COLUMN

何故こんなにも心を掴まれるのだろう? ケルト音楽の祭典〈ケルティック・クリスマス〉の観どころを紹介

(左から時計回りに)シャロン・シャノン、タリスク、ウィ・バンジョー・スリー
 

約20年続いてきた、いまでは冬の風物詩として定着しているケルト音楽のフェスティヴァル〈ケルティック・クリスマス〉が今年も開催。11月30日(土)より福井、神奈川、長野、東京の4か所で行われる。街は慌ただしく騒々しい季節だが、この日ばかりは、いや、それを前後とした数日間は特別な時間の流れに身も心も任せ、何処か懐かしく、それでいて新鮮な音楽にたっぷり浸ることができる。

しかも今年は、すっかりお馴染みになったアイルランドのシャロン・シャノン、一昨年の来日公演がちょっとした伝説と化したウィ・バンジョー・スリー、そして、今回初参加となるスコットランドのタリスクが登場。いずれも、ライヴ・パフォーマンスが評判のアーティストたちだ。生気に満ちた、躍動感みなぎる音楽で会場を満たし、ライヴの楽しさを存分に実感させてくれることだろう。ここでは、公演を控える各出演者のプロフィールと、ライヴへの展望を紹介していこう。

※福井公演のみシャロン・シャノンとタリスクの2組での出演

 


シャロン・シャノン

シャロン・シャノンは、人気、実力ともにアイルランドでは群を抜くアコーディオン奏者だ。アコーディオンの他に、フィドルやティン・ホイッスルもこなす。アイルランドの西部に位置するクレアの出身で、幼い頃からアイリッシュ・トラッドに馴染んでいたが、マイク・スコット率いるバンド・ウォーターボーイズへの参加を通じて、彼女の音楽の視界も広がっていく。

※アイルランドを発祥とする縦笛

91年、そのマイク・スコットやU2のアダム(・クレイトン、ベース)、ホットハウス・フラワーズのリアム・オメンリィらが参加して、デビュー・アルバム『Sharon Shannon』を完成、それが大評判となった。その後も、国境を越えて活躍。音楽のジャンルもケイジャン、レゲエ、クラシック、ヒップホップと幅広く扱い、それに伴って、U2のボノ、シネイド・オコナー、チーフタンズ、アリソン・クラウス、ウィリー・ネルソン、ジャクソン・ブラウン、カルロス・ヌニェスなど、交流も実に幅広い。

2008年には、“The Galway Girl”がアイリッシュ・サイダー〈マグナーズ〉のCMに使用され大ヒット。シングル・チャートで5週連続1位に輝き、同年のシングルで最多の売り上げ、年間の音楽配信ダウンロード数のいずれでも1位を記録する。それを機に、アイルランドの国民的な人気を誇るまでになったが、人懐っこく、飛び切りの笑顔は相変わらずだ。

“The Galway Girl”のパフォーマンス映像。同曲はスティーヴ・アールとの共作曲で、もともとはアールの2000年作『Transcendental Blues』、シャロン・シャノン&フレンズ名義の2008年作『The Diamond Mountain Sessions』に収録されたもの。そのほか、シャロンの2013年のベスト・アルバム『The Galway Girl: The Best of Sharon Shannon』にも収録
 

最新作としては、『Live In Minneapolis』(2019年)がある。2017年11月のミネアポリスでのライヴの模様を収録したもので、2000年代に入ってからはほとんど一緒に活動している仲間たちと共演したものだ。来る〈ケルティック・クリスマス〉でも、彼女が何故こんなにも多くの人たちの心をつかみ、世代を超え、性別を超えて愛されるのか、改めて実感できるライヴになるはずだ。

 

ウィ・バンジョー・スリー

ウィ・バンジョー・スリーは、その名の通りバンジョーを中心に、ギター、フィドル、マンドリンなど駆使し、アイリッシュ・トラッドとカントリーを自由奔放に躍らせる4人組だ。〈アイルランドのパンチ・ブラザーズ〉と呼ぶメディアもあれば、〈ケルト・グラス〉と彼らへの創意に敬意を表すメディアもある。

彼らは2011年、アイルランドのゴールウェイで結成。エンダ&ファーガル・スカヒル、マーティン&デイヴィッド・ハウリーの二組の兄弟からなる。リーダー格のエンダ・スカヒルは、〈バンジョーの魔術師〉とも呼ばれる名手だ。その彼が、米国南部でブルーグラスやアパラチアン・ミュージックと出会ったことから、それまでアイリッシュ・トラッドでは脇役のような存在だったバンジョーに可能性を見出したことから、すべてが始まった。

〈ROMP 2018〉でのパフォーマンス映像
 

マーティン・ハウリーも、そのエンダに劣らぬバンジョーの名手で、他にもマンドリンやギターもこなす。マーティンの弟デイヴィッドは、ギターを弾き、リード・ヴォーカルを担当する。そして、この3人にエンダの弟で、主にフィドルを担当するファーガルが加わって現在の編成になった。

2012年にデビュー・アルバム『Roots Of The Banjo Tree』を発表、地元アイルランドのメディアでは年間最優秀新人賞に輝くなど大歓迎された。その後は、ヨーロッパ諸国やアメリカへの遠征で評価を決定づけ、2016年の『String Theory』は、ビルボードのワールド・ミュージック・チャートで初登場1位を記録。最新作となる『Haven』では、いちだんとアンサンブルはスケールアップし、歌心が飛躍的に豊かになっている。兄弟という気の置けない関係だけに、ステージでは各自が自由にふるまいながらも一体感のある演奏で楽しませてくれるだろうし、その和やかなムードは客席に元気と笑顔をもたらしてくれるはずだ。

WE BANJO 3 Haven We Banjo 3/PLANKTON(2019)

2019年作『Haven』タイトル・トラック

 

タリスク

そして、初めてわれわれの前に姿を見せてくれるのが、タリスクだ。コンサーティーナ(小型の蛇腹楽器)を溌溂と操るモーセン・アミニを中心にしたスコットランドの3人組で、2014年の結成以来めきめきと評価を得て、フォーク、ワールド・ミュージック系のメディアではもっとも旬な存在として騒がれている。例えば、全国紙としては最長の歴史を持つと言われるグラスゴー・ヘラルド新聞では〈魂を揺さぶるパワーを生み出す発電所〉と、これもスコットランドの著名な全国紙・スコッツマンでは〈3人で6人分のパワーを生み出している〉といった具合だ。

そもそもコンサーティーナは、小型で持ち運びに便利なことから旅の行商人などからも幅広く愛された歴史を持つ。一般的には、アコーディオンほどには馴染みがないが、アイリッシュ・ミュージックでは重要な楽器だ。

〈Cambridge Folk Festival 2019〉でのパフォーマンス映像
 

そのコンサーティーナを自由自在に操るモーセン・アミニは、スコットランドのグラスゴーで生まれ、このタリスクに限らず、現代のスコットランドの音楽シーンを担う重要な存在とされている。殊にライヴでの演奏は、野獣とも囁かれるくらいに圧巻なものらしく、疾走感といい、躍動感といい、ダイナミックな演奏を楽しませることで評判だ。

その彼を中心に、最新作『Beyond』(2019年)では、フィドルのヘイリー・キーナン、ギターのグレム・アームストロングの計3人で、息の合ったアンサンブルを楽しませてくれる。ウィ・バンジョー・スリーやイースト・ポインターズらとの交流も、彼らの演奏に同時代感覚をもたらしていて、新しい時代には新しい才能が現れるということを実感させてくれるのだ。

『Beyond』収録曲“Montreal”。アルバムに関するインタヴューはこちら

 


EVENT INFORMATION
ケルティック・クリスマス2019

2019年11月30日(土)
会場:福井県立音楽堂 ハーモニーホールふくい
出演:シャロン・シャノン、タリスク

2019年12月1日(日)
会場:神奈川 よこすか芸術劇場
出演:シャロン・シャノン、ウィ・バンジョー・スリー、タリスク
※終演後アフター・パーティー(セッション)開催

2019年12月7日(土)
会場:長野・長野市芸術館メインホール
出演:シャロン・シャノン、ウィ・バンジョー・スリー、タリスク、クリスティーン・カー(ダンス)

2019年12月8日(日)
会場:東京 すみだトリフォニーホール 大ホール
出演:シャロン・シャノン、ウィ・バンジョー・スリー、タリスク、クリスティーン・カー(ダンス)

★詳細、チケット予約はこちら

助成:Culture Ireland


OTHER INFORMATION

シャロン・シャノン
12月3日(火)大阪 あいおいニッセイ同和損保 ザ・フェニックスホール
12月5日(木)山形 文翔館
http://www.plankton.co.jp/sharon/index.html

ウィ・バンジョー・スリー
12月4日(水)大阪 梅田CLUB QUATTRO
12月5日(木)東京 渋谷CLUB QUATTRO
http://www.plankton.co.jp/webanjo3/index.html

タリスク
12月3日(火)東京 晴れたら空に豆まいて
12月4日(水)愛知 宗次ホール
http://www.plankton.co.jp/talisk/index.html

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