若年層を中心に支持されていたアメリカのアーティスト、ジュース・ワールドのサード・アルバムにして遺作。ラップと歌を奔放に行き来するスタイル、艶かしくも幼さを残した歌声、ヒップホップを軸にしつつブリンク182といったロックの要素も飲み込んだサウンドなど、これまでの作品でも見られた魅力が進化している。ストレートに感情を表した歌詞も相変わらずで、あまりの率直さに心の奥底で渦巻く拭いきれない青臭さが反応し、むず痒くなる瞬間も多い。21歳の若さでこの世を去った男の作品、という側面を抜きにしても楽しめるが、それを完全に無視することは難しい。みずからの夭逝を悟っていたかのような“Wishing Well”の歌詞は、とても強烈で耳から離れない。