15. Normani “Motivation”
田中「15位は、フィフス・ハーモニーのメンバーとして知られるノーマニの“Motivation”! ビヨンセの“Crazy In Love”(2003年)やブリトニー・スピアーズの“...Baby One More Time”(98年)といった、2000年前後のポップ/R&Bクラシックにオマージュを捧げたミュージック・ビデオも話題になりました」
天野「ノスタルジーというよりも、屈託のない純粋な愛情を感じさせるところがいいですよね。〈Beychella〉と呼ばれている、ビヨンセが2018年の〈コーチェラ〉で披露したパフォーマンスを意識したようなニューオーリンズ・ブラス風のサウンドもかっこいいし、アリアナ・グランデが作曲に関わったメロディーもパワフルかつセクシー。2019年を代表するポップソングとして、申し分のない強力な一曲でした!」
14. Big Thief “Not”
田中「14位はビッグ・シーフの“Not”。彼女たちは今年リリースした2作のアルバムで、いまもっとも注目すべきバンドであることを証明しましたね。精緻なプロダクションでサイケデリックなフォークを展開した『U.F.O.F.』と、荒々しくて力強いロック・アルバムとなった『Two Hands』、いずれも大傑作でした!」
天野「この“Not”は、『Two Hands』に収録されています。ほとんど一発録りだったようで、レコーディング・スタジオで録音に立ち会っているかのような生々しい演奏とラフな音像が強烈。6分強と長尺の曲ですが、徐々に熱が高まっていく展開は、迫力たっぷりです。ビッグ・シーフはレディオヘッドが引き合いに出されることもあるのですが、肉体的なアンサンブルと知的な音作りを同居させている点は、確かに近いかも。2020年5月に開催される来日公演は、観逃し厳禁です!」
13. Clairo “Bags”
天野「次はクレイロの“Bags”。彼女は、2010年代後半に重要となった〈ベッドルーム・ポップ〉というスタイルを代表するアーティストですね。めちゃくちゃローファイで粗削りな“Pretty Girl”(2017年)で注目を集めた新進気鋭の作家ですが、元ヴァンパイア・ウィークエンドのロスタムがプロデューサーとして参加したデビュー・アルバム『Immunity』で、一気にその才能を開花させました」
田中「同作からのシングルがこの曲です。確かに音楽的なクォリティーは高くなりましたが、かといって彼女のパーソナルな手触りや感覚、未完成感は失われていません。フラジャイルなウィスパー・ヴォイス、繊細なメロディー、自身の経験を元に女性同士の恋愛について書いた詞など、この“Bags”を聴いていると、彼女の内面を覗き見ているような感覚になりますね」
12. Tyler, The Creator “EARFQUAKE”
田中「タイラー・ザ・クリエイターの“EARFQUAKE”が12位。この曲を収録した『IGOR』も、いいアルバムでしたね。アルバムを通してメロウで心地良い気怠さが漂っていて、殺伐としたムードの2019年において、心に不思議な安らぎをもたらしてくれる作品でした」
天野「全米チャートで1位を獲った『IGOR』は、タイラーのソングライターとしての成長と成熟が刻まれたアルバムですよね。あまりラップせずに歌っているのも、ハーモニーやメロディーに興味が向かっているからなのかな。この“EARFQUAKE”も、ピアノの流麗な旋律や、シンセサイザーが奏でる切ないメロディーが印象的。そもそも、この曲はジャスティン・ビーバーへの提供曲として書いたんだとか。いつかジャスティン・ビーバー・ヴァージョンも聴いてみたいですね」
11. Shawn Mendes & Camila Cabello “Señorita”
天野「11位です。超ラブラブなカップル、ショーン・メンデスとカミラ・カベロの“Señorita”。ショーンはカナダ、トロント出身のシンガー・ソングライター。カミラは、〈元フィフス・ハーモニー〉という冠も必要なくなったくらい活躍している、キューバ・ハバナ生まれのシンガーです。僕はこの曲、大好きなんです。サウダージな旋律といい、2人のアツくて艶っぽい歌といい、もう最高! ラテン・ポップのお手本のような曲じゃないですか? 今年はたくさんのプレイリストでこの曲を聴きましたよ」
田中「ラテン・ポップがシーンを席巻した2018年と比べると、2019年はジャンルのひとつとして定着しましたね。山Pこと山下智久さんのヒット曲“抱いてセニョリータ”(2006年)を覚えている方も多いかと思いますが、曲名の〈señorita(セニョリータ)〉というのはスペイン語で〈お嬢さん〉の意味です。〈私のことを『セニョリータ』と呼ぶのが好き〉とカミラが歌うサビには、ぐっときますね……。カシミア・キャットやベニー・ブランコ、アンドルー・ワットといった売れっ子プロデューサーが関わっていることも重要な一曲。さて、次はいよいよトップ10の発表です!」