膨大なディスコグラフィー(の一部)から辿る、ブルーイとインコグニートの40年史

INCOGNITO 『Jazz Funk』 Ensign/Chrysalis(1981)
LOTW出身の3名にジェフ・ダン(ドラムス)、レイ・カーレス(サックス)を交えたバンドでの初作。コーラス的に声を交える局面もありつつ基本はインスト主体で、ブラックネスに富んだ都会的で涼やかなフュージョン快作だ。 *出嶌

THE WARRIORS 『Behind The Mask』 Ensign/Expansion(1982)
表題からもわかるように当初はインコグニートの2作目として録音されるも、レーベル側の反対もあって別名義で出されたという一枚。前作以上にタブスのベースが動き回るダンサブルな意匠で、艶やかな女声コーラスも効いている。 *出嶌

新旧の仲間を従えて幅広い楽曲を取り揃え、折衷的なサウンド・カラーをスタイリッシュに確立した復活作。USからジョセリン・ブラウンを招いた“Always There”は全英6位というグループ随一の大ヒットを記録することに。 *出嶌

INCOGNITO 『Tribes, Vibes And Scribes』 Talkin’ Loud(1992)
スティーヴィー・ワンダーのカヴァー“Don’t You Worry ’Bout A Thing”が大当たりして転機となった作品。メイザ・リークがタニア・マリアばりにスキャットする“Colibli”のブラジリアン・テイストも重要な持ち味に。 *池谷

INCOGNITO 『Positivity』 Talkin’ Loud(1993)
インコグニートのシグネチャー・サウンドが完成した人気作。前作の追い風に乗ってヒットした“Still A Friend Of Mine”を筆頭に全曲オリジナルで勝負し、ブルーイの非凡なメロディーメイカーとしての才能を知らしめた。 *池谷

INCOGNITO 『100° And Rising』 Talkin’ Loud(1995)
代表曲“Everyday”など打ち込み比率の上昇を最大の特徴とする一作。同時代のR&B/ヒップホップとの共鳴やクラブ・ミュージックへの接近も特色で、その側面は翌年リリースの編集盤『Remixed』にも強く現れていた。 *池谷

INCOGNITO 『Beneath The Surface』 Talkin’ Loud(1996)
前作には不参加だったメイザ・リークが復帰。生音を前面に出した穏やかなミッドやメロウな曲が多く、メイザの優しい歌声が染み入る“Shade Of Blue”を筆頭にヴォーカル・アルバムとしての魅力も高い。 *池谷

INCOGNITO 『No Time Like The Future』 Talkin’ Loud(1999)
ジョーンズ・ガールズ曲をガラージ・ハウス化した“Nights Over Egypt”も良いが、同時期のクラブ・ジャズ界で話題を呼んだ“Fearless”の革新性こそが本作のキモ。ブルーイの才気のひとつのピークを示す密かな重要作。 *池谷

INCOGNITO 『Life, Stranger Than Fiction』 Talkin’ Loud(2001)
ディアンジェロのライヴを観て触発されたブルーイが、生々しいバンド感を意識して臨んだという力作。ディアナ・ジョセフ(元トゥルース)ら新進シンガーを全編で抜擢した瑞々しい内容だが、これにてトーキング・ラウドを離脱。 *出嶌

INCOGNITO 『Who Needs Love』 Rice(2002)
前作から続投のケリー・サエを中心にジョイ・マルコムやジョイ・ローズらがリードを担った、自主レーベル発の第1弾。エジ・モッタやポール・ウェラー、エヴァートン・ネルソンらも交え、オーガニックな音世界を展開した好盤だ。 *出嶌

INCOGNITO 『Adventures In Black Sunshine』 Rice(2004)
“The 25th Chapter”の節目もあってか、メイザが再復帰して大半の曲でリードを任され、スキー・オークンフルの関与も目立つ安定作。トニー・モムレルのゴスペル的な歌唱やドゥービー・ブラザーズのカヴァーも堂に入っている。 *出嶌

INCOGNITO 『Eleven』 Rice(2005)
当時のブルーイが〈特にコンセプトはない〉と述べていた11作目だが、それまでの10作で培った〈らしさ〉が自然に出た安定の完成度を誇る。いまもボトムスを支える重要ベーシスト、フランシス・ヒルトンは本作から参加。 *池谷

INCOGNITO 『Bees + Things + Flowers』 Rice(2006)
ロイ・エアーズやEW&Fらのカヴァーに自身の過去曲リメイクも交え、アコースティックな感触で全体をまとめた異色の一枚で、カーリーン・アンダーソンやジョセリン・ブラウンらが歌唱。ソフト&メロウな新曲群も絶品だ。 *出嶌

TONY REMY & BLUEY 『First Protocol: Incognito Guitars』 Rice(2007)
『Eleven』から名を連ねるギタリストのトニー・レミーとブルーイのインスト・フュージョン作品。繊細なツイン・ギターをフィーチャーしたハウシーでスペイシーでファンキーな長尺のトラックが並ぶ。アンプ・フィドラーも参加。 *出嶌

INCOGNITO 『Tales From The Beach』 Bluey Music(2008)
ビーチサイドを爽快にドライヴ……なんて感じの、世間がふわっと求めるテイストに毎度確かな完成度で応えるのも凄いこと。表題通りの浜辺感をジャズ・ファンクとハウスを軽やかに越境しつつ示す本作はその最たるものだ。 *池谷

INCOGNITO 『Transatlantic R.P.M.』 Bluey Music(2010)
憧れだった70年代アメリカへの敬意を表し、タイトル通りにUKからUSへ音楽で〈大西洋横断〉! ボズ・スキャッグス“Lowdown”のカヴァーで始まり、チャカ・カーンやリオン・ウェアを迎えた30周年に相応しい豪華作。 *池谷

INCOGNITO 『Surreal』 Bluey Music(2012)
前作からメンバーを大きく入れ替え、先行曲では新人のモー・ブランディスにリード・ヴォーカルを任せる英断もして、バンドの進化を止めない姿勢を見せる。“Above The Night”でのモダン・ソウル風味も聴きものだ。 *池谷

BLUEY 『Leap Of Faith』 Bluey Music(2013)
初のソロ名義作でブルーイがめざしたのは80年代回帰。とはいえ直球な再現ではなく、今様のクリアな音圧やマーカス・ミラー風のバンド・サウンドなどでみずからの味を出しているのは流石。本人の歌声も艶っぽい良い味だ。 *池谷

CITRUS SUN 『People Of Tomorrow』 Bluey Music/MIRAMAR(2014)
ブルーイらのフュージョン隊として始まったプロジェクトが、マイナーチェンジして14年ぶりに発表した2作目。ジム・マレンのギターとヴァレリー・エティエンヌの歌唱を看板に、スムースかつメロウなソウルを聴かせる逸品に。 *出嶌

INCOGNITO 『Amplified Soul』 Earmusic/Pヴァイン(2014)
ソロ名義での80s回帰や、マイゼル・ブラザーズ調で表すドナルド・バードへの追悼、シトラス・サン的な熟練フュージョン……など、ブルーイが直近の2年間で行っていた課外活動が一枚に凝縮されたような充実作。 *池谷

BLUEY 『Life Between The Notes』 Expansion/Pヴァイン(2015)
ソロ名義での2作目。引き続き80s路線を敷きつつも、EW&Fやファラオ・サンダースへのオマージュからネオ・ソウル、そしてアシッド・ジャズ~ラテン風味など、自身に染み込んだ音楽性を素直に引き出したような印象だ。 *池谷

INCOGNITO 『In Search Of Better Days』 Pヴァイン(2016)
ジャミロクワイを支えた名手スチュワート・ゼンダーとの共作曲や、布袋寅泰がギターを弾くフュージョン風の楽曲がトピックとなる17作目。トニー・モムレルやイマーニ、メイザら、オールスターと呼べるヴォーカル陣も参加。 *池谷

CITRUS SUN 『Ride Like The Wind』 Dome/Pヴァイン(2018)
来日公演も経ての3作目。フレディ・ハバードで知られる表題曲をはじめ、マルコス・ヴァーリや日野皓正の名曲カヴァーも含めながら歯切れ良くダイナミックな演奏を展開していく。後半に控えた組曲も圧巻だ。 *出嶌