新進気鋭の映画作家・城真也が監督した映画「アボカドの固さ」。是枝裕和や三宅唱のもとで学んだ城にとって、本作は初の長編監督作である。PFFアワード2019の〈ひかりTV賞〉受賞、第20回TAMA NEW WAVEの〈ある視点部門〉に入選、とすでに注目を集めている映画だ。
もともと4月に東京・渋谷のユーロスペースで公開される予定だった本作は、新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、夏ごろの公開に延期。また、5月下旬に予定されていた京都と大阪での上映も、残念ながら先延ばしになっている。
「アボカドの固さ」の公開を心待ちにしている映画ファンも少なくないだろうこの状況で、朗報が飛び込んできた。5月23日(土)から2週間のあいだ、インターネット上の劇場〈仮設の映画館〉で先行配信されることになったのだ。配給会社の東風と映画監督の想田和弘が中心となった〈仮設の映画館〉は、観客が選んだ劇場、配給、製作者に鑑賞料金を分配する画期的なサーヴィスである。
さて。「アボカドの固さ」がどんな物語なのかというと、主演の前原瑞樹が実際に体験した失恋をもとにしたものだという。失恋後の日々を生きる前原の姿を、徹底したリアリズム、客観的なカメラ、長回しなどの印象的な語り口で表現しており、随所で城の才気が感じられる作品になっている。
さらに、この映画にはもうひとつ、〈音楽〉という重要な側面がある。
映画の音楽を担当したのは、D.A.N.の櫻木大悟。彼のサイケデリックで鋭い電子音が、フィルムに緊張感と弛緩を与える。そしてエンド・クレジットで流れる主題歌は、Taiko Super Kicksの“感性の網目”だ。その繊細な歌、演奏、詞は、「アボカドの固さ」に深い余韻を残す。
今回は「アボカドの固さ」の公開を記念して、城監督と櫻木、Taiko Super Kicksの伊藤暁里による鼎談を行った。東京のインディペンデント・シーンで活動を続けてきた2人のミュージシャンは、いかにして〈アボカド〉に携わることになったのか。20代の表現者3人が、幸福なコラボレーションについて語る。