エミ・マイヤー流“私の考えるジャズ”

 ジャズをベースにしたポップなオリジナル曲を歌ってきた日米ハーフのシンガー、エミ・マイヤー。9月頭に出る新作『モノクローム』は、ジャズのスタンダード曲のカヴァー集(全11曲中2曲はオリジナル)である。高校時代から本格的にジャズ・ピアノを学び、6年前のプロ・デビュー時にも「カヴァー・アルバムの制作をメジャー・レコード会社から打診されていた」というが、実はこれまでは王道ジャズを歌うことも他人の曲をカヴァーすることも避けてきた。

 「ポップス/ロック、あるいはJ-POPなどいろんなスタイルに挑戦する中で、これは自分に合っている、合ってないといった確認をしてきました。そして今、素のままの自分を完全に出せて、歌っていて一番気持ちいいのは、やはりジャズじゃないかと…」

Emi Meyer Monochrome プランクトン(2015)

 様々な試行錯誤、冒険を経て、今ようやく正面切ってジャズを歌いたいと思うようになった、と。しかしそれはまた新たな挑戦であり、実は自作曲を歌うより難しいことでもある。

 「確かに難しいですね。過去に多くのオリジナル曲を作り、パーソナルな内容を表現してきたけど、今回は、《フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン》や《この素晴らしき世界》など皆が知ってる曲の中で自分のエモーションをどう表現し、届けられるのかという、これまでとは違う挑戦をしたいと思ったんです」

 伴奏を務めたのは、人気ジャズ・ピアニストのエリック・レニーニと彼の仲間たち。録音はパリだ。独特の味があるエミ自身のピアノ弾き語りがあってもよかったのに、とも思うが…

 「尊敬するプロフェッショナルなピアニストに弾いてほしかった。上手いピアニストはたくさんいるけど、私の中ではエリックに断られたら、このアルバムもなし、ぐらいに決めていました。彼の表現にある、美しいけどちょっと哀しい感じに強く惹かれています。あと、彼はジャズ・ピアニストだけど保守的なジャズ・ピューリタンじゃないし、枠にとわられない点も大好きなんです」

 つまり、保守的ジャズ・ファンにとっては、この新作は必ずしも耳に心地よくない部分がある、と?

 「ジャズは往々にして正当性が重んじられるけど、私はジャズはもっと自由であっていいと思うし、今だからこそ出来る私自身のジャズを表現したかったんです」

 エミ・マイヤー流“私の考えるジャズ”。その志の高さや、よし。なお12月には、ピアノの林正樹とサックスの田中邦和とのライヴ・ツアーも決定しているが、そこでは何曲か弾き語りも披露するつもりだという。

 

LIVE INFORMATION
中洲ジャズ 2015
○9/12(土)福岡「中洲ジャズ 2015」出演
nakasujazz.net/

「モノクローム」ジャズ・スタンダードのひと時
○12/15(火)梅田クラブクアトロ
○16(水)名古屋クラブクアトロ
○17(木)渋谷クラブクアトロ
emimeyer.jp/