Mikikiがオススメの新人アーティストを採り上げる連載〈Mikiki’s Young Bloods〉。編集部スタッフが、サブスクやCDショップで試聴して、あるいはライブハウスやクラブでパフォーマンスを観て、〈これはやばい!〉と興奮した新人ミュージシャンを紹介します。今回は編集部・酒井が、今年から活動を開始した男女ユニット、ar syura(アルシュラ)をピックアップ。ユニットによる自己紹介、まずはこの曲から、編集部・酒井の推しポイント、こんな音楽のファンにオススメ、という4項目でまとめました。

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自己紹介

「〈ar syura(アルシュラ)〉という名前で2021年1月に活動を始めました。ベーシストとしても活動しているAki Kawanoと、コンポーザーのyohkyuの2人組ユニットです。活動を始めた今年、12か月連続でシングルを配信でリリースしている最中です。今後も発信を絶やさずいこうと思います。現在は未だリリースのみの活動ですが、演奏活動も計画しています。

2人ともジャンルを問わず色んな音楽から影響を受けていますが、ar syuraとして柱になっている音楽はモダンなR&Bやジャズです。憧れは強いですがなりきる事はできず、受けてきた様々な影響の少しずつが形になっている。それがar syuraのインディーミュージックを成しています。これが連続リリースを通じて感じている事です。そしてこれからも私たちや時代の変化と共に変わっていく物だと思います!

歌詞の世界観はとても暗い所が多いですが、本当の最後の最後には信じている明るい場所に向かっていける様にと願い描いています。辛い事や悲しい事の最中でも、歩いていく力になれる音楽として、〈その〉人に届けられれば本望です。

私達自身が生きる為に作った音楽が、必要としてくれる人の元に届きます様に!」

 

まずはこの曲から
“Twilit”

今年に入って毎月楽曲をリリースしてきたar syuraが、本日10月29日にリリースした10枚目のシングル。暗く静かなリズムとトラックに、繰り返される印象的なベース。そこにAki Kawanoの美しいボーカルとコーラスが重なっていく。自分の理想郷はあるのかなあ、そんなもんねえよどこにも。そう自問自答しつつも、それでも一歩前に進もうというほんの少しの希望が感じられる。コーラスの美麗さ、後半の三連符のノリ方などは、ar syuraのカッコよさが存分に感じられるポイント。これまでリリースされた楽曲はすべて下記YouTubeチャンネルでMVやオフィシャルオーディオになっているので、ぜひいろいろと聴き比べを。

 

酒井優考の推しポイント

Aki Kawanoは昨年まで宇宙団というバンドにいた方で、yohkyuの方も全く異なるジャンルのバンドでギターを弾いていた方。その二人が本当にやりたい音楽を目指して出会って、それぞれの出自(?)とは全く異なる音を出してるのが、まず最初にar syuraを面白いなと思ったところ。

次に印象に残ったのがyohkyuの作るトラック。本人たちは自己紹介でも〈モダンなR&Bやジャズ〉が柱になっていると言っているし、マリアス(The Marias)、ハイエイタス・カイヨーテ(Hiatus Kaiyote)、ジョルジャ・スミス(Jorja Smith)、アーロ・パークス(Arlo Parks)、ジ・インターネット(The Internet)らからの影響を公言しているけど、材料や影響元がそうだとしても、出来上がった料理もR&Bやジャズかと言われればそうでもない気もする。そして、ただでさえ毎月1曲ずつリリースしているのもすごいことだけど、リリースされる曲たちが全部違った味なのもまたすごい。一貫してダークでクールで硬質な感じのトラックなんだけど、明らかに全曲違う味付けだし、既存の日本のメシ(J-Pop)の枠組みを広げよう、超えようとしている感じがします。

そしてもうひとつ大事なのが、Aki Kawanoのベースと歌。硬質でメカニカルなビートに、人の手で弾くベースと人が歌う声が乗ることで、〈柔よく剛を制す〉じゃないけど、ハートのこもったロボットのような、例えば「攻殻機動隊」の〈義体〉のような、見たことも聴いたことないような音像とリズムを獲得している。何より歌に余計な雑味がなくて美しいし、ベースのノリは完全に玄人だ(Kawanoは数々のバンドやセッションにも参加している)。実はこのベース、演奏しながら歌うことができるらしいので、今後はライブ活動にも期待したいところです。

 

こんな音楽のファンにオススメ

スーパーカー(後期)/トルネード竜巻/クラムボン/AJICO/土岐麻子/朝日美穂……うーんどれも全然違うけど……