インタビュー

ジュリアナ・バーウィック(Julianna Barwick)との対話から見える、新しい価値観を持ったアンビエント音楽家の姿

Photo by Jen Medina

新しい価値観を感じさせる新世代のアンビエント・ミュージシャン

 新しい世代には新しい価値観がある。

 この数十年の音楽を含めて文化や芸術の傾向を見るだけでも、そのように感じることが多い。それぞれの世代にとっての代表的な存在があって、それぞれの世代の多くは自分の世代の音楽こそが一番いいと思っている。ビリー・アイリッシュの音楽を聴くと近年のポップスの傾向を理解することができる。

JULIANNA BARWICK 『Healing Is A Miracle』 Ninja Tune/BEAT(2020)

 ジュリアナ・バーウィックはNYのブルックリンのエクスペリメンタル・ミュージック・シーンの出身であるが、1960年代のスティーヴ・ライヒやテリー・ライリーのミニマルのシーンとも90年代のジョン・ゾーンのシーンとも違う。レディオヘッドにもリミックスを依頼されていて、その作品を聴いてみるとジュリアナのソロ曲のようなアレンジになっている。ジュリアナの音楽が使われているHulu制作のドラマ「ハンドメイズ・テイル/侍女の物語」を観ると、その感情の表現の仕方や音楽の使い方で近年の表現技法は、より分かりやすいと思った。

 「私は言葉や物語よりも音像で表現していくタイプね。言葉で表現しているものよりも、サウンドで感情に訴えかけてくるようなものの方が好き。サウンドとメロディ、ハーモニー、リヴァーヴ、それから感情ね。人生の中での経験とか、恋愛、人との関係性……そういったものからインスピレーションをもらって、ピアノの前に座って即興的に曲作りを始める。あるいはローランドのルーパーを使いながら、思いつくままに作っていくの。気ままに思いついたものを、その場で演奏しながら形にしていく。初期の頃は即興が多かったんだけど、アルバムを出しはじめてからは、アルバムに入れている曲をライヴでどう演奏するかを考えるようになったの。モリ・イクエ(ニューヨーク在中の日本人女性の前衛音楽家)とのアルバム『FRKWYS Vol. 6』は、その場で全て即興で演奏しながらのレコーディングだったわ。YouTubeでも見られる数年前のライヴでは録音したパートを人に聴きとってもらってヴァイオリン、ギターやコーラスの女性たちに渡す譜面を作ってもらったの。その後いろいろなヨーロッパのフェスティヴァルで演奏した時も、譜面を渡せばその国の演奏者と一緒にできるし、それぞれの国の演奏者たちが新たな表現で演奏するのが面白かったわ」

 「(ヒーリングという言葉がタイトルに入っているが)特定のジャンルとして聴いて欲しいという希望があるわけではないの。私の心の中から湧き出てくる音楽を形にして、それが必要としている人のもとに届けばいいなと思っているわ」

 


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〈オンライン〉が増え、コロナ禍がその追い風となった今。人や物、電波などから距離を置いた〈オフ〉の環境で音を楽しむという価値を改めて考えるBeatinkの企画〈オフノオト〉がスタート。写真家・津田直の写真や音楽ライター、識者による案内を交え、アンビエント、ニューエイジ、ポスト・クラシカル、ホーム・リスニング向けの新譜や旧譜をご紹介。

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