音楽の記事が中心のMikikiですが、作家や写真家、映像作家、漫画家、演劇関係者など関わってもらう方は多種多様。そこで、音楽関係以外の表現者のみなさんが好きな音楽は?という興味からスタートさせたのが連載〈My Favorite Songs〉です。毎回、1人の選曲者が設定したテーマと、それにもとづく3曲以上の選曲を記事化。〈あの人がこの音楽を好きだったんだ〉という発見や、音楽とほかのカルチャーのクロスオーバーを楽しんでもらえたら幸いです。第6回は、新作公演「始まりの終わり」の上演を控えるムニの劇作家/演出家・宮崎玲奈さんが登場。 *Mikiki編集部
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選曲によせて
今は新作長編の演劇作品「始まりの終わり」を創作中。2026年の東京に田舎の高校生たちがニセ修学旅行に来た未来のお話を創作しています。未来って明るいのかな、暗いのかな、想像してみる。
Juice=Juice “CHOICE & CHANCE”
(2015年作『First Squeeze!』収録曲)
ハロー!プロジェクトが好きだ。Juice=Juiceが好きだ。ハロー!プロジェクトのアイドルたちはかわいいだけじゃなく、人間を歌う。歌詞と歌唱をずらすように、わたしも戯曲と演出をずらしている。自立した女性の強さや弱さを描く点にも背中を押される。とにかくかっこいい! 未来がわかんなくても、自分の足で歩きはじめてみて、〈やらぬ後悔よりやっちまった後悔がしたい〉!ものだ。
千葉雄喜 “誰だ?”
(2024年)
昨日のわたしと今日のわたしが他人のように思える。昨日の自分の方が他人よりも、より他人に思える。お前は誰だ?となりながら、自分でしかない。そんなことをすごくシンプルな言葉で歌にしている。拙作「始まりの終わり」では1人の役を5人で演じるということを行っているが、昨日のわたしと今日のわたしは他人ということを踏まえると、1人の役を何人かで演じるということも辻褄が合うのかもと思っている。
大森靖子 “TOKYO BLACK HOLE”
(2016年作『TOKYO BLACK HOLE』収録曲)
東京ってどんな街。東京を歌った曲はものすごくたくさんある。未来の東京は何が変わっていて、何が変わらないのか。大森靖子さんが地元高知は須崎市の企業に所属してびっくりしたし、嬉しかった。大森靖子さんの楽曲には実験精神を感じるし、創作者として尊敬する。届くのは今なのか10年後か100年後かわからないけれど、とにかくいろんなことにモヤモヤしてた、いるかもわからないわたしのような人に、祈りのように作品が届くといいな、と思って創作を続けている。セクシュアリティのことを考えている人にも。この曲のあり方のように。未来のことを想像する。
INFORMATION
始まりの終わり


あらすじ
グミの話をしようと思う。高校の渡り廊下で出会ったから、着ぐるみのグミ。兄はヤンキーでこのあたりのシマを取り仕切っているのだとか、記号が貼り付けられていたが、なにが本当なのか定かではなかった。ちゃん、でも、くん、でもなく、ただのグミ。足がヒョロ長くショートカットのグミ。ワールドカップの喧騒の裏で事件は起きた。みんなはそれを知らなかった。意味が移り変わり、像が変化する。グミと出会ってから、今までの話。友情の始まりと終わりと、その続き。
「信じる先を求めてきたけど、はじめて自分のことを信じてみようと思った――。」
上演に向けてのことば
物語のもしくは演劇における、いない者の話をいる者たちが語るという構造がある。いない者の話をいる者たちはなぜするのか。いない者に関しての話のズレが劇の駆動となるからだろう。ジェンダー、セクシュアリティ、出身地などなど、自身の個別性を考える時、各項の歴史性について考えることをわたしは必要とした。それは上記の劇の構造で言うところのいない者も語る、ということである。この2年ほど特に、演劇で当たり前とされていることの多くがわたしには受け入れ難かった。否定したくなる、問い直したくなる。「ない」を言うのはそれほど難しいことではない。同じアナロジーにはまらず、何かを実現すること。演劇を他者とつくるとは、その仮定がわたしが動きだすことには必要だった。
一つの仮定として“わたしはまさにその当事者でありながら、当事者でない”作品、『ゴドーを待ちながら』のゴドーが5人いる! 語り手も5人いる!という作品を作ることを志向する。今いる場所の来し方について想像する。わたしはまさにわたしでありながら、わたしでない。演劇の支持体は集まりである、とこれまで仮定してきたが、ある集まりは、ただ一つのたしかさを依代とするというよりは、変化のパターン、つまりは動詞を元来「型」として来たのではないかと広義に捉えてみる。動詞について考えたい。トムブラウンのネタに「ナカジMAXをつくる」というネタがある。この演劇はナカジMAXを5人でつくるということに挑戦してみるのかもしれない、とも言ってみる。小さなものを見ることが大きなものを見ることにつながる、と信じたいとも。
と、ここまで書いたが、しかし演劇、どうなるかは上演の日まで定かでない。これを読むあなたも、まさにこの劇の当事者でありながら当事者でない、と言える。(宮崎玲奈)
タイトルメンバー:伊藤拓、上薗誠、河﨑正太郎、黒澤多生、SKANK/スカンク、中村仁、南風盛もえ、藤家矢麻刀、宮崎玲奈、横田僚平、渡邊まな実、渡辺瑞帆
■クレジット
作・演出:宮崎玲奈
出演:南風盛もえ(青年団)、藤家矢麻刀、渡邊まな実、伊藤拓(青年団)、黒澤多生(青年団)
舞台監督:黒澤多生(青年団)
空間設計:渡辺瑞帆(Scenograff/ガラージュ)
音響デザイン:SKANK/スカンク(Nibroll)
照明デザイン:中村仁(黒猿)
衣装:横田僚平(オフィスマウンテン)
宣伝美術:渡邊まな実
制作:上薗誠、河﨑正太郎(譜面絵画)
企画制作・主催:宮崎企画
助成:公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京【東京ライブ・ステージ応援助成】
協力:オフィスマウンテン、ガラージュ、黒猿、青年団、Scenograff、譜面絵画、Nibroll、(有)レトル
■公演スケジュール
2025年7月20日(日)-7月27日(日)
20日(日)初日19:00★
21日(月・祝)14:00★/19:00★
22日(火)19:00★
23日(水)休演日
24日(木)14:00/19:00
25日(金)19:00
26日(土)14:00/19:00
27日(日)14:00
★=前半割引対象
*受付開始30分前、開場20分前
*上演時間:120分を予定(開幕前にHP、SNSにて詳細をお知らせいたします)
■会場
アトリエ春風舎
〒173-0036 東京都板橋区向原2-22-17 すぺいすしょう向原B1
東京メトロ有楽町線・副都心線/西武有楽町線〈小竹向原駅〉下車 4番出口より徒歩4分
■チケット料金
一般発売:2025年6月8日(日)正午
アトリエ春風舎支援会員・〈ムニの発酵シアター2025〉会場先行発売:2025年6月2日(月)
前半割(前半4ステージ):3,500円
後半:3,800円
U18:全回500円(各回5名まで)
*一般当日券は+500円。当日精算のみ。
*日時指定・全席自由
*開場時は当日受付順で、〈劇場支援会員→予約→当日券〉の順番でご入場いただきます。
*開場後は券種に関わらず、来場順での入場になります。
*車椅子でご来場予定の方やスタッフの手助けが必要な方は事前にムニまでご連絡をお願い致します。
■チケット取り扱い
PassMarket[事前決済|一般]一般発売:2025年6月8日(日)正午
https://passmarket.yahoo.co.jp/event/show/detail/02gtcb51azd41.html
メール[当日精算|18歳以下のみ]
件名を〈始まりの終わり 18歳以下予約〉として、①氏名(ふりがな)、②ご希望の日時、③枚数、④お電話番号をご記入の上、muni62inum@gmail.com(ムニ)までご連絡ください。ムニからの返信をもってご予約完了とさせていただきます。
■お問い合わせ
Mail:muni62inum@gmail.com
劇団Web:muniinum.com
X:@muni_6_2
PROFILE: ムニ
劇作家・演出家の黒澤優美と宮崎玲奈の作品を上演する演劇カンパニー。2017年より活動。宮崎企画の活動は2020年より開始、青年団若手自主企画宮崎企画としても活動してきた。虚構とリアルの境界を探る創作を行う。20代の女性を主人公とした物語を多く制作。
PROFILE: 宮崎玲奈
ムニ主宰/劇作家・演出家。1996年、高知県生まれ。明治大学文学部文学科在学中に、演劇学校無隣館に通い、2017年にムニを旗揚げ。以降全作品の作・演出を行う。見ること、演じること、について批評的な創作アプローチを続ける。複数のシーンをつなぎ合わせていく、日常会話を基調とした3場以上の空間と時間を同時進行させる演出手法で注目され、第11回せんがわ劇場演劇コンクールにて、ムニ「真昼森を抜ける」で演出家賞受賞。作劇は〈小説的〉とも評され、大学卒業制作の「須磨浦旅行譚」が令和元年度北海道戯曲賞最終候補。「ことばにない」にて第1回日本みどりのゆび舞台芸術賞HOPE賞受賞。俳句、小説など他ジャンルの創作にも意欲的に取り組む。好きなもの、ハロー!プロジェクト、特にJuice=Juiceの工藤由愛さんを偏愛。