インタビュー

THE FUZZ ACTがコロナ禍の最中に考えたこと――30日連続弾き語り投稿と2曲の新曲リリースをしたわけ

THE FUZZ ACTがコロナ禍の最中に考えたこと――30日連続弾き語り投稿と2曲の新曲リリースをしたわけ

愚直なまでにストレートなロックに乗せて、歌詞にもパフォーマンスにも熱いメッセージの込めて叫ぶように歌うTHE FUZZ ACT。新型コロナウイルスの一連の騒動は、そんな三人組ロック・バンドの活動をも一変させた。しかし彼らが他のバンドと一味違ったのはアクションが早かったということ。4月には毎日連続で弾き語り音源をSNSにアップし、さらにそこから2曲の新曲もリリースした。バンドが何を思い、これからどう行動していくのか、ヴォーカル・ギターの德永駿介にメール・インタビューを行った。


 

――まずはTHE FUZZ ACTを知らない方のためにも、簡単なプロフィールと略歴から教えていただけますか?

「THE FUZZ ACTはヴォーカル・ギター德永駿介、ベース加藤慎也、ドラムス森園竣で構成されるスリーピース・バンドです。ヴォーカルの德永とドラム森園が高校生の時に原型のバンドを結成して、18歳で上京してから東京で本格的に活動を開始。これまでに2枚のフル・アルバム、1枚のミニ・アルバム、5枚のシングルを発売しました。ちょうどコロナ禍の直前、新しいミニ・アルバムを作る予定でレコーディングに入っていたところでした」

サード・ミニ・アルバム『Humans』(2019年作)収録曲“太陽を待ちながら”
 

――それで今回のコロナウイルスの騒動が起こり、バンドが起こしたアクションというのが……。

「コロナの騒動が大きくなって、世の中でも騒動に対する不安が高まり始めた頃、すぐに4月いっぱい、30日連続でSNSに弾き語りの投稿をしよう、と思い立ちました。3月の終わりに30日分の弾き語りを撮り溜めし、4月に毎日TwitterやInstagramなどのSNSで弾き語り映像を投稿しました」

――なるほど。その中で何か変化はありました?

「弾き語り投稿をする最中、今の状況と心境をダイレクトに表現した楽曲を発表する必要があったんです。そこで弾き語り動画も投稿しながら、4月20日には〈Stay Home Demo〉と銘打って“心で駆け出す君へ”という音源を発表しました。

デモ音源はレコーディング・エンジニアの小野寺伯文氏に協力していただきつつ、パートごとにそれぞれに録音したものをまとめて、音源にしたものです。その後状況が刻一刻と変化する中、次の段階に移行していく雰囲気を感じ、5月10日に新たに、〈Stay Home Demo2〉と銘打って“世界のどこにいても”という音源を発表しました。その後それぞれの家で撮影した映像を組み合わせ、5月21日に“世界のどこにいても”のミュージック・ビデオを発表しました」

――音源もMVも全部リモートで制作されたんですか?

「音源、映像ともにそれぞれ録音、撮影した映像を合わせて作りました。音源に関してはドラムスは打ち込み、ギターはパソコンに繋いで、ベースはアンプから出した音をiPhoneで録音して、エンジニアである小野寺さんに編集してもらいました。お互い音源を交換し合いながら話し合ってアレンジを決めていき、最終的な形を模索して。

映像に関しては、外でギターを弾いてるシーンなどは別の人に撮影をお願いして、人との接触は最小限にして行いました。MVの三分割のシーンなどはリモートで同時演奏しているイメージで作成しました。凝った演出やアレンジがあるわけではありませんが、どちらも現状を表現しつつ、今の自分たちを形にできたのではないかと思っています」

――現在、さまざまなアクションを起こしたり、起こさなかったりするアーティストがいる中で、THE FUZZ ACTが“心で駆け出す君へ”“世界のどこにいても”という2曲を制作しようと思い立った理由は何ですか?

「まず、歌わなければ、と思いました。コロナ禍において社会的に不安が高まっていく中、自分が生きてきて体験した中で思い出したことと言えば3.11(東日本大震災)でした。これを引き合いに出すのは正確ではないとは理解しているのですが、自分の心の中にまず浮かんできて重なったのがその時に感じた気持ちだったんです。

それは簡単に言えば〈不安〉です。不安というのは人間の全ての活動を押しつぶしてしまいます。精神的活動も、肉体的活動も。3.11の時、自分が未熟だったこともあり、自分はその状況に対する反応とか、活動ができなかった。そして漠とした不安に包まれたまま時が過ぎたように思います。しかし、世の中には多くの勇気ある活動を様々な角度から起こした方々がいました。不安という感情は誰もが持っていて、誰もが押しつぶされそうだったはずなのに、です」

――次は自分がアクションを起こす番だと思った?

「はい。あの時のことを思い出しつつ、自分が今、似たような不安を感じている中で、何をすべきかと問うた時に、歌い、作品を発表すべきだと思ったんです」

――それはなぜですか?

「〈社会のために〉とかそういうことが前提にあるわけではなく、いつも自分が力の限り取り組んでいること、心の底から一番パワーを注げることをどういう状況下でも行うことが大事なことだと直感的に思ったからです。ポジティヴなパワーを提示することに意味があると思いました。

もう一つは、様々な問題が取り沙汰されればされるほど、音楽家がその問題に引きずられて反応してしまっているような気がして、そういうところに疑問を抱きました。音楽家ならばやることは、まず最初に、作品を発表し、演奏し、歌うべきなのではないかと思ったのです」

――考え方は人それぞれですが、たしかにTHE FUZZ ACTの考えはもっともだと思います。ただ、今もなおアーティストや音楽業界は苦しい状況に立たされていますよね。今後バンドがするべき活動はどのようなことだと思いますか?

「作品を発表していくことだと思います。演奏し、歌うことだと思います。どうして自分が音楽を鳴らしたかったか、どうして自分がバンドをやろうとしたのか。音楽への向き合い方が問われていると思います。僕は自分で作品を作ることで世間と社会との距離を測ってきました。だから今までと同じように挑戦してみるのです。エスケーピズムのように感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、それは違うと思っています。作品を作り、発表する、または演奏して発信するパワーが、何かを巻き込む力となると信じています」

――自分と社会との距離感を測りながら作品を発表していくことが、何かを巻き込む力になる。もう少し詳しくお話ししてもらえますか?

「自分と社会の距離感を測るということは大変個人的なことです。これはあくまで自分が表現する人間として、どのような位置づけで世界に存在しているかということの確認作業です。そして、その次の段階として作品の発信があります。作成した作品を発信することで、初めて自分が、作品が、外部との関わりを持つことになります。そして、発表された作品をなんらかの形で見たり、聴いたりした方々は、ポジティヴでもネガティヴでも何かしらを感じることがあると思います。それが作品の意義です。人が何かを思い、考えるきっかけになる、刺激になる。それが更になんらかの行動を起こす契機になる。

元気づけたいとか、励ましたいとか、狙った反応を起こさせることではなくて、作品に触れることで人々が何かを思う。それがその人の次の行動になっていく。これが作品の意義であり、作品が人々を巻き込んでいくということだと思います」

――なるほど。では具体的な活動ではなく、もっと大きな意味でのバンドの今後の目標はありますか?

「どんな状況でも自らの作品を世に出していくことです。そして自分たちが何を今表現したいかをしっかりと見つめ発表していくことです。それがたくさんの人に聴かれ、誰かの人生に刺激を与える作品になっていけばこの上なく嬉しいことです」

――ありがとうございました。

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