今年1月、来日したオータム・ディフェンスに取材した時、ウィルコのメンバーでもあるパット・サンソンにどうしても聞きたいことがあった。「リアム・ヘイズの新作はどうなってるの?」。パットは肩をすくめて「とっくに完成しているんだけど、どうなってるのかな」と答え、パットの彼女は「チャールズ・スワン」と言って笑っていた。結局どうなっているのかわからないと思っていた矢先、なんと現時点で日本のみで新作がリリースされることが決定した。

LIAM HAYES Korp Sole Roller AFTERHOURS(2014)

 かつて〈プラッシュ〉名義で活動していたシカゴシンガー・ソングライター、リアム・ヘイズの5年ぶりの新作『コープ・ソール・ローラー』は、パット・サンソンが全面プロデュース。本作に影響を与えているのが、ロマン・コッポラ監督作『チャールズ・スワン三世の頭ン中』(2013)だ。リアムの音楽に惚れ込み、リアムの音楽をかけながら本作の脚本を書いたロマンは、当然のごとくサントラをリアムに依頼。リアムは映画にも出演するなど、彼にとって『チャールズ・スワン〜』は重要なプロジェクトだった。サントラと平行して制作した本作にはサントラで使用された曲も収録されていて、ある意味、この2枚のアルバムは兄弟のような関係といえる。

 本作ではリアム、パットが主要な楽器を演奏し、そこにストリングスフルートなど室内楽的な楽器を導入。グラマラスでメロウなポップ・センスからは、70年代サウンドの香りが漂ってくる。そして知的でありながら艶っぽい、リアムのハンサムな歌声も魅力的。リアムが歌うとそこにドラマが生まれる。だからこそ、ロマン・コッポラやジェイソン・シュワルツマンニック・ホーンビイなど映画関係者や作家にファンが多いのかもしれない。リアムは自分のサウンドを「スムース・ロック」なんて言葉で表現しているが、滑らかに磨き上げられた歌は、ナイトクラブで揺れるキャンドルのようにロマンティックで、甘く切ない輝きを放っている。ロマン作品に続き、ウェス・アンダーソンの映画にリアムが登場する日はそう遠くないかも。