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頭炭酸
(2001年、『ゆらゆら帝国III』収録)

〈短時間で君と最高コミュニケイション〉〈勘違いで鳥と最高コミュニケイション〉〈3時間で月に3回目のバケイション〉のダルな押韻が心地いい。〈月に3回目〉とは〈1ヶ月で3回目〉なのか〈月(衛星)に3回目〉なのか、わたしは後者の説をおしているがどうだろうか。

 

はて人間は?
(2005年、ゆらゆら帝国『Sweet Spot』収録)

わたしは結局のところ〈幾度目のバースデイ?/キャンドル控えめに2本〉的なことを言いたいと思っている。地蔵の目線で見渡したりシャボンで自慢のアンテナを洗ったりしているものがなんなのかわからないところもいい。藤子・F・不二雄の短編のようなタイトルも秀逸。

 

あえて抵抗しない
(2007年、ゆらゆら帝国『空洞です』収録)

最近の坂本慎太郎の歌詞はムーディ勝山の〈右から何かが来てる。僕はそれを左へ受け流す〉的な虚無モーションが多いのだけど、そういう方向性をがっちり見せてる感じがして良い。アルバムの順番で聴いたときの“できない”と“やさしい動物”と三曲でセットであると思う。

『空洞です』は本当にいいアルバムだけど、聴いたときに完璧すぎて次のアルバムが出る余地はあるのかと不安になったのだが、やはりオリジナル・アルバムはその後出なかった。

 

何かが違う
(2011年、坂本慎太郎『幻とのつきあい方』収録)

これは2011年に東京で暮らしていた人の心象風景の素描。カタストロフィで生活は変わらぬ素振りを求められたし変わらぬ生活を営んでいたけど、たしかにあのときは息を潜めて様子を窺っているような苦しさと不安ばかりで、世界がスクリーン越しに見たような感じだったことが思い出させられる。

 

昆虫ロック
(2003年、ゆらゆら帝国『3×3×3』収録)

タイトルがかっこいい。サビである〈悪霊どもをおっぱらって/透き通る体を手に入れろ/湿った肉を削ぎ落として/乾いた骨でかっこつけろ〉の呪術みたいな歌い方もそうだけど、ハードボイルドだけど全然つかめないような、実体が見えるようで見えないさじ加減が絶妙。

昆虫は足がいっぱいあるのでひとりでベースもギターもドラムも出来るし、ギターとかベースのフォルム自体が昆虫っぽい、とか案外そういう単純なところから出来た歌詞なのではないかと思う。