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一緒に旅してる感覚

 先行シングル“RiGHT NOW”に至るまでのマッシヴな前半はEMPiREのサウンド・カラーを強烈に印象づけるものに違いありませんが、折り返し地点(カセットテープのA面ラスト)に置かれたオリエンタルなミディアムの“きっと君と”は、和の風景や季節の彩りを連想させる音使いもあって、いままでにないEMPiREの一面を届けてくれるナンバーでしょう。これは作詞も振付けもMAHOが手掛けています。

MAHO「半分諦めてるけど諦めきれない、すがりつきたいみたいな、自分の中にある思いを書きました。“Have it my way”は完全に強気な感じですけど、これは弱い自分を肯定しつつ、諦められないから進んでいきたいみたいな感じの歌詞です」

MiDORiKO「歌詞だけ見るとさ、めっちゃ失恋した人みたいだよ」

MAYU「まあ、MAHOちゃんの素性を知ってるからそう感じないんだけど、普通に見たらね」

YU-Ki「〈もう止められない戻れはしないの〉」

MAYU「〈たったひとりの冷たい朝は~〉(笑)」

MiKiNA「あ、だから切ないんだ、この曲」

MAHO「もうやめて(笑)! でも、どことなく寂しい感じとか、そういう気持ちに似てるかもしれないです。失恋したわけじゃないですけど(笑)」

 ラヴソングかどうかはさておき……ノスタルジックな趣きに合わせた情感豊かな歌唱も印象的です。

MiDORiKO「歌い方をいつもと変えるのは意識しました。何だろう、ちょっと辛そうというか、儚いような感じにしました」

MAYU「私は儚く歌えないんで、この曲に関してはちょっと難しかったです(笑)」

MAHO「アルバムの中で明らかに雰囲気が違う曲なので、振付けも〈みんなと一緒に〉というよりは、完全にこの6人で曲の世界観を作ることを意識しましたね」

 完成された世界観ということでは、ラスト前に控える“曲がりくねった道の”も彼女たちの新生面を見せるポップ・チューンでしょう。マーチング調のドラムラインやイルミネーションの光が降り注ぐような音飾が、この季節にも似合うファンタジーな世界観を音と言葉で描き出しています。

NOW「MAHOちゃんと共作で、初めて作詞しました。私が担当したAメロとBメロは、EMPiREに加入した時の気持ちと、5人が私のことを迎え入れてくれた時の雰囲気をそのまま歌詞に起こしました」

MAHO「サビは私なんですけど、NOWの書いた〈初めましてよろしくね〉もそうですし、EMPiREもいろんなことがあったけど、時を超えてそういうのが未来に繋がっていったらいいなという思いを、メロディーがキラキラしてる感じだったんで、なるべく綺麗な言葉で書きたいなと思って。〈シンフォニー〉とか〈ファンタジー〉とか、イメージが残る言葉を持ってきました」

MAYU「NOWの歌詞によって全体のメルヘン感がより増してるっていうか(笑)、〈今日は記念日〉って」

MiDORiKO「純粋」

MiKiNA「こういう歌詞を書く人はEMPiREにいなかった。何て綺麗な言葉なんだ、って」

YU-Ki「振付けは私なんですけど、NOWがどういう気持ちで詞を書いたかも聞いてたので、メルヘンな感じに寄せて考えましたね。あとはバックの音がマーチングっぽいので、みんなで楽器を持って行進するような振りを入れたりして、観てる人も曲の世界に入り込みやすいようにイメージしました」

 そこからの大団円を賑やかに飾るラスト・ナンバーは、ザ・フーの“Baba O'Riley”を想起させるイントロから威勢良く突進するロック・チューンの“I have a chance!!”。作中で唯一バンド・サウンドを明快に押し出していることもあって、6人の一体感をストレートに伝える楽曲です。作詞は初めてグループ名義によるもので、〈ここからは手を繋いで行こう〉〈一緒なら歩いて行けそうだ〉というサビのフレーズがアルバム全体のテーマを集約するかのようにポジティヴに響いてくることでしょう。

MAYU「どの曲も自由に作詞したんですけど、みんな“I have a chance!!”だけはどうも上手くハマらなかったので、〈エージェントに対する気持ちをみんなで書こう〉ってテーマを決めて、それぞれの良かったフレーズを集めて出来たので、EMPiREの全員作詞っていう形になりました」

YU-Ki「サビを考えたのは私です。〈エージェントとEMPiRE〉っていうのがテーマだったので、ライヴ中でもエージェントがいてくれるだけで〈大丈夫だな〉って自信がもらえるし、メンバーのみんなと一緒にいると強くなった気持ちになれるので、そういう気持ちをストレートに歌詞にしました」

MAYU「Aメロはだいたい私ですね。〈失敗ばっかり人生です 圧倒的劣等感〉って歌った後に、前向きな自分が〈それでもいつかは 笑える日が来るよ〉って逆のことを言って励ましてるみたいな。基本これも前向きな感じで」

 こちらの振付けはMiKiNAが担当しています。

MiKiNA「振付けを考えた3つのポイントがあって。まず、どんなお客さんでも簡単にできる振りにして、大きい場所でもどんな場所でも一体感が出るような振りにしたのと、〈6人でひとつ〉というテーマで誰かがつまづいても全員が助ける、目を向けるっていうのがひとつと、あとはメンバー個々の良さを見せたかったので、私なりにメンバーの良いところを挙げて、それを元に一人一人の振りを各自作ってもらって、みんなの可愛くて良いところが見えるように作りました」

 なお、初回限定盤のカセットテープにはボーナス・トラックとして“SELFiSH PEOPLE(the GREAT JOURNEY Ver.)”が収録されているものの、本編は全10曲40分という身の締まった構成なのも印象的です。

YU-Ki「そこはこだわってるんです」

MAYU「自分たちでも自信のある曲しか入ってないです。アルバムってどうしても印象の薄い曲みたいなのが入ることもあると思うんですけど(笑)、そういうのナシでホントにこれが素晴らしいっていう曲だけを詰めて。で、短いことでまた聴きたい気持ちにさせるというか、リピートして何度も聴いてもらえるアルバムになったと思います」

MAHO「ツアーの中でアルバム曲も披露していってるんですけど、やっぱり“Have it my way”で自由に踊ってる感じとかは、お客さんとのノリも新しいんですよ。それが新鮮でおもしろいっていうのは自分たちの中でもあるので、だからこの曲たちをライヴで披露して、自分たちのものにしていくことで凄く強くなれるって思っていて、何か凄いホント一緒に旅してる感覚があります」

MAYU「〈ここから飛び立っていくぞ〉って感じを『the GREAT JOURNEY ALBUM』というタイトルから受け止めたというか、やっぱりアルバム全部通して聴いてみても、新しいところを切り拓いていける曲たちだと思うし、だから私たちももっと先へ行ける曲たちだと思うので、そういう意味で〈旅だな〉って思います」

 

ずっと目標だった場所

 そんな旅はまだまだ続いていて……アルバム・リリースの翌日にはZepp DiverCityにおける〈EMPiRE'S GREAT ESCAPE TOUR〉ファイナルが控えているのは先述した通り。最高の新作を携えたEMPiREがその日どんな光景を見せてくれるのか、否が応でも期待は高まるばかりです。

NOW「はい。〈現実逃避〉ツアーのファイナルなので、とにかくZeppは楽しみたいし、お客さんには楽しんでってほしいし、いまの6人に凄く自信があるので、その自信というものをパフォーマンスにして、Zeppで出せたらいいなって凄く思います」

MiDORiKO「このアルバムでさらに武器が増えたというか、ライヴで強い曲たちがどんどん増えたので、2019年の最後をガッとキメて、その先も期待できるようなライヴにします」

MiKiNA「アルバムも出て、MVも何曲か公開されて、EMPiREの路線が明確になってきて、そういう部分が自分たちの自信になりつつあって、で、その自信がツアーでもどんどん出てきてるので、そういうのを全部集めたファイナルにしたいです。あと、未知のZeppまで来れたのもエージェントのみんなのおかげだから、そういう感謝を伝えたいのと、〈これからもこの人たちは凄いところに向かうんだな〉っていう可能性を観せられる、頼もしいライヴをしたいと思ってます」

MAYU EMPiRE「今年のEMPiRE、たくさんいろんなことがあったんですけど、Zeppはそのまとめみたいな日になると思うので、そこはバシッとキメて、来年に期待してもらえるようにがんばりたいと思います」

YU-Ki「今回のツアーを回ってて、エージェントとの距離が縮まっている感覚を実感してるので、みんながZeppに集まった時にどんな光景になるのか、凄い楽しみです。〈Zeppに立ちたい〉っていうのは最初にEMPiREが出来た時からの5人の目標だったんですよ。メンバーが変わってもEMPiREとしてそこに立てるっていうのが凄い嬉しくて。だからその2年前の自分たちにも自慢できるような、悔いの残らないライヴにして、みんなに〈これからも一緒にEMPiREと旅していきたいな〉って思ってもらえるようにしたいですね」