L.A.とN.Y. 街の匂いをもパッケージされた、還暦イヤーを飾る2作
年が明けた瞬間に、神保彰のニュー・アルバム2作品が同時リリースされるようになって久しいが、2枚を一挙に制作するだけでなく、今回の録音場所はL.A.とN.Y.、つまり、北米縦断レコーディングというのだから恐れ入る。実は、還暦イヤーの2019年に発表する記念作ということで、彼は新たな試みに挑んだのだ。
まずはL.Aからスタート。メンバーは長年の共演相手でもあるベーシスト、エイブラハム・ラボリエルと、前作の23作目で久々に参加したラッセル・フェランテ(key、p)で、神保が書き溜めた曲の中から厳選した9曲を録音。スムーズ・ジャズ界のスター・トランペッター、リック・ブラウンもゲストで華を添えたアルバムが『25th Avenue LA Trio』である。
「都会的なラッセルとラテン色の濃いエイブラハムとの組み合わせが功を奏し、聴きやすいサウンドの中にも新たな要素が加味されたと感じています。リックとは20数年振りの共演で、お互い音楽を作り続けている幸せを噛みしめ合いました。吹いている姿がとてつもなく絵になる彼のクールな音にも痺れてください」
N.Y.盤はウィル・リー(b)とのデュオ作品で、彼とプレイする前提で書き下ろした自作曲を収めている。
「ウィルの演奏をアナログ盤時代から散々聴いていたせいか、音を出した瞬間にピタッと合ったんですよ。これは本当に嬉しかったですね。イメージしていた以上にハードな仕上がりになっています」
心酔していた24丁目バンドのベーシストでもある彼と、自身のソロ・アルバム通算24枚目で初共演というのも運命的で、その想いを『24th Street NY Duo』というアルバム・タイトルに込めている。
ところで、今の時代、ミュージシャンが顔を合わせなくてもレコーディングは可能だが、それでもあえて現地に赴くのは神保のこだわりのひとつだ。
「アイ・コンタクトをしながら反応し合うプレイはファイル交換のレコーディングと演奏そのものが違ってきますし、合奏してこそ出てくる空気感を大切にしたいんですよ。特に今回、録音というのはその街の匂いもパックする作業だと改めて感じました」
確かに、音楽がロケーションと切っても切れない関係だと思い知る2作であり、その異なる世界と質感を1度に楽しめるのも醍醐味である。
さて、2019年も1月5日からワンマンオーケストラ・ツアーがスタートする他、3月には〈還暦記念ライヴ〉も開催決定。豪華出演者とは演奏だけでなく“トークも充実させたい”そうで、裏話にも期待したい。
「気持ちは若い頃とさほど変わっていません。“継続は力なり“の言葉を抱えて60代も頑張ります!」
LIVE INFO.
神保彰スペシャルライブ ―KANREKI―
○2019/3/9(土)18:00開演
会場:日本橋三井ホール(東京都)
【出演】神保彰/JIMSAKU with 伊東たけし/CASIOPEA 3rd
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