自身にとっての普遍的なコンセプトとなった〈愛〉に真摯に向き合い、多くの才能と世界を共有することで織り上げられた新しい愛のアルバム――またしても傑作が誕生した!!
新しい景色が見えてきた
「自分の第1章を締め括る作品になった」という前作『LOVEBUM』から約2年を経て、BASIのソロ6作目となるニュー・アルバム『切愛』が届けられた。昨年には唾奇とのコラボ・ナンバー“愛のままに”を発表し、MV再生が300万回を超えるなど大きな反響を巻き起こしたわけだが、同曲がアルバム制作の基軸になったという。

「『LOVEBUM』以降に作った曲をまとめて、今回とは別のタイトルで出そうとした作品があったんです。その制作の最後にできたのが、7インチ・シングルでリリースした“愛のままに”と“星を見上げる”。この2曲を作ったことは自分の中ですごく大きかったし、リスナーから感想をもらったりするなかで、また新しい景色が見えてきた。そこから新たに作った曲をまとめたのが今回の『切愛』です。“愛のままに”と“星を見上げる”に辿り着くまでのプロセスを、他の曲で編み上げていくようなイメージでしたね」。
ソウルフルでストレートなラヴソング“愛のままに”はサウンドとリリック両面でまさに新作を象徴する一曲だが、このリリックを唾奇と共に書いたことが、音楽との向き合い方自体が変わるほどの体験だったとBASIは語る。
「愛について歌うことは前作くらいから自分にとって普遍的なコンセプトになったし、唾奇という人間と出会って、彼が愛についてどういうリリックを書いて、どう発信するかにすごく興味がありました。僕の知る限り、唾奇はこれまで愛については直接的に表現していませんでしたし。だから、どうしてもそのテーマで歌ってほしかった。“愛のままに”の唾奇のヴァースは詞として本当に素晴らしいと思います」。
この唾奇との共作によって大きな成果を得たこともあり、アルバムはさまざまなアーティストとの積極的なコラボレーションによって作り上げられることとなった。
「これまでは自分の知識やセンスだけでやろうと思っていたんですけど、今回は“愛のままに”を唾奇と作ったように、たくさんの人と曲をシェアしながら制作したい気分だったんです。昨年は客演で呼ばれることがすごく多かった年でもあって、必然的にいろんなアーティストと一緒に過ごす時間が増えて距離も縮まった。そうやって関わってきた人に、僕の作品にもそのセンスや才能を分けてもらえば、きっといいものができる。だから、なんとなく声をかけたわけではなく、きちんとプロセスを踏んだうえで共作できる人を選んでいるんです」。
思うがままに作っている
トラックメイカーとしてはOlive Oil、chop the onion、illmoreらが参加しており、Lucky Tapes作品でのコラボも記憶に新しい高橋海がフューチャー・ベース調のビートを提供しているのも印象深い。客演には鎮座DOPENESS、HANG、空音らが名を連ね、「実は地元が一緒」だというSIRUPとは、その楽曲を担うMori Zentaroのトラックの上で最高にアーバンな手合わせを披露している。とりわけ目を惹くのが北海道出身のシンガー・ソングライター、TOCCHI。“素顔”に登場しているのに加えて、彼の代表曲である“これだけで十分なのに”にBASIがラップをアダプトしたリミックスが収められている。
「唾奇が〈これ聴いてください、僕の友達です〉って送ってきてくれたのがTOCCHIの“これだけで十分なのに”のオリジナルで、それ聴いてやられてしまって。それで、SNS経由で自分のリミックスを聴いてもらったり、やり取りをするなかで、スケジュール的にギリギリやったんですけど、もう1曲いっしょに作りました。TOCCHIもいつか自分と曲がやれたらと思ってくれていたみたいで、それは嬉しかったですね」。
そういったラッパー/シンガーやトラックメイカーだけでなく、昨年EPを発表したBASIのバンド・プロジェクト=BASI & THE BASIC BANDのメンバーが全面的に参加しているのも本作のポイントだろう。サンプリング・ビーツに生演奏やコーラスを付与して、より立体的なサウンドを構築することに貢献しているし、アコースティック・ギターだけを迎えた完全な歌モノの“薔薇”のような楽曲も収められている。
「トラックメイカーのビートと生の演奏を混ぜていこうという意識はありましたね。ループ・ミュージックもすごく好きやし、自分のルーツであり大事な部分なんですけど、より音楽的なものというか、もっと展開していくものやメロディーが聴こえるもの、生のグルーヴがあるものにいまは興味が沸いています。“薔薇”に関しては、もともとはリル・ピープとかコールド・ハートみたいなトラップ・ミュージックが念頭にあったんですけど、最終的にアコースティックに変化したんです。いまは前置きとしてヒップホップがあるわけでもなく、思うがままに作っている。ビートレスにしたりラップがなかったり、でもそれが自分にとってのヒップホップというか」。
時代とのズレを知ったうえで
これまで以上に自由なスタイルで作り上げた12曲を束ねているのは、当人のラップと言葉に他ならない。日常の風景や誰しもが抱く心の機微を描出しながら、アルバム全編を通して広義の愛を浮き彫りにし、ひとつのストーリーを紡いでいく。特に、鎮座DOPENESSを迎えて何気ないからこそ愛おしい時間を綴った“普通”や、HANGと共にハードノック・ライフを送る心情を描く“夕暮れ”に胸を打たれる。
「リリックに関しては時間もかけたし、曲と向き合う時間もあえて増やしたし、かなり書き直しもしたし……5年後も10年後も聴いているものを作りたいと思って取り組んでいました。いまはライトなものがスタンダード化している気がしていて、自分がやっていることは時代と合っていないという自覚もあるけど、そのズレを知ったうえでトライしたかった。自分が休みの日とかに一枚通して聴きたいものを作りたくて、それはやっぱり歌詞が良いものだなと。言葉が響いてくるものを自分は聴きたいので」。
そうして完成した『切愛』を「自分のチルなイメージとは違った一面を見せたくて、ダークな曲やディープなアプローチの曲も作ったんですけど、トータルで感じるのはメロウなムードだなと」と当人も形容する通り、確かに本作は彼の根底にあるメロウネスをより洗練された手つきでアウトプットした作品であり、近年のテーマである〈愛〉により真摯に向き合った作品だろう。そうやって自身のコアを追求した結果として、普遍的で、それゆえに広がりのある音楽に結実したように感じられる。「インスタを開けば、子どもから大人まで“愛のままに”を歌ってる動画が毎日のように届くんです。ライヴをやっても高校生と一緒に写真を撮っている自分がいて」と最近の状況についてBASIは語るが、この『切愛』はさらに広いリスナー層にリーチする作品となるに違いない。
『切愛』に参加したアーティストの作品を一部紹介。
BASIが客演した近年の作品を一部紹介。
BASIの『LOVEBUM』以降のリリースや参加作、『切愛』と繋がるグッド・ヴァイブな作品たち

『切愛』の確信に満ちたムードにも直接的に繋がる境地を拓いた通算5作目のソロ・アルバム。高い評価を得た先行曲の“たゆたう”や“Fallin'”を筆頭に、何気ない日々の美しさに敬意を払った筆圧の柔らかさが印象的で、〈らしからぬ〉ジャケもハマった名盤だ。WATTやAFRA、東里起、chop the onionらが参加。

BASI & THE BASIC BAND Rainy EP BASIC MUSIC(2018)
2016年にフリー配信した“あなたがいた夏”を前段階として、翌年から始動したバンドの初EP。SoulflexのRaB(ドラムス)、ImproveのSaetsu(キーボード)、HISA(ギター)、オオツカマナミ(ベース)を交えてBASIのメルティー&メロウな世界がさらに温かく発展している。後3者は『切愛』でもそれぞれ好演。

PUSHIM×韻シスト TO THE NEXT Groovillage/徳間ジャパン(2018)
2015年の共演シングル“Don't stop”をきっかけにPUSHIM主宰レーベル入りした韻シスト。これはダブルネームで編まれた企画EPで、タッグを組んだ2曲に加え、韻シストBANDプロデュースによるPUSHIM曲、韻シストの曲、BAND名義曲がそれぞれ収録。DJ Mitsu the Beatsによる表題曲のリミックスも薫り高い。

バンドの結成20周年を記念した通算8枚目のフル・アルバム。スタイリッシュな“Don't worry”など曲調の違いも含めて、BASIとサッコンのタイトな2MCが人懐っこいバンド・サウンドと絡むコンビネーションの快感は他名義では得難いものだ。この8月には早くも新作ミニ・アルバム『SHINE』が控えている!

illmore ivy Chilly Source/Manhattan/LEXINGTON(2018)
チル&メロウな佳曲群で頭角を表してきたビートメイカーのillmoreは、『切愛』にて“夕暮れ”と“夢の途中”のトラックメイクに抜擢。特に後者のドリーミーな意匠は印象的だ。それに先駆けた本人名義のこのアルバムにはBASIが“Drunk”に駆けつけ、作品の終盤をレイドバックした歌い口でまったりと彩っていた。
高橋海が『切愛』で“月ひとつ”を手掛けるのに先駆け、こちらに収録のエレガントな“COS”にはBASIが客演。バンド演奏とトラックメイク的な作りを並列で捉える作法は通じる部分があるだろう。ここにCharaが参加していたり、UKOの別掲作『ONE LOVE』で高橋とBASIが名を連ねていたり、重なる部分は多い。

本文によると『切愛』の起点になったという“愛のままに”は、chop the onionがRSVPなソウル名曲をネタ使いした温かい好仕事。そんな彼のこの最新作では“シールドマシン”にBASIがお返し客演してLIBROとコラボ。『LOVEBUM』に貢献していたWATT a.k.a. ヨッテルブッテルの“すこしこのまま”にも注目!
メジャーの舞台でも一躍成功を収めたSIRUPことKYOtaroが属するSoulflexは大阪を拠点とするアーティスト集団で、BASIC BANDのRaBなどBASIと縁深い顔ぶれが多く、『切愛』にはクルー首謀者のMori Zentaroがトラックを提供。最近はBASIC BANDのHISAがSIRUPのライヴ・メンバーを務めてもいる。

このたび『切愛』の“普通”に客演している鎮座DOPENESSとBASIは、STUDIO韻シストでの人気曲“HOT COFFEE”(2017年)に続いての手合わせ。そんな奇才もG.RINA×ZEN-LA-ROCKと組んだこのトリオでのアルバムがちょうど登場するタイミングで、音の景色は違うもののこれまた天国気分の心地良さ。
彼女のセルフ・カヴァー集でのコラボやフェス出演時の演奏サポートを発端に、2014年には共演シングル“I don't know”も残しているCharaと韻シスト。このアルバムではメロウな“Intimacy”にBASIが登場するが、そんな親密さは今年2月のChara×BASI名義の7インチ“Sweet Night Fever”にも実を結んでいる。

互いの作品でのコラボはまだないものの、chop the onionの“シールドマシン”やサイプレス上野とロベルト吉野の大名曲“RUN AND GUN pt.2”でもBASIとマイクを交わしているLIBRO。こちらの自身の最新アルバムでも日常生活に染み込むような普遍の言葉とサウンドが展開されていて、また共演の機会もありそう。

直接のコラボはないが……ちょうど『切愛』と並べて聴けそうな内容なのでご紹介。illmoreの別掲作やシティー・ラップ系のミックスCDでもたびたびBASIとニアミスしてきたシンガー・ソングライターがWONKのレーベルから出したアルバムで、Sweet Williamによる“カフェイン中毒”などのメロウな温度感が絶品!


