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1. Beabadoobee “Care”
Song Of The Week

天野「〈SOTW〉は、BBCの〈Sound Of 2020〉やブリット・アワードの〈ライジング・スター・アワード〉にノミネートされた話題のニューカマー、ビーバドゥービーの“Care”! これはめちゃくちゃいい曲ですね……。それにしても、〈ビーバドゥービー〉って言いづらい!」

田中「名前の読み方については、最近までいろいろな説が入り乱れていましたね」

天野「カタカナ表記の問題は日本の洋楽受容における一大問題ですからね! 原語表記でいいのに……。それはさておき、ビーバドゥービーことベアトリス・クリスティ・ラウス(Beatrice Kristi Laus)はフィリピンのイロイロ生まれ、英ロンドンで活動するシンガー・ソングライターです。変わった名前は、本名の〈bea〉+〈bad〉+〈doobie(マリファナのジョイント)〉、という由来なんだとか。ビーの音楽はインディー・ロックやインディー・ポップ、ギター・ポップ寄りのサウンドですけど、いわゆるベッドルーム・ポップの潮流における最重要ミュージシャンの一人だと言っていいでしょうね」

田中「たしかに、グランジっぽさやジェイ・ソム(Jay Som)のようなドリーム・ポップ/シューゲイズの感覚を持ちつつ、クレイロ(Clairo)やガール・イン・レッド(girl in red)に近い新世代感があります。ささやかでフォーキーな曲も彼女の魅力ですよね。パウフー(Powfu)の大ヒット・ソング“death bed (coffee for your head)”でサンプリングされて注目を集めた“Coffee”(2018年)なんか、まさにそういう曲です」

天野「そんなビーは、The 1975などが有名なレーベルのダーティ・ヒット(Dirty Hit)に所属。今回の新曲は、今年リリースする予定のデビュー・アルバム『Fake It Flowers』からのシングルです。とにかく力強くてポップなメロディーと、サビの〈ジャッジャッ〉っていうギターのフレーズが最高! リード・ギターのキラキラした音色なんて、まるでシャムキャッツみたいじゃないですか!」

田中シャムキャッツが解散した悲しい事実を思い出させないでください……(泣)。あと、元ヴァクシーンズのピート・ロバートソン(Pete Robertson)が彼女をプロデュースしていることにもUKロック・ファンは注目してほしいですね。ビーバドゥービー本人のコメントには、〈この曲には高速道路をドライヴしている90年代末期の映画のようなヴァイブスが込められている。社会や私のことを知らない人、私を気にもかけていない人たちに対しての苛立ちとか。かわいそうなんて思ってほしいわけじゃ全然ない。ただ、私がどんなつらい思いをしてきたかをわかってほしい〉とあります。〈高速道路をドライブしている90年代末期の映画のようなヴァイブス〉っていうのは、ちょっとわかるかも」

天野「懐かしさと新鮮さがいいバランスですよね。ギター・ロックでこんなに目の覚めるようなフレッシュさを感じられる曲は、ひさしぶりに聴きました。ビーバドゥービー、とにかく2020年注目の才能です!」