2組のNYデュオ、2組のLAトリオ、新たな地平を求めて再始動

 2019年は、神保彰(ds)にとってとんでもなく多忙な1年だった。元日に編成の異なる2作を同時リリースすると、直後より全70公演をひかえたドラム・トリガー・システムによるワンマン・オーケストラ全国行脚の初日〈Shibuya de JIMBO〉を迎える。伊東たけし率いるメロウ・マッドネス、鳥山雄司らとのピラミッド、野呂一生を中心としたカシオペア3rdの各超大ツアーにも参画し、2月に還暦となった彼はその名も〈KANREKI〉と称したスペシャル・ライヴを企画。そこでJIMSAKUを21年ぶりに復活させ、昔からのファンを大興奮させた。快進撃は止まず、毛色が違うマイク・スターン・バンドの東京&名古屋のブルーノート公演に抜擢。即興性に富み自由度を重視したその5日間を成功させると、その間にはエレクトリック・バードで発表した過去20作を対象に、還暦祝いの2枚組ベスト盤(オリジナル曲集1枚&カヴァー曲集1枚)を編んだ。前年のアメリカ録音で初共演を果たしたNYのウィル・リーと、20年来の友人であるLAのオトマロ・ルイーズを、東京で神保が迎え入れるとこれで全国9か所を巡ってみせた。米二大都市と東京を繋ぐ同ライヴは意義深く、喝采の嵐にまみれていた。

 「それを終えてすぐに、次作収録のためアメリカへ旅立ちました。再びNYとLAでデュオとトリオの別編成による、前作とは違ってそれぞれが日替わりの2つのユニットでのレコーディングです。常にチャレンジングでいたいし、スキルアップにつながるなら困難も受け入れたい。先のトライアングル・バンドの経験はそのためのヒントになったし、エレクトリック・バード時代を振り返ったことも薬になり、一人オーケストラの打ち込み知識もそこで活かさせてもらいました。年間100曲を目標に作曲も進めていて……今年は80曲止まりでしたが(笑)、そんな中から柔らかくフワっとしたものと、ほの暗くもトンガったものに振り分け、サウンド・メイクも極端に両側へ寄せてみました」

神保彰 26丁目 ニューヨーク デュオ フィーチャリング ウィル・リー&オズ・ノイ ELECTRIC BIRD/キング(2020)

神保彰 27番街 ロサンゼルス トリオ フィーチャリング エイブラハム・ラボリエル、ラッセル・フェランテ&パトリース・ラッシェン ELECTRIC BIRD/キング(2020)

 米滞在中後半での録音となった〈NYデュオ〉は神保のドラムと、ウィル・リー(b)が5曲、オズ・ノイ(g)が5曲(奇数曲がノイ)。同期するシンセ音の奇抜さもあり、骨太でファンキーで夜の街での怪しい徘徊を思わせるサウンド。一方の〈LAトリオ〉は神保とエイブラハム・ラボリエル(b)に、再び共演の機会が増えたラッセル・フェランテ(p)が①③④⑤⑨、パトリース・ラッシェン(p)が他で加わる。スカっと突き抜けるイメージで、R&B風味のラッシェンとジャズ色が濃いフェランテの魅力も躍如。2020年、恒例化した元日2作同時発売で、その両方を聴いてはじめて新たな地平へ乗りだした神保の現在の姿は浮き彫りにされる。

 


LIVE INFORMATION

神保彰 ワンマンオーケストラ 2020 -SHIBUYA DE JIMBO-
○2020/1/4(土) 開場14:00 / 開演15:00
【会場】渋谷DUO Music Exchange
http://akira-jimbo.uh-oh.jp/