サーキュレーション・オブ・ジェネレーションX
JOSHUA REDMAN,BRAD MEHLDAU,CHRISTIAN McBRIDE,BRIAN BLADE 『RoundAgain』 Nonesuch(2020)
ジョシュア・レッドマンは、このメンバー、ブラッド・メルドー、クリスチャン・マクブライド、ブライアン・ブレイドと初めてレコーディングした時すでに、このメンバーでの活動は「長くは続かないだろう」と感じていたという。1994年『Mood Swing』発売当時、それぞれがすでに自身の音楽に踏み出しつつあったし、誰もが共演したい演奏家としてすでにたくさんのオファーを受けていたのだ。それでも一年半、ジョシュアのレギュラー・カルテットとして活動を続けられたのは彼らが音楽的に深く共感していたからだ。結成と同時に解散を予感していたジョシュアは、「それがいつになるかわからないがまた必ず再開する」とも感じていた。ブライアンはこのバンドのことを「まるでターンテーブルに乗ったLPのようだ。途中で針を持ち上げてもそれはずーっと回り続け、針を戻すと音楽を奏で始めるように」と喩えている。果たして2020年、このアルバム『RoundAgain』で彼らは再開を果たした。
ジョシュアのオリジナル“Undertow”がオープニングを飾る。ジョシュアのもう一つのカルテットのピアノ、アーロン・パークスの楽曲を思わせるクロマティックなテーマをブラッド・メルドーのピアノが丹念に辿りながらソロを構築する。イントロのピアノのアルペジオ、サックスが奏でるテーマにこのアメリカンなカルテットにキース・ジャレットのヨーロピアン・カルテット“My Song”の影が射す。すべての曲をジョシュアが書き下ろした24年前とは異なり、メンバーも一曲づつ書き下ろす。どの曲もそれぞれの個性が聴こえ、それぞれが過ごした時間の厚みが響く。アルバムは “Your Part to Play”が最後を飾り、ジョシュアの父、デューイ・レッドマンが在籍したキース・ジャレットのアメリカン・カルテットの“Mysteries”を思わせた。
かつてジョシュアに取材した時にカルテットという形式についてどう思うか聞いてみたことがある。彼は「確かにクラシックのカルテット、例えばベートーヴェンの弦楽四重奏とそれ以降の(カルテットというジャンルのために書かれた)作品のように、コルトレーンのカルテットとそれ以降、あるいはそれ以前も含めてジャズにとってピアノ・トリオ同様、とても重要な形式」と答えた。彼にとって〈Mood Swing〉はジャズを歴史的にも同時代的にも感じた最初のバンドだったのかもしれない。以降、アーロン・ゴールドバーグがピアノを弾いた名盤『Beyond』(2000年)、ジョシュアもメンバーの一人である〈James Farm〉など、回転し続けた彼の音楽は変化を深化を奏でた。ジョシュアは、あの音楽の軌道へと合流し、彼らの創造の螺旋は再び回転し始める。