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マイナスをマイナスで終わらせないって、大事なんだよね

――KAORIさんは、最近もクラブでプレイされていましたよね。

「回してますよ! 20うん年間、ずっとやっています(笑)」

――新型コロナウイルスの感染拡大によりクラブも打撃を受けたかと思うのですが、今って人は戻ってきていますか。

「集客を抑えている部分もあるから、100%戻っているわけではないですね。でも、これだけ沈んだ分、どんどん盛り上がっていくと思うので。来年、再来年が楽しみです」

――クラブ・カルチャーが盛り上がってきたなかでの、コロナ直撃でしたもんね……。

「ここ1、2年って、東京自体が盛り上がっていたじゃん? アジアだけでなくアメリカ全土の人にとっても、日本に行くことがトレンドみたいになっていたと思うんだよね。

せっかく世界の人と積極的に関われるようになってきていたのに、人種差別やアジア人差別のようなネガティヴなニュースが増えて、元の世界へ逆戻り。また区切っていく世の中へ向かうかもしれないっていう恐怖感はありますよね」

――それぞれの心が不安定になったことにより、分断が激化してしまったというか……。

「単純にウイルスの話だけじゃなく、新たな問題も生んでしまっているのは残念ですよね。早く収まって、いろんな意味で正常化してほしいです」

――〈ニュー・ノーマル〉という言葉が生まれたように、コロナは普通を変えてしまいましたからね。時代が変わる瞬間って、それぞれの人生も大きく動くと思うんです。KAORIさんは、アメリカ同時多発テロがキャリアに大きな影響を与えたとのことですが。

「転換期になりましたね。当時はNYで一生懸命にDJをしていたんですけど、辛いこともすごく多くていろんなことに悩んでいたんです。そんなタイミングで同時多発テロに直面して。いつ死ぬかわからないと思ったら、〈楽しまなきゃ損だな〉って思ったんですよ。もっとできることをやってみようかなと。日本でビジネスをするオポチュニティーを作ろうと思って、焦ってミックスの仕事をしたりもしました(笑)」

――ネガティヴな出来事に遭遇したときに、チャンスへ変えていく力って大事ですよね。

「マイナスをマイナスで終わらせないって、大事なんだよね。プラスがあればマイナスもある。マイナスなことに直面したとき、どれだけ踏みとどまって前を向けるかが大切というか。

真面目なのは日本人のいいところだけど、シリアスになりすぎるから……。日本って〈楽しんじゃいけない〉みたいな空気ない? 苦労してないと、頑張ってないとダメ、楽しんでいるやつはラクしているみたいな」

――ありますね。忍耐こそ美しいというか……。

「シリアスなのは得意だけど、楽しみながらやるのは苦手なんだよね。私もアメリカにいた頃よく言われたことだけど、日本人はもっと〈Don’t be naïve.〉〈Don’t be serious.〉。他人のことなんか、気にしてちゃダメなんですよ。

自分が失敗できないと思って、いろんなことを我慢して生きているから、周りに厳しくなっちゃうんだろうね。他人をとやかく言っていると、結局は自分の可能性を狭めてしまうのに。自分で自分の首を絞めるようなことはないほうがいいし、失敗して当たり前な空気になればいいと思います。相田みつをさんの〈にんげんだもの〉も、こんなに日本に浸透しているんですから。もっと寛大な世の中になるといいですよね」

 

女性がフェアに働くためには社会のサポートが必要

――KAORIさんといえば、「DJane Mag JAPAN」のスーパーバイザーにも就任されましたし、日本人フィメールDJの先駆け的存在でもあると思うんです。ジェンダー・イコーリティーは、いろんな分野で課題になっていることですが、以前に比べて女性DJは増えましたか。

「そうですね。すそ野は広がってきている感じはします。クラブへ行ってもレジデントDJをしている女の子っていっぱいいるし」

――KAORIさんのような女性DJが頑張ってきた結果というか。

「それもあるけど、テクノロジーの進歩が大きいと思うんだよね。昔だったら何年もかけてレコードを集めて、100キロくらいする重い荷物を持って移動しなきゃいけなかった。でも、今ならレコードを集める必要もないし、コンピューター1個とUSB 1本でできる。DJというものに対して、単純に敷居が下がりましたよね」

――敷居が下がったことによって、全体的なレヴェルが下がったりはしないんですか。

「全体的な質は向上していると思います。私がDJを始めた頃に比べて、圧倒的に情報が多いので。ただ分母が増えたことによって、いくらスキルがあったとしても、頭一つ抜け出るのが難しい時代にはなりましたよね。競争は厳しくなっていると思います」

――すごく勝手なイメージなのですが、DJの現場ってマッチョイズムな感じがしていて。女性への風当たりが強かったりするのでしょうか。

「今のDJの現場でなら、そういうことはほとんどないと思います。女性がDJを続けることの大変さって、風当たりとかの問題じゃないというか……」

――では、どのようなことが障壁になってくるのですか。

「DJって帰りは遅いし、いろんなところを転々とするから、それはネックになりますよね。夜に家にいないから、みんなでご飯を食べることもできないし、まともなリレーションシップを築くことも難しい。ボーイフレンドができたら、離れたくなくて仕事へ行きたくなくなるし(笑)。

まだまだ社会的には、女性の方がターニング・ポイントで変わることを望まれる風潮があるので、変則的なDJという仕事を続けるには犠牲にするものが多いんですよ」

――〈DJにおける問題〉というよりも、〈社会的な問題〉な気がしますね。

「すべての職場においてそうだと思います。〈男女平等〉が叫ばれていますけど、結婚、妊娠、出産のような社会的なプレッシャーは、まだまだ女性のほうが強い。男性とフェアに働けるようになるには、もっと社会のサポートが必要な気がします。平等だと足りないよね。優遇してくれるくらいじゃないと」

――社会的なサポートが進めば、どの職場でも平等に活動しやすくなりそうですよね。

「リモートだなんだって働きかたは変わってきているし、このままいい方向に向かってほしいです。日本人は働きすぎなところもあるから、もっとプライヴェートを大事にできるような働きかたになったらいいよね。実際に生産性は、落ちないと思うので」

 


RELEASE INFORMATION

リリース日:2020年11月4日(水)
品番:UWCD-1091
価格:2,970円(税込)
★配信リンクはこちら

 

ディズニー初、DJによるノンストップミックスCD!
DJ KAORIによる全曲ディズニー楽曲NON STOP DJ MIX CD

ナオミ・スコット“スピーチレス”(「アラジン」)、“サークル・オブ・ライフ”(「ライオン・キング」)など最新のディズニー映画オリジナル楽曲や、洋楽/邦楽のアーティストによるカヴァー、英語/日本語楽曲、ダンス・アレンジされた楽曲など数あるディズニーの名曲の中から、今年活動20周年を迎えたDJ KAORIならではの選曲が光るオール・ジャンル・ベスト。
初収録となる“イントゥ・ジ・アンノウン~心のままに(エンドソング)(DJ KAORI Remix)”(「アナと雪の女王2」)他、最新楽曲含む全25曲。

TRACKLIST
1. 中元みずき “イントゥ・ジ・アンノウン~心のままに(エンドソング)(DJ KAORI Remix)”(「アナと雪の女王2」) ※初収録
2. イディナ・メンゼル “レット・イット・ゴー(ペーパーチェイサー・クラブ・リミックス)”(「アナと雪の女王」)
3. Q;indivi “パート・オブ・ユア・ワールド(ハウス・ネーション・リミックス・エディット)”(「リトル・マーメイド」)
4. CREAM “美女と野獣”(「美女と野獣」)
5. cargo “いつか王子様が”(「白雪姫」)
6. m-flo “ホール・ニュー・ワールド(feat. Matt Cab)”(「アラジン」)
7. BT & Au5 “パーティーサウルス・オーバーフロー”(「レックスはお風呂の王様」)
8. “彼こそが海賊(ピートン・レッズ・ジョリー・ロジャー・ラジオ・エディット)”(「パイレーツ・オブ・カリビアン」)
9. KASKADE “私の赤ちゃん”(「ダンボ」)
10. Eric Kupper “リフレクション”(「ムーラン」)
11. 大沢伸一 “メインストリート・エレクトリカルパレード”(「ディズニーランド®」)
12. AYUSE KOZUE “ミッキーマウス・マーチ”(「ミッキーマウス・クラブ」)
13. トニー・フェラーリ “ホワット・ウィ・ガット(ミッキーのバースデーソング)(Alex Ghenea Remix)”
14. MEG × Q;indivi “星に願いを”(「ピノキオ」)
15. ヒャダイン feat. 前島亜美(SUPER☆GiRLS)“小さな世界”(「ニューヨーク・ワールドフェア」)
16. May J. “レット・イット・ゴー~ありのままで~(エンドソング)(ネームレス エーケーエー エヌエル リミックス)”(「アナと雪の女王」)
17. “イッツ・ア・グッド・タイム”
18. Little Glee Monster “君のようになりたい”(「ジャングル・ブック」)
19. SmileR feat. Chika & Natalie “アロハ・エ・コモ・マイ”(「リロ アンド スティッチ ザ・シリーズ」)
20. AAA “みんなスター!”(「ハイスクール・ミュージカル」)
21. Dream Ami “トライ・エヴリシング”(「ズートピア」)
22. A★TEENS “好きにならずにいられない”(「リロ&スティッチ」)
23. 加藤ミリヤ “どこまでも ~How Far I’ll Go~(エンドソング)”(「モアナと伝説の海」)
24. RIRI “サークル・オブ・ライフ”(「ライオン・キング」)
25. ナオミ・スコット “スピーチレス~心の声”(「アラジン」)