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すごい才能がたくさんある

 「演技派でとてもユーモラスで感情がこもってる」とEVISBEATSが評するドイツ育ちの日本人ラッパー・Blumioが、友人同士で互いを羨む両極端な2人の女性の満たされぬ思いを演じ分けるヴァースに、みずから歌サビを寄せた“Taru Wo Shiru”は、彼が言うところの生きるヒントたる曲の一つか。また、「遊びに来て自然な流れで」参加したJambo Lacquer(MICHEL☆ PUNCHの実弟)を道連れに、何物にも囚われぬ心のありかを歌った“Rhythm”には彼の姿勢が覗く。さらにアルバムには、ラップのみならずハーモニーでもサビに貢献し2曲で才を見せるJ.B.POEとの楽曲や、しなやかな英詞の歌い回しがクールな女性シンガーのASAを配した2曲、EVISBEATSをして「このグルーヴは天性のもんだと思います」と言わしめるQugoとの共演や、日々の憂いが影さすリリックと情感こぼれる歌声にSUKISHAの好演が光る“花びらが散る頃に”などが収められている。

 「J.B.POEは韓国のラッパーで、フックの作り方に才能を感じます。歌詞の内容も間違いない。日韓関係悪化みたいな時期に韓国に遊びに行ったんですが、その時に日韓関係のことをメールで話してたら、かなり明確で洞察が深いし、そのメールの文も歌詞みたいで、〈この人はラッパーだな〉って思いました。ASAは可愛らしくて妖艶な雰囲気があって、ファッションのセンスも良くて、モデルとしても活躍してるみたいです。SUKISHAは演奏や作曲やアレンジもするしマルチな才能があってセンスえげつないです。歌っても素晴らしくて、演奏ももちろんですが、歌詞が特におもしろい」。

 初共演となった彼らに加え、『HOLIDAY』収録曲にも参加していたWHALE TALXとannie the clumsy、高橋飛夢との再共演も。彼らについてはこう説明する。

 「annie the clumsyは声が綺麗で可愛らしくて、人としても可愛らしい魅力ある人です。CMの音楽とかナレーションもやってて幅広い人に届く良い声だと思います。WHALE TALXは音楽のセンスがおもしろくてラップも変わってるし、たまに禅問答みたいなことを言うところとかが好きです。高橋飛夢は声の雰囲気が良くて、トラック渡して次の日に上がってきました。それくらい曲作りが早いし、自分の意図も汲んでくれてました」。

 ラッパー/シンガーのみならず、彼自身には稀なライヴの機会に録音されたオーディエンスの歌声までも楽曲に取り込んだ『PEOPLE』の制作を終え、現在の素直な気持ちは「とにかくすごい才能がたくさんあるもんだなと驚きました」というもの。自然の中の暮らしを澄み切った空のような心と音、歌唱で表現するラストの“Remember Me”を一人で見せきった彼自身にも、その言葉は改めて向けられていいだろう。今後は世界に自身の音楽を届けることも視野に入れているという彼は、一時はTwitterでドイツへの移住プランを呟いていたこともあった。もっとも、そのプランが現実となるかはこれからの話のようで。

 「今後は海外のアーティストと曲を作って、世界中の人にも聴いてもらえて、海外のアーティストとも対等にやりあえるようにしたいと思ってます。ドイツ移住は、海外移住への憧れや子どもの教育面、ローファイ・ヒップホップやチル・ヒップホップな人が多そうでいいなと思って考えてました。それで実際に家族でドイツを訪れたこともあるんですが、結局いまの暮らしを見つめ直すいいきっかけになりましたね。いまのところ日本の山暮らしのほうが家族にとって心地良いので……新庄剛みたいに朝起きて2秒で決断できたらいいんですが、まだ検討中です」。

EVISBEATSが参加した近作を一部紹介。

 

関連盤を紹介。