームも紹介していくので、毎週チェックしてもらえると思いがけない出会いがあるかもしれません◎ *Mikiki編集部
【田中亮太】
DYGL “Spit It Out(Live)”
7月リリースの新作に収録される“Spit It Out”のライヴ映像。ロンドンのヴェニュー、オスロ(Oslo)でのパフォーマンスです。たとえばシェイムと、フォンテインズDCと、スポーツ・チームと……それらのバンドとDYGLが共演するさまを、ギネス片手に観れたら最高だろうな~と想像しました。
SEVENTEEN AGAiN “Calling Dark”
こちらも7月リリースのアルバム『ルックアウト』より。淡々と刻まれるビートとなだらかなベースライン、情緒を抑え込むように歌うヤブのヴォーカルがSEVENTEEN AGAiNの新しい姿を見せてくれます。アウトロの翳りあるギターにはヴィニ・ライリーを感じつつ、スティーヴ・レイシーのようでもあって。
マヒトゥ・ザ・ピーポー “超正義”
最新作『やさしい哺乳類』の収録曲。MVは最初から最後まで、初期のももクロが家電量販店で行っているパフォーマンス映像を使用。〈なんで?〉と思いましたが、人々が抱える寂しさへの慈しみを堪えた楽曲と、懸命に踊る少女たち(と呼応するファン)の姿がシンクロする瞬間がたびたびあって、これはグッときますね。フォークとラップの挟間を彷徨うかのようなマヒトの歌と、アコギのリフレインを中心にヒプノティックなエレキやさまざまなエフェクトを重ねたサウンドも素晴らしいです。岡村くんのギター最高。ももクロのダンスも。
by the end of summer “battery”
京都のエモ・パンク・バンド。先日、誰かがSNSで紹介していてチェックしてみたら良かった。演奏やアレンジが気持ちいいツボを押さえていますが、とにかくアンセミックなメロディー・センスが出色。東京でライヴやるときは絶対に行くな~。いまバンドのTwitterアカウントを見ていると、Pitchforkなどで書いているイアン・コーエンが早くも紹介してました。イアン、さすがやな~。
Fukai Nana “飛び込む”
最近ライヴハウス界隈でよく名前を聞くバンド、Fukai Nana。涼やかなアルペジオにサイケデリックなノイズを重ね、汗まみれで坂道を駆けあがる〈明日なき暴走〉。バイオグラフィーにダイヴに影響を受けたと書かれているのも納得です。初EP『can i love you?』は本日フラゲ日。きっと近くのタワレコにもあるんじゃないでしょうか。
【高見香那】
Sugar's Campaign “City Pop”
so nice, so cute, so coolな新曲出てました(3年ぶりらしいです)。やっぱりあきおが歌うシュガーズが大好き。
emamouse “a portable dish for fish”
ネットを徘徊していて出会った、気になる覆面プロデューサー/アーティスト(Discogsによると、Experimental denpa song artist)。不気味だけど心地よい電子音と曲によって入る歌がドラッギーで、この2日ほど取り憑かれたように楽曲群を聴き続けてしまった(Bandcamp/サンクラはこちら)。
【酒井優考】
Creepy Nuts “よふかしのうた”
オードリー春日の自宅で撮影(+拾い切れないほどのラジオの小ネタ)というアイデアだけで一本勝ち。
SunBalkan(踊Foot Works)のTwitter動画
インスタにも載せましたが
— SunBalkan(榎元 駿) (@enshkim) 2019年5月23日
一年以内に新しいこと始めようと思います pic.twitter.com/sh64FjRERf
ギターヒーローやドラムヒーローはいても、なかなかベースヒーローっていないなと思うし、ベースという楽器の凄さはなかなか伝わりにくいなと思います(Mikikiでもベースについて書いてる記事本当に少ない)。インタヴューでもチラッと訊いたけど、踊Foot WorksのベーシストSunBalkan氏は間違いなく次世代のベースヒーロー。〈新しいこと〉に超期待。
OKAMOTO'S “Dancing Boy”
そんなCreepyも踊Footも出てくる感動的PV。ファンクラブに入ってる友人から〈いいから見てくれ〉と言われて最初見た時は〈すわ! “少年ヤング”?〉と思ったけど、BOØWYのオマージュでした。みなさん、どれくらいの人のことが分かりました? それにしても、こんな仲間がたくさんいる青春を送りたかったな……。
【天野龍太郎】
米津玄師 “海の幽霊”
ちょうど昨日、ボン・イヴェールの新曲“Hey, Ma”“U (Man Like)”がリリースされたのですが、『22, A Million』(2016年)で歌声にかけられていた強烈な歪みと変調は少し鳴りを潜めています。その一方で感じたのは、過剰なダブル・トラッキングで幽玄さを増す初期の手法への回帰。
対して、J-Pop界のトップランナーである米津玄師は、新曲“海の幽霊”でこれまでにないほど声を変調させています。彼の特徴的な声を限界ギリギリまで歪ませており、その響きは強烈です。また精緻でありながらも、どこか不安定な綻びも聴かせる管弦楽器のアレンジも大変素晴らしいと思います。過剰に機械的なサウンドとアコースティックな音の奇妙な共存という点では、『The Age Of Adz』(2010年)の頃のスフィアン・スティーヴンスにも似た雰囲気が。
映画「海獣の子供」の主題歌ということですが、そういった話題性を超えたチャレンジングな姿勢と凄みを感じさせます。
大森靖子 feat. 峯田和伸 “Re: Re: Love”
〈大森靖子×峯田和伸〉という、子弟というかなんというか……な夢の共演曲(曲は峯田さんで、詞は大森さんが担当)。峯田さんが以前ブログなどを通じてメールアドレスを公開しており、大森さんが毎日のようにメールを送っていた、というのは有名な逸話かと思います。そこから十数年を経てこの曲に結実したのかと思うと、なんだか感動的。峯田さんらしいセンチメンタルなメロディーと、どこかやけっぱちなデュエットが清々しいです。
Seiho “I Lost Myself in His Car”
あの素晴らしい“I Feel Tired Everyday”に続くSeihoの新曲。ノスタルジックな音色のシンセサイザーのシーケンスはマニュエル・ゲッチングの“E2-E4”(84年)を、ヒプノティックに反復するビートはエイフェックス・ツインの“Xtal”(92年)を彷彿とさせます。つまり、テクノ/ハウス・ミュージックのクラシックの数々を想起させるのですが、レイヴィーに高まっていく構成・展開が〈らしさ〉というか。リーヴィングから発表した、尖った『Collapse』(2016年)を経て、最高な着地点にランディングしました。ずっと聴いていたい一曲です。