バクバクドキン──「中途半端なグループですね。歌なのかラップなのかもわからないし……ジャンル分けは自分たちでもできてないです」(YUI)、「MySpaceのジャンルは〈RAP/JAZZ/COMEDY〉にしてました」(NAOKO)と当人たちが語る、女性2人組のユニット。グループの成り立ちは、クラブでの出会いだという。
「恵比寿にあったみるくのHIV啓発のイヴェントにお互い一人で行ってて、そこで出会ったんです」(NAOKO)。
「それでカラオケに行くことになって、歌声を聴いたら良い声だなって。私はそれまでバンドで曲作りをしてたんですけど、宅録をメインにしたいなって思ってて、それでNAOKOと2人で組もうと思ったんですよね。好みとしても、お互いに渋谷系的なものや、ジャズとか生音っぽいもの、それからサンプリングが好きで。それでバクバクドキンとして“Betty”って曲を作って、それをMySpaceにアップしたのが最初です」(YUI)。
その流れで、彼女たちを自身の作品でフックアップしたDJ FUMIYA(RIP SLYME)と出会うわけだが……。
「いちばんサウンドがおもしろいプロデューサーだなって思ったんで、〈プロデュースしてください〉って“Betty”のCDを持って、三宿WebでFUMIYAさんに突撃したんですよ、面識もないのに。なんか、変質者を見るような目で見られましたけど(笑)」(NAOKO)。
「そしたら次の日に連絡があって、FUMIYAさんの家にお呼ばれして、鼻くその話で盛り上がって(笑)。それでプロデュースしていただいたんですよね。嘘のようなホントの話です」(YUI)。
その後はDJ FUMIYAやTEI TOWAのプロデュース作品に参加し、知名度を高めながらさまざまなライヴも展開。そのなかで〈ササクレフェスティバル〉に参加したのをキッカケに、同イヴェントを主催するFragmentのレーベル、術ノ穴と提携し、初のミニ・アルバム『バクバクドキン』をリリースした。
「楽曲は全部打ち込みで、私が作っております。まずトラックを作って、そこに合うイメージで歌詞を書いていって、それをNAOKOに投げて、お互いに〈こうしたほうがいいかも〉っていうディスカッションをして、形にしていくって感じで。ラップっぽいものが多いけど、歌モノももちろん好きだし、そこはこだわってはいませんね」(YUI)。
そして本作に登場したのは、打ち込みのサイケ・ロックなサウンドが印象的な“びっくり”、ビートとリリックのユーモラスな組み合わせが楽しい“beefsteak”、「身体が弱いんで、強くなりたいんです」(YUI)というイメージから生まれた“怪造人間”、「こういう曲があれば(美容院の)CMが来るかなって」とNAOKOが語る“HAIRCUT”、呑気な音像がクルクルと展開する“swim”と、カラフルな出来映えの5曲。全体を通して、非常にポップで軽やかだ。自然と心がウキウキするようなキャッチーさがあって、渋谷系の流れで言えばYUKARI FRESHを思わせるような、ドリーミーな雰囲気が心地良い。
「もっとドープで、格好つけてる曲もあるんだけど、今回はユルくてハッピーな雰囲気にしようって」(YUI)。
「ライヴももっとやっていきたいですね。私たちは海外の人にウケることが多いんで、パプアニューギニアとかでもライヴがしたい」(NAOKO)、「パプアニューギニアのチャートで1位になって逆輸入されたい」(YUI)と、大きいのか小さいのかわからない夢を話すバクバクドキン。オリジナリティーに溢れると同時に、Kawaiiカルチャーをはじめとした日本独自のポップ・カルチャーとも親和性の高い彼女たちは、その意味でも、確かに海外のリスナーに近い存在なのかもしれない。
「ジャンル分けできてないから、ドン!とは売れないと思うんですよ(笑)。だから、おぎやはぎみたいな、〈脇役のいちばん〉みたいなふうにいければなって」(YUI)。
PROFILE/バクバクドキン
YUIとNAOKOによる2人組。東京にて結成。2010年、DJ FUMIYA(RIP SLYME)のプロデュースによる3曲“guppy”“RINGO”“ソーダの夢”を配信し、2011年にはTOWA TEI with BAKUBAKUDOKIN名義で“UPLOAD”をデジタル・リリース。その後は両者の楽曲への客演や、ゲームソフト「塊魂 ノ・ビ~タ」のサウンドトラック『かたもりだましい』をはじめとした外部作品への参加を重ねる。さまざまなライヴ・イヴェントへの出演を経て、2013年は〈WORLD HAPPINESS〉〈りんご音楽祭〉といった大型フェスにも招聘。徐々にその名を広めるなか、このたびファースト・ミニ・アルバム『バクバクドキン』(術ノ穴)をリリースした。