インタビュー

復活10周年を迎えたcali≠gari、過去最高に〈痛い〉コンセプト作を語る

cali≠gari『ある職業病への見解と、それに伴う不条理な事象とか』

復活10周年を迎えたcali≠gari、過去最高に〈痛い〉コンセプト作を語る

 今夏のEP『この雨に撃たれて』でメジャーへ復帰したcali≠gariが、新たなミニ・アルバム『ある職業病への見解と、それに伴う不条理な事象とか』を完成させた。……が、〈あまりメジャー向きではない陰鬱さ〉を湛えた作品ということで、今回は自身のレーベルである密室ノイローゼからのリリースに。その内容は、活動再開以降のこの10年の間にメンバーが悩まされた職業病=〈ヘルニア〉というテーマに各々のメンバーがアプローチしたナンバーと、〈ヘルニア〉から派生した楽曲=〈それに伴う不条理な事象とか〉から成る6曲入りのコンセプト盤というものだ。お題はもちろん、音楽性としてもハード・エッジな仕上がりとなった本作について、桜井青(ギター/首のヘルニアにより片腕が痛い)、石井秀仁(ヴォーカル/腰のヘルニアにより足が痛い)、村井研次郎(ベース/腰のヘルニアにより足が痛かったが2か月半で完治)へ話を訊いた。

cali≠gari ある職業病への見解と、それに伴う不条理な事象とか 密室ノイローゼ(2019)

 

ただひたすらに〈痛い〉

――今回のミニ・アルバムの発端は、復活10周年記念応援ソング(6月に豊洲PITで開催された復活10周年記念ライヴのパンフレットに同梱)の“ヘルニア”なのでしょうか?

桜井「そこからじゃなくて、結構前にネタで、〈“ヘルニア”って曲を作ったら笑えるよね〉って雑談をしてて」

――そのときのネタが、復活10周年応援記念ソングとして陽の目を見たという?

桜井「〈この10年の間で、もう身体がボロボロだね〜〉ってね。そもそもは、豊洲PITの日に今回のミニ・アルバムを出したかったっていうのがあったんです。要は、メンバーそれぞれが作った“ヘルニア”だけの作品っていうのが頭にあったんだけど(笑)、制作が間に合わなかったのでとりあえず1曲だけ出しておこうかなって」

――その構想が今回ようやく実りましたが、今作のオープニングは青さんによる“ヘルニアI”ですね。

桜井「この曲はもう、〈ヘルニアは痛いんだ〉っていうそれだけの話で(笑)」

――音的には、かなりラフな音像のシャッフル・チューンで。

桜井「こういう曲は得意ですよ、このバンドは。ヘルニアっていうと、やっぱり不穏な感じ? 痛いというかざわつくというか、不愉快な感じ。で、二人に投げたテーマとしては、〈皆さんの痛みをお願いします〉というもので」

――そこから、お三方がそれぞれのヘルニア像を……。

桜井「そこ、あまり掘り下げてく話じゃないですよ(笑)。テーマ的にはただ〈痛い〉ということを歌っただけなので。まあでも、自分のなかではね、“ヘルニアI”とかはもうパンクでいいんじゃないの?って」

――〈葬送行進曲〉のあのフレーズが入れ込んであったりと、遊び心もあって。あと、〈痛い! 痛い!〉っていうマッチョなコーラスがキャッチーですよね。

桜井「ああ〜、あれは追加で入れたんです。元はもっとソリッドな曲だったところに、あのパワー・コーラスを入れて。白石(元久、エンジニア)さんには、もうメインと同じくらいに(音量を)出してくださいって(笑)。このぐらいやったほうが、きっとcali≠gariらしいかなって」

――ヴォーカルも結構ディストーションが効いていて。イメージ的にはハードなナンバーが揃っていた『1(反転)』に収録されていそうなナンバーといいますか。

桜井「ああ、位置的にはああいう感じですよね。攻撃的な曲が欲しいなと思っていたんですよ。最近のライヴは『1(反転)』に入ってる“クソバカゴミゲロ”で〈ギャー!〉〈グシャー!〉って終わるのが定番なので。不思議なんですけど、あの曲がくると、お客さんもやたらとテンションが上がるんですよ。そういったポジションの曲として、この“ヘルニアI”だけじゃなく、このミニ・アルバムに入ってる曲たちをゆっくり浸透させていけたらなって」

――いま話に挙がった“クソバカゴミゲロ”から繋げると、次の“晴天仕掛けのルサンチマン”の歌詞は“クソバカゴミゲロ”のように他者に向かって噛み付きまくる内容なのかと思ったら、サビでガラッと変わるんですね。最終的には自分を奮い立たせているといいますか。

桜井「テーマがいろいろあるのを混ぜ込んじゃってるんですけどね、その曲って。例えばインフルエンザとかで熱出してるときって、変なこといっぱい考えますよね? あとになると何であんなこと考えてたんだろうって思うんですけど。それでヘルニアのときも、痛み止めは全然効かないし、何で自分ばっかりこんな目に遭ってるんだろう、みたいなね。で、そういうときに周りはみんな、楽しそうに温泉行ったりフグ食べに行ったりしててさ、いいな〜ってなっちゃうわけですよ(笑)。そういうことがあったなってことを念頭に置きつつ、これはまた別のお話になるんですけど、ある種の薬を飲むことによって、離脱症状とかが出ることがあるんです。そういったことから自分に傷をつけてしまったり、いろんなことがあるんですけども、最近そういうものを身近で見てて。何とかしてあげたいけど、本人になんとかしてもらうしかないんですよね。〈がんばって〉って言っちゃいけないじゃないですか、そういうときって。難しいんですけど、そういういろいろを歌詞に落とし込んでいこう、って書いた曲です」

――音的には〈Oiコール〉ならぬ〈痛いコール〉のある、スピード感のあるナンバーで。

桜井「初心に戻ってリフから作った曲ですね」

――端的に、格好良い曲だなと。といいますか、今回のアルバムは全体的に格好良いです。

桜井「出来上がってみたら、格好良いミニ・アルバムになりましたよね(笑)。ネタに走ってっちゃうのかな、cali≠gari名義でのLa’royque de zavy(cali≠gariの3人によく似たメンバーによる別バンド)みたいなことになるのかなってちょっと頭をよぎってたんですけど……普通、〈痛い〉がテーマって言ったら笑われそうじゃないですか(笑)。でも結果的に、三人ともいいところに落とし込めたなっていう。この“晴天仕掛けのルサンチマン”は、曲的にもすごい好きですよ。前から言ってるけど、お客さんが何も考えずに、聴いて身体が揺れる曲がいいなって、ただそれだけで作ってて」

――ほかのお二人は、“ヘルニアI”に対してはどんな感想を持たれました?

村井「ベースはフッと出てきたものをパッて弾いただけでしたね。歌詞はあんまり読んでないんですけど……(読む)〈立てば地獄/座れば地獄/歩く姿は地獄絵図〉。ああ、確かに座ると地獄でしたね。立つは楽だったんですけど」

――そこで自分の経験と照らし合わせるわけですね。

桜井「(爆笑)」

――石井さんは“ヘルニアI”を歌う立場だったわけですが……。

石井「まあ、変な言い方ですけど、たいしたことないですよ。だって、cali≠gariに入ったときにもっといろんな衝撃を受けてるわけだから。〈ミナゴロシ〉だけで進んでいく曲とか、〈死ね死ね〉だけの曲とかね。そっちより全然ライトです」

――確かに(笑)。では、歌のアプローチとしては?

石井「そういうのは、青さんの仮歌の段階で本番を歌ったようなテンションなんで」

桜井「石井さんは一人で歌うから、ディレクションができないじゃないですか。それがポリシーなら仕方ないから、じゃあ、どういうふうにしようと思ったときに、自分が限りなく本番に近い感じで歌っとけば演出になるから、それでいいやと思って」

――“晴天仕掛けのルサンチマン”のほうはいかがですか?

桜井「いつもより簡単だったでしょ? メロは」

石井「そんなこともないかな。いつも、最初は青さんの仮歌が入ってるから、メロディーを覚えたりしながら、まずは自分の仮歌に作り直すんですよ。で、今度はその仮歌をどんどんアップグレードしていくような感じでレコーディングするんだけど、だいたい自分の仮歌の段階で、ピッチとか音程的なところとか、青さんの仮歌と結構ずれるんです。その自分の仮歌をなぞっていくから、あとで〈ここは高い/低い〉とか、〈ここの音程はここと同じです〉みたいなに言われるっていう。曲的にはなんか、LAB. THE BASEMENTみたいだなって思いました」

――ああ〜、確かに。パンク/ハードコア調で……。

石井「そういう感じでどんどん進んでって、急にメロウになるみたいな」

桜井「〈僕なりの名古屋系〉のつもりで作ったんですけど、名古屋系の人たちに〈それは名古屋系じゃない〉って怒られちゃった(笑)」

 

二人の温度差を詞にしてる

――そして次は、研次郎さんの“ヘルニアII”。ソロやzavyではありましたけど、cali≠gariでは初作詞曲ですね。

村井「これ、別にヘルニアの歌じゃないんですよね。ヘルニアをテーマにしたがってる青さんと、それに乗り気じゃない秀仁君の歌なんですよ。一応〈痛い〉とかそういうフレーズを入れつつ、二人の温度差を詞にしてる」

石井「すごい歌詞だな(笑)。それと、cali≠gariの別の曲のフレーズが入ってるのはわざとなんですか? 歌詞もいくつかあったけど、キメの部分とかは“飛蝗者読誦”とか?」

――それは私も思いました。

村井「ダッダッダダダ♪ってとこね。cali≠gariっぽくしなきゃなって入れたやつですね」

石井「なんか、本気なのかふざけてるのかわかんない感じがすごいですよね。歌詞も曲調もそうですけど、ほんとに本気だと、若干ヤバさがあるじゃないですか。普通にできないふざけ方っていうか」

村井「一生懸命やってるんですけどね。一生懸命っていうか、二人がやりやすいようには作ってます。だって、スタジオに入らないじゃないですか。Lineでしかやり取りしてないから、なるべく説明が最小限になるようには作ってますね」

――そんなデモを聴いたとき、お二人はいかがでした?

石井「この歌詞で、この曲調で、〈クールに歌え〉みたいな指示がちょっとあったんですよね(笑)。キー的にそういう感じではありましたけど」

――この曲、青さんはソロもありますよね。

石井「あのソロはえらいシンプルなメロディーだけど、やたらポップだよね」

桜井「研次郎君から曲をもらったときにhideさんっぽい感じ、Zilchとかそっち路線なのかなって思ったから、そういうポップな雰囲気のものを入れてもいいのかなって。ライヴで弾くのも楽しそうですよね」

――で、次の“ヘルニアIII”は青さんの曲ですが、ベースのフレーズをはじめに〈葬送行進曲〉がよりわかりやすく入ってますね。

村井「同じフレーズのベースを30パターンぐらい入れてますね。一個のコピペだとつまんないですからね。一個普通のを弾いて、一音ちょっと変えたの弾いて、雰囲気をちょっと変えたのを弾いて、響きを半音ずらしたのを弾いて……とか全部アドリブで」

――“ヘルニアI”と比較すると、よりアヴァンギャルドな雰囲気のアレンジで。

桜井「ノリで作ってるんですよね。〈葬送行進曲〉のフレーズを使ったから、それがきっかけで曲全体を聴いてみたんですよ。あれ、実際は長いじゃないですか。そしたら〈こんなフレーズもあったんだ、こんな展開するんだ〉って発見があって、じゃあ使っちゃお〜って(笑)。テン・テン・テン・テレーン♪ってね、転調のところのフレーズとか、聴き比べるとわかりますよ」

――〈葬送行進曲〉から広げていってああなるっていうのもおもしろいです。

桜井「まあ、痛み止めが効かなくて眠れないって、ただそれだけの歌なんですけど(笑)。〈リリカ〉って薬があって、それを飲むと痛みは止まるんですけど、めっちゃ気持ちが悪いっていうか、変な感じになるんですよ。飲んで痛みが止まるけど〈うわ〜!〉ってなるのか、痛みだけを純粋に耐え凌ぐのかっていうね、そんな感じの歌。(歌詞の)〈どうでもいいわ〉とかは、そのときにたまたま聴いてたアーント・サリーだし(笑)」

石井「これはそういう歌ですよね。もう音程も何もない。ヴォーカル的に、この手の曲は結構難しいんですよ。ふわっとした感じなんだけど、青さんはメロディーにうるさいんでね。メロがないんだと思って適当に歌うと、〈いや、これはこうです〉ってドレミファソラシドで言われて、〈あっ、これはメロディーなんだ〉って思ったり。何かあったよね? そういうの」

桜井「“ゼロサムゲーム”じゃない? 音程がなさそうであるんですよ」

石井「でも、言われてもわかんない(笑)」

桜井「これはアーント・サリーでよかったんだけど。音程がそんなになくても別に気にしないっていう」

――そこらへんの判断が難しいわけですね(笑)。

石井「難しい(笑)」

桜井「ベースも30パターン入ってくると思わなかったですね。〈ピンクパンサーのテーマ〉が混ざってるのもおもしろいなと思って。聴いてて〈すごい、こんな合わせ方あるんだ〉って。確かにぴったり合うんですよ」

村井「うとうとしながら弾いてたらこうなっちゃいました」

――研次郎さん、結構予想外の発想をされること多いですよね?

村井「できますよ、長らくやってると」

石井「いや、研次郎君は変わってるんです(笑)」

 

まさかの方向転換

――(笑)では、続いて石井さんの“夢遊病”です。

石井「これは最初に〈“夢遊病”っていう曲を作ってください〉って言われたんです」

――なぜ“夢遊病”なんですか?

桜井「まあ、昔からの話ですよ。石井さんには〈今回のテーマは睡蓮と向日葵で〉とか言ってもダメじゃないですか。だったら、もうタイトル指定にしようと思って。で、“夢遊病”っていちばんやりやすそうかなって思ったんですよ。言ってしまえば寝てるときに起き上がって歩くだけだけど、いろんな意味合いに広げられるじゃないですか。だから、あとは勝手に解釈してもらって、とりあえずこのアルバムのなかに“夢遊病”ってタイトルの曲があったら格好良いからそれでお願いしようって」

――それで、“夢遊病”というお題がきましたが。

石井「結構早く、9月ぐらいにはもう作ってたんだけど、土壇場で半分ぐらい変えて、付け足して、みたいなのがあって。当初作ってたのは、コード進行的にはほんとにEマイナーだけでほとんどワンコード、ツーコードの世界だったんです。それで進めてったら、××みたいな曲になっちゃって(笑)。××っぽいってことに先に気付ければそこに向かっていかなかったんですけど、そもそも俺のなかに××がないから、逆にどんどん××になっちゃって。だから、いろんなパートを付け足したりして××じゃなくしましたね」

桜井「最後の広がり方がすごくいいですよね」

――妖艶で、セクシーな曲で。

桜井「いろんな歌詞を見てきましたけど、〈水車小屋〉って単語は初めてです」

石井「これは自分の言葉ではないんですよ」

――〈夢遊病の女〉……オペラからの引用ですね。

石井「〈夢遊病の女〉の和訳の文をそのまんま、何とか入れらんないかなと思って。この曲、歌詞もちょっと問題があったんです。さっき青さんも言ってたけど、こういうテーマだったら結構好き放題に書けるのかなと思ったら全然進まなくて、言葉にも既視感があるし何でだろう?と思ったら、2〜3年前ぐらいに俺、EX-ANSってバンドに参加したじゃないですか。あれで夢遊病の歌詞を思いっきり書いてたんですよ。……で、普通は2〜3年のうちに夢遊病の歌詞を2〜3曲も書かないでしょ(笑)? どうしようかと思ったんだけど、でも、そういえばEX-ANSのときも〈夢遊病の女〉の何かが入らないかなって考えてたな、ってことを思い出したんですね。今回はそっちに行けてよかったです。単にワードが入ってるとかじゃなくて、そのまんま使いたかったんですよね。それって難しいじゃないですか。言葉を投げ込むのは簡単だけど、文章を丸々っていうのはね。それをどうやって、取ってつけたようなものではなくメロディーにバッチリ合うように入れ込むか、みたいなところですよ」

――自分的なチャレンジがあったんですね。

石井「あと、サウンドも結構難しいんですよ。ドラムは生ドラムと打ち込みが半々ぐらいで、生ドラムはタム回しを何パターンか叩いてもらって、まあ、キックだけは全部打ち込みなんですけどそれを混ぜて使うっていう、自分がよくやるパターンなんですけど、とはいえちゃんとバンド・サウンドに聴こえるように。そういう音色を使ってるわけじゃないんだけど、エレクトリックにならないようにっていうか」

――そのあたりのバランスを取って。

石井「そうですね。あとはコード進行もこだわったというわけではないけど、きちんとしたものにしようと思って、パッと聴いただけだとどっちのコードかわからなくなる場所が結構あるんですよね。だけど、青さんにはそれを一切伝えず(笑)。それで、〈ここのコード何?〉って訊いてくるかと思ったら、一切訊かれずに完璧なギターが入ってたんで、すげえなと思って」

桜井「試されてるんですよ(笑)。これ、運指がおかしいよね? 明るくなるところ、メジャーC展開するところのアルペジオはちょっと普通じゃなかったりするんですけど、これはもう弾いてて楽しかったので。アコギを録るのって結構面倒臭いからあんまり入れたくないんですけれど、こういうカッティングは大好きだし、ここはアコギじゃきゃダメだなと思って」

――あと、レトロなオルガンも印象的です。

石井「オルガンが入ってるところが××から変えたところで。それによって、ちょっとドアーズっぽかったり、(デペッシュ・モードの)“Personal Jesus”みたいな感じのイメージに持ってったんですよ」

――××からよくそちらへ方向転換できましたね(笑)。

桜井「制作中、石井さんに〈進行どうですか?〉って訊いたら〈××みたいになっちゃった〉って言ってて、〈僕は別にそれでも構わないけど〉って言ったら〈いやいやそれは流石にダメだから、デペッシュっぽくする〉って話になって。そうかと思って待ってたら、まさか“Personal Jesus”がくるとは……って感じでしたよ(笑)。あと、ちょっとSOFT BALLETの“AMERICA”っぽくも感じるな〜とか」

――研次郎さんは、“夢遊病”についていかがです?

村井「いい曲ですよね。これは慣れてる感じで、全部さらっと弾いてますね」

石井「フレットレス?」

村井「そうそうそう。いい音してるんですよ。でも、プレイは年寄りだなって思いますね。良く言えば収まりがいいというか、玄人感が出ちゃうというか。いいのか悪いのかわからないですけど……20年前だとこうは弾けないわけで」

――プレイヤーとしてはさておき、作曲する人としては相当弾けてると思いますよ。

石井「(笑)振り幅がすごいですよね。なんか、この手の曲……曲というか、テンポ感もこんな感じのものって俺が作ることが多いと思うんだけど、それで研次郎君がフレットレスを弾くようなパターンって最初は〈新しい!〉って感じがあったよね。でも、いまはそれもcali≠gariの定番のひとつになったというか。“色悪”とか、あのへんからかな?」

――そして最後は石井さんの“ヘルニアIV”です。

石井「これは、もともとは〈ハンマービートみたいな曲が欲しい〉って言われたんですけど、そういう曲はGOATBEDとかほかのところで結構作ってて。ハンマービートにするとBPMが結構決まっちゃうんですよ、やっぱり。ドドドドドドってキックを8分にしますしね。だから、今回はそれよりもツタツタツタっていう、速いエレクトロっぽいほうがいいかなと思って。ドイツっぽい感じではなくて、いちばん売れた頃のミニストリーみたいな」

――歌詞はヘルニアにまつわる用語ですかね?

石井「そうですね」

――〈LOVE法〉も、当て字かなと思ったら、ちゃんとそういう用語があるんですね。

石井「そうですね。歌詞は、cali≠gariが普通のバンドだったらたぶん英単語が散りばめられてるようなものになるんだろうなと思って。でもまあ、cali≠gariはそうはいかないので」

桜井「もう、散りばめてる方もいますけど」

石井「(笑)〈LOVE法〉とかも、これが正式表記なんでね。(歌詞は日本語で、という)ルールは、俺は逆に忠実に守ってたんだけど、意外と青さんとかはそうじゃないから、〈あ、いいのか〉って。今回の曲にも〈I can fly〉とかあるしね」

桜井「でも〈I can fly〉も〈I can fly〉しかないじゃないですか。これって窪塚洋介じゃないですか」

――……はい。そんな6曲ですが、今回はマスタリング違いの2枚組なんですね。Disc-2は〈スマホ、オーディオプレーヤーで聴くために特化したマスタリング〉とのことですが……。

石井「変な話ですよね。エンジニアとか音楽を作る側が、曲がmp3になるっていう前提で、いいmp3を作らなきゃいけない。mp3をいかにデッキで聴いたときのように聴こえるかっていう」

――まあ、最近は配信だけのリリースも増えてますし、スマホでしか音楽を聴かない人もいますしね。

石井「そう。だから、そういう人たちって最初からmp3でしか聴いたことないんですよね。もともとはCDで聴いてたものをmp3で聴くんじゃなくて。俺、mp3にしてもプレイヤーで聴いてると思ってたんですけど、ノートパソコンとかスマホにイヤフォン突っ込んで聴くわけでしょ? それにびっくりして。何のためにスタジオ使ってレコーディングして、マスタリングでこだわってるんだろうって。それってmp3になった段階で全部ご破算なので」

――そうですね。それで今回のトライアルなんですね。Disc-2でもできるだけ本来の音に近いように。

桜井「作ったときの音にね。石井さんとも話してたんだけど、余裕があったら昔の機材を通過させて、とかやってみたかったよねって。やりたくても、いつも納期がギリギリなので(笑)。今後、発売3か月前ぐらいに完成することがあったら、それもぜひやってみたいですね」

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