音楽の街ナッシュビルでレコーディング デビュー10周年となる現在の彼女を映し出す自然体な1枚

 これまでにない、リラックスした自然体のエミ・マイヤー。デビュー10周年という節目の年に発表されたアルバム『Wings』を聴くと、誰しもそういった印象を抱くのではないだろうか。2009年に『キュリアス・クリーチャー』で鮮烈なソロ・デビューを果たして以来、世界中で音楽制作を行ってきたが、今回レコーディング場所として選んだのは米国南部のナッシュビル。カントリー・ミュージックの本拠地であると同時に、アメリカ音楽界の中心地でもある。ここでジェイムズ・ベイやシャナイア・トゥエインなどを手がけたトップ・エンジニアのローウェル・レイノルズをプロデューサーに迎え、短い期間で一気に録音を行った。

 アルバム全体を聴いて感じるのは、非常にアーシーでナチュラルな感覚であるということ。もともとエミ・マイヤーの音楽にはソウルやジャズのエッセンスが感じられるが、そのルーツ回帰的なアプローチがさらに深まっている。ナッピー・ルーツに書いたモチーフを膨らませてできたというタイトル曲“Wings”を筆頭に、意外な展開で耳をひきつける冒頭の“Dream Poetry”、モータウン・サウンドでグルーヴする“Soul Naturale”、レゲエのリズムがレイジーな“Fear Me”など様々なタイプがありながらも、一貫して穏やかな空気を感じることができる。その象徴ともいえるのが、“Nashville Lullaby”だ。彼女はこのレコーディング当時に妊娠しており、お腹の中でナッシュビルの音を聴いている子どもをイメージして書いたというこの曲を聴けば、まさに等身大の作品を作り上げたということが伝わるはずだ。

 ただ、グラミー常連の現代ブルースの雄、ケブ・モとのコラボレーションや、レオン・ラッセル“A Song For You”のカヴァーもあり、彼女なりの試行錯誤や新たなトライも見受けられる。成長を重ね、その上で自身の本質を堂々と提示した作品として、『Wings』は高く評価されるべき一枚なのである。

 


LIVE INFORMATION
高田漣とエミ・マイヤー 素敵なお二人会

2019年7月13日(土)新潟・上越 高田世界館
開演:16:00

エミ・マイヤー デビュー10周年記念! 「Wings」ツアー
2019年11月20日(水)京都 磔磔
2019年11月21日(木)愛知・名古屋 得三
2019年11月25日(月)東京・渋谷 クラブクアトロ