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異なる背景を持つ2人のマエストロが、ブルースをキーに競演。

 コンボからビッグ・バンド、様々なアーティストとのコラボレーションなど、八面六臂の活躍を続けているクリスチャン・マクブライドのニュー・アルバムは、最小アンサンブルのデュオ、それもベーシストとの共演だ。そのパートナーに選んだのは、クラシックから、ジャズ、ルーツ・ミュージックと幅広いミュージック・レンジを誇る唯一無二の存在、エドガー・メイヤーだ。メイヤーは、ヨーヨー・マらとの共演のクラシックだけにとどまらず、ベラ・フレックや、クリス・シーレとの共演で知られる。先日のグラミー賞では、フレック、ザキール・フセインとの共演アルバムで、2部門で受賞の栄誉に輝いた。

CHRISTIAN McBRIDE, EDGAR MEYER 『But Who’s Gonna Play The Melody?』 Mack Avenue/キングインターナショナル(2024)

 「エドガーのことは、出逢う随分前から知っていた。レイ・ブラウンと初めて話したとき、〈今、注目しているベーシストはエドガー・メイヤー。彼は本当に素晴らしい〉と聞かされて、すぐにチェックし私も大ファンになった。レイは、エドガーとヴィクター・ウッテンの3人で1990年ごろにTVショウで共演していたのだ。2000年にテネシーでのベース・キャンプで初めてエドガーと出逢い、2007年にはアスペンで共演する機会を得た。このときのプレイが最高で、〈また一緒にやろう〉と意気投合し、2012年と2013年に2人でツアーを巡った。そしてごく自然な流れで2019年にスタジオに入り、9曲ほどをレコーディング。追加のレコーディングをしてアルバムを完成させたがったが、パンデミックと2人とも多忙だったため、なかなかチャンスがなく、2022年にやっとスタジオに戻れて完成した」とマクブライドは、メイヤーとの出逢いから、アルバム完成までの20数年のヒストリーを語ってくれた。

 「異なる背景を持つ2人だが、ボウイング(弓弾き)とピチカートを交互をプレイして共演した。注意深く、聴けば、私とエドガーのサウンドの違いは明白だ。お互いにピアノの伴奏もトライしてみた。“FRB2DB”という曲は、〈For Ray Brown 2 Double Basses〉の略で、2人を繋げてくれたレイ・ブラウンに捧げた曲だ。そして私のオリジナルの“Philly Slop”と、エドガーの故郷の古い曲の“Tennessee Blues”。この2曲のブルースをキーに、私たちは文化背景の違いを超えて、深く共感したプレイができたと思う。エドガーとは、これからも一緒に演奏したいね」。2人のマエストロは、ジャンルの境界線を超えて、どこまでも羽ばたき続けている。