edda
物語仕立ての神秘的な歌世界に大きなポテンシャルを感じさせるシンガー・ソングライター

 希望を掴みたくてすがるような気持ちや焦燥感を「人魚姫」の物語になぞらえて表現した楽曲“半魚人”が、地元の福岡で静かに話題を呼んだシンガー・ソングライターのedda(エッダ)。YUIや絢香、家入レオらを輩出した音楽塾ヴォイス出身であることを説明すると、先輩たちのようにある意味でストレートな作品をイメージするかもしれない。だが、全国デビュー盤となる今回のミニ・アルバム『さんかく扉のむこうがわ』を聴けば、その予想は良い意味で裏切られるはずだ。

edda さんかく扉のむこうがわ Erzahler(2017)

 軽やかに展開するファンタジックな打ち込みポップに乗せて〈不死であることの悲哀〉を綴った“不老不死”など、先述の“半魚人”も含む全5篇の収録曲は、いずれも独創的な視点で選んだモチーフを軸に、物語風に仕立てた詞世界を有するもの。ブレスをたっぷり含んだエモーショナルな歌声はAimerにも通じる雰囲気があり、作曲やアレンジ面では西尾芳彦や三輪コウダイといったヴォイスゆかりの面々からのサポートを受けながらも、彼らが手掛けてきたどのシンガーとも異なる神秘的なムードが漂っている。〈不思議の国のファニーな行進曲〉といった装いの“エッセンシャルパレード”、心の軋みをポップに転化したような電気仕掛けのバラッド“ベルベット”といった楽曲の、受け手の解釈でいかようにも捉えられそうな作りからは、何となくマザー・グースの歌を連想したりも。詞/曲のみならずジャケットのイラストも自身でクリエイトする彼女の想像力豊かな扉の向こう側には、まだまだ未知の歌が眠っていそうだ。