タイラー・ザ・クリエイターの最高傑作だ。前作『Flower Boy』(2017年)におけるコードやメロディー重視の姿勢を残しつつ、『Goblin』(2011年)的なざらついたベースも頻出する。ラップもヴォーカルも飛び出す声の表現は実に多彩で、それらに施されるプロダクションも多様だ。エフェクトやカットアップを躊躇なく使い、ピッチも変幻自在。それはソランジュやスロウタイといった豪華ゲスト陣に対しても例外ではない。クレジットを見なければ、誰の声がどこに使われているかわからないだろう。極端に高域が削がれた“I DON’T LOVE YOU ANYMORE”のビートなど、奇異なアレンジも多い。それなのに、全体としては心地良い聴体験。この摩訶不思議な音世界に、今も夢中だ。