写真:石田昌隆「ケルティック・クリスマス2018」より

 

カナダの名誉ある音楽賞を数々受賞する、カナディアン・ケルトの新世代バンド

 その名は、イースト・ポインターズという。L.M.モンゴメリーの小説「赤毛のアン」で世界的に知られるカナダのプリンス・エドワード島、そこから羽ばたいて間もない若き3人組だ。ケルト音楽の伝統と、ポップ音楽との接点に溌溂と未来を覗かせてくれる。

 「島の東の端に、この名のコミュニティがあるんだよ。目の前の海は、暖流と寒流が交わり、とても恵まれた漁場になっていてね、ぼくは、そこでロブスター漁を長くやっていたことがある。その潮の流れのように世界と交わっていく、それを象徴する名としてバンドにつけたんだ」

 そう語るコーディ・チェイソンは、バンジョーとバック・ヴォーカルを担当する。コーディとは従兄弟にあたるのが、ティム・チェイソンだ。メイン・ヴォーカルの担当で、フィドルを弾きながら歌い、それどころか、ステージでは足でタンバリンを踏み鳴らしてリズムもとる。二人は、幼い頃からケルトの伝統音楽に囲まれて育った。ギターとバック・ヴォーカルを担当し、最近は、キーボードでもサウンドの飛躍を担うジェイク・シャロンも、その音楽環境では二人と変わらない。

 「小さな島で、人口だって少ない。伝統的な文化が強く残るいっぽうでは、いろんな影響が入り込んでいて、クリエイティヴな人が多い」とジェイクがいうように、伝統音楽ばかり聴いて育ったわけではない。ラジオから流れるポップスやロック、ヘヴィメタルと多彩な音楽に触れてきた。「たまたまニッケル・クリークを聴いて、コンテンポラリーなものとトラディショナルなものとを見事に橋渡ししていると思った。ぼくらも、その二つが交差する場所をどうやったら見つけることができるか、ルーツをリスペクトしつつ、枝分かれすることを恐れずにやっているよ」とコーディ。

 世界の各地に旅する機会も増えた。「アルバム『ホワット・ウイ・リーヴ・ビハインド』の中に“82ファイアーズ”という曲があるんだけど、タスマニアに行った時に山火事が多発していて、それを曲にした。地球のことを考えたり、自然の力を実感したり、旅先で感じたことを曲にする。と同時に、地元のことも曲にする。カナダの東の小さなところで育った人々が味わう苦労とか、挑戦とかをね」と、ティムは語る。

 「音楽をやってる人間にとっていちばんの醍醐味はライヴだと思う」という彼らだ。「踊るのが好きだし、人が踊るのを見るのも好きだし、踊らせるのはもっと好きだ。だから、ライヴで行く先々で、ぼくらの音楽でみんなが幸せになってくれて、笑顔で帰ってくれたり、それだけでも、ぼくらは、ずっと続けていけると思う」と、3人は口を揃えた。